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【FOCUS IT.】一生ものといえる一張羅を作りませんか? レショップが仕掛ける古くて新しいコートの正体とは?

最高のコートが作りたい。そんな思いから生まれた世にも素敵な企画「OLD NEW ENGLAND」が、青山の名店「レショップ(L’ECHOPPE)」にて開催されています。

この企画の物語は「レショップ」のコンセプターである金子恵治さんが2017年初頭のパリ出張で、ある一着のコートに出会ったことから始まります。

金子さんが手に持っているのがそのコートです。ブレブレなのはご容赦を。。

それは誰もが知っている某有名ブランドのステンカラーコートなのですが、タグに記されていたのは「MADE IN FRANCE」の文字。一般的に知られる英国製とは一線を画すボリューミーなフォルムに、無双仕立て(表地を引き返して裏まですべて共布を使う仕様)などなど、謎の多い仕様がそこかしこに。これは一体どういったコートなのか?

まったくの偶然ですが、フイナムの名物企画「古着サミット」の最新回でもこのコートについて触れられています。

かようにミステリアスな存在だったこのコートですが、「どうやら一着一着がオーダーで作られていたらしい」という話を耳にした金子さん、あれよあれよとこの企画を立ち上げたのでした。というわけで本展はかのコートをベースにしながら、現代における最高のコートを作って(オーダーして)みませんか?という試みなのです。

早速、実際にコートを仕立てる〈ラ ファーヴォラ(la favola)〉の平 剛さんと金子さんにあれこれ伺ってきました。

ベテランの職人である平さんをして「初めて見た」というフランス製のコート。その特徴はいったいどんなところにあるのでしょうか。

「いくつか特徴はあるんですが、パッと見るとものすごくモードっぽいコートだなと思います。デザイナーズのコートというか。というのも、いまの基準に照らし合わせるとすごくバランスが悪いんですよ。たっぷりとした身幅に対してのちいさな襟や、ものすごく太い腕周りとか」

「それと、古いコートなので所々に手仕事のあとが残っています。あとは裾の蹴回しの分量がたっぷりしているので、歩いた時の感じがかっこいいですね。コートを着ているなという感じがあります。とにかく非常に興味深い一着です」

金子さんが続けます。「そういう側面がありながら、着てみるととにかく綺麗なんですよね。理屈ではなく単純にかっこいいです。パリで買ってからは相当な頻度で着ているんですが、ほぼ100%の確率で褒められますね」


こうした四方たたきのディテールも、このブランドを代表する当時のものだとか。

あらゆる服を見てきた歴戦の勇者たちが絶賛するこのコート。それをベースにして作られたのが今回のサンプルになります。

本番のサンプルを作る前に、一度トワルで組んでみた平さんは言いようのない不安に襲われたといいます。

「なんだか落ち着かなかったですね。これで本当に大丈夫なのかな?って。なにしろ無駄の多い作りですし、もう少し袖幅を詰めたり、襟を大きくしたりできたんですが、金子さんとしては『これでOK!』とのことだったので、このまま作りました」

先にも説明した仕様である“無双仕立て”はとにかく生地の分量を使います。なんでも今回のコートは一着作るのに7メートルの生地が必要になるとのこと。いやはや恐ろしいほど贅沢な仕様です。平さん曰く「狭いところでは裁断ができない(笑)」とのこと。

サンプルはS・M・L・XLの4サイズ。どのサイズを着ても綺麗に見えるのが不思議です。小柄な方から大柄な方まで、あらゆる体型のひとが楽しめるパターンとなっています。ちなみにSといっても、通常のM以上はあります。

なお、本展はオーダー会といっても、すべての部位をアレンジできるようなものでありません。その理由を平さんはこう説明します。

「今回のオーダーでは、ベースにしたコートの雰囲気を大切にしたいので、バスト、中胴、蹴回し、つまり胴囲は一切変えません。なので、例えば襟を大きくしてほしいというようなオーダーは今回の企画とは違うのかなと思っています」

肩から袖に落ちていく感じが独特で、メンズでもウィメンズでもないオリジナルなフォルムを生み出しています。

この企画を立案した金子さんも「このコートを基準にして量産をしてみてもよかったんですが、ベースがこれだけ面白いものなので、細かなサイズをきちんと合わせて着ていただけたら、なおいいんだろうなと思ったんです」と語ります。

それではどういった部位をアレンジできるのか。まずは生地。「綿のギャバジンだけでやるのもつまらないね」という話になったそうで、ウール地、そしてチェックの生地も豊富に揃います。

ちなみにベースとなったコートの生地がこちら。かすれた薄手のギャバジンでしたが、今回はそれよりももう少し打ち込みのいいギャバジンを使っています。

そして圧倒的なボリュームでお客様を待ち構えるボタン。

金子さんいわく“マニア”だという平さんが嬉しそうに教えてくれました。

「現行のものばかりを集めてもつまらないので、いろいろ用意しています。いまのものとなにが違うのかと言われると、少しだけ丸みが違うとか本当にささいなことなんですけど。ただ古いボタンを好まれる方はやっぱりいるんです。あとはサイズも違いますね。さらにボタンホールの穴かがりも、繊細なものから無骨な雰囲気にまで対応できるように、色々な糸を揃えています。今回のコートには無骨な雰囲気が似合うような気はします」

「例えば襟の部分のように、顔になってくる箇所のボタンホールはきっちり決めたいので、硬い芯糸でピシッとやります。反面、ボタンの開閉が必要な箇所は、あまりカチッとやりすぎると手穴の良さもなくなってしまうので、そういうところには柔らかい糸を使います」

「正直、手でボタンホールを切る意味なんてないんです。ただやっぱりここまでのコートだからこそ、手でやりたいんですよね。やらなくていいことをやっているというとおかしいですけれど、要所要所で手業を入れることで付加価値をつけたいんです」

「ここは割れてくる可能性があるので、閂(かんぬき)をいれています」(平)。襟を立てても美しいしつらえに。

これまでのオーダーの概念を覆すだろう今回の「OLD NEW ENGLAND」。まずはお店に足を運んで、サンプルのコートに袖を通してみてくだだい。ここまでツラツラと書いてきた、なんとも文章にしにくい魅力をきっと感じ取ってもらえるはずです。

また、本展の開催に至る経緯は金子さんのこちらのブログにも書かれています。ぜひ合わせて読んでみてください。

Text_Ryo Komuta


OLD NEW ENGLAND
日時:5月30日(水)~6月4日(月)
会場:L’ECHOPPE青山
住所:東京都港区南青山3-17-3
電話:03-5413-4714
営業:11:00~20:00
価格:¥240,000~
納期:4ヶ月~(納期はオーダーの順序により変動いたします)

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