2019FWコレクションに立ち上がった〈ジル サンダー+(JIL SANDER+)〉が好評だ。テーマは “都会から抜け出した暮らし”。自然豊かな土地で生まれ、スキーやスノボー、トレッキングに親しんできたクリエイティブ ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻にとって、それはいつか手がけたかった世界であり、満を持して登場させただけあって甲乙つけがたい力作が揃っている。
ひとつめは一般的なナイロンに比べて7倍の強度をもつといわれるコーデュラナイロンをガーメントダイで仕上げたセットアップ。ファスナーを開ければブルゾンはショートスリーブに、パンツはハーフパンツに姿を変える。
二つ目は日本伝統の羽二重(はぶたえ)のファブリック(ナイロン64%、シルク36%)を仕立てたシャツ。通常の平織りに比べて細い縦糸を2本にして織るため、よりしなやかで光沢に富む。ナイロンを混紡することで軽量性と撥水性を加え、背中のポケットに収納できるパッカウェイ仕様とした。
最後はオーガニックコットンを天然染料で色づけしたデニム。岡山県でつくられるその生地は19FWコレクションからの定番で、今シーズンはショートスリーブがラインナップされた。
メイヤー夫妻の美意識と機能性が見事に融合したこのコレクションの美徳をもうひとつあげるとすれば、ほぼすべてのアイテムがユニセックスで展開される点だ。ダイバーシティな時代に相応しい一着である。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa