今シーズンの〈サンローラン(SAINT LAURENT)〉のアウターはどれも素通りすることができない。思わず二度見した3点を紹介しよう。
一着目は今シーズン注目のシアリングジャケット。クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロはこれをGジャンのサードタイプ(!)に載せてきた。そのありそうでなかったコンビネーションもさることながら、たまらないのがサードタイプに特徴的なV字状の切り替え(当モデルはほぼ平行に走っている)など要所をシアリングで仕上げているところだ。
お次はウエストとカフスにスパンコールつきのジャカード生地をまぶしたナロウなショールカラーのカーディガン。80年代を彷彿とさせる佇まいながら、仕上がってみれば上品なことこの上ない。“イブニングバージョンのニット” と謳うのももっともな一着だ。刺繍部分は完成までに1日を要するという。
トリを務めるのは、MA-1と並ぶフライトジャケットの定番、N3-Bを彷彿とさせる一着。フィンランドの毛皮養殖団体「サガ・ファー」に認められたラクーンファー&リアルシャーリングのライニングでラグジュアリーに昇華したそれは、細部のつくりこみも抜かりがない。世の中がなんだかきな臭いいまこのタイミングにリリースしてきたのにも感じ入った。かつてカーキのミリタリーアイテムを着用することはベトナム戦争へのSILENT RESSISTANT(=沈黙の抵抗)を意味した。
そしてすべてのアウターに共通するのはナロウなシルエットだ。トレンドもどこ吹く風なスタンスが潔くて、しびれる。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa