日々使うものこそ贅沢に、というのは目の肥えた大人の合言葉だが、この流れでいくならば〈エルメス(HERMÈS)〉のTシャツはほとんど究極の存在だ。折にふれて素材やデザインに手を入れているが、ベースとなるものは変わらない、自他ともに認めるロングセラーである。
厚すぎず薄すぎずの絶妙な肉厚をかたちにしたコットンジャージーは、上品極まりない見栄えと病みつきになる着心地を高度な次元で両立させている。袖を通せば “帯に短し、襷に長し” の真逆をいくボックスシルエット。インナーとしてもアウターとしても成立する懐の深さがある。
そして、ショルダーラインに配した、〈エルメス〉の頭文字をかたどった “H” 状のステッチ。ボディと同色のステッチ糸で仕上げたそれは、まさに自分だけが知るひそやかな楽しみだ。
騙されたと思って、という誘い文句があるが、このTシャツだけは買って後悔しないだろう。ただし、ワードローブにいまあるTシャツが埃をかぶってしまうというまた別の悩みを抱えることはあるかも知れない。
カラーバリエーションはブラック、ホワイト、マリン(ネイビー)の定番御三家に加え、シーズナルカラーのアクアやカーキ、インディゴをはじめとする豊富なラインナップで展開。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa