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【FOCUS IT.】岡山発のブランドSOUMOが、グラフペーパーで本当の自由を問う。

2015年、岡山県で生まれたブランド〈ソウモ(SOUMO)〉。一般的なファッションのサイクルには乗らず、展示会もせず、シーズンの概念もない。ブランドのコンセプトも極めて難解。そんなブランドがいま「グラフペーパー 青山」でエキシビションを開催中です。

謎多き〈ソウモ〉とは一体どんなブランドで、「グラフペーパー」で何を表現したいのか。デザイナーの山本雄太さんに話を聞きました。

「(自由)→自由」に込められた意味。

本エキシビションには「(自由)→自由」というテーマが設けられています。文字だけ見てもさっぱりです。けれど、この意味を知っているのと知っていないとでは、エキシビションとアイテムの理解度が大きく違ってきます。

〈ソウモ〉デザイナー・山本雄太さん。

本エキシビションのためにつくられたビジュアル。

「諸説ありますが、最初、福沢諭吉が英語のLibertyやFreedomって言葉を“自由”と翻訳したと言われています。だからか、ぼくらが考える自由ってアメリカから輸入されてきた“自由”だと思うんです。それってすごく凝り固まった自由だなと感じていて。なので、テーマの頭に出てくる自由の()はその凝り固まりを表現していて、そこから()を外して、本当の自由になろうというメッセージを今回のエキシビションに込めています」(山本)

自由の国アメリカからやってきた自由の概念。それって本当の自由なのか、どうなのか。こんな難題を掲げてしまうのも〈ソウモ〉の魅力のひとつでもあります。また、自由というキーワードはエキシビションだけではなく、〈ソウモ〉のものづくりに対する姿勢にも表れています。

「いつもゲリラ的にアイテムを販売していくんです。服ができたらシーズン問わず、取引先さんにアイテムを突然送ってオーダーを入れてもらっています。なので展示会もしていません」

ファッションの在り方が見つめ直されるなかで、〈ソウモ〉はブランド立ち上げからこれまで、ファッションのサイクルは気にせず、つくりたい服ができたときに服をつくり、つくれないときにはつくらないスタンスを一貫しています。それでも取り扱い店は増え続け、全国の玄人たちから熱い支持を受けています。

「シーズンの概念はないですが、そのなかでも区切りみたいなのは必要で、ぼくらはセクションという呼び方をしているんですけど、01から始まって、いまがセクション10。今回のエキシビションにはセクション10のアイテムを並べてもらっています」

セクション10のアイテムと、エクスクルーシブ。

ここからはアイテムについて触れていきましょう。〈ソウモ〉のアイテムがここまで揃っていること自体が珍しいのですが、今回の注目はエクスクルーシブなパンツです。

Graphpaper Limited Cargo Trousers ¥32,000+TAX

「M-51をベースに、サイズバランスや線のラインとか、自分なりのアレンジを加えています。誰もが引用してるものだけど、自分でしっかりと再解釈してつくりました。3年前にはじめてつくったんですが、それを〈グラフペーパー〉さんにすごいよかったと言ってもらえて、今回のエクスクルーシブ制作にいたったんです」

1950年代にアメリカ軍が採用したM-51のXXXLなどのビッグサイズをベースに、ディティールを省いたり付け加えたりして現代的に仕上げられています。かつてビンテージのバイヤーとしても活動し、古着の造詣も深い山本さんならではのアイテムでもあります。

「昔から軍モノが好きだったので、〈ソウモ〉にもミリタリーライクなアイテムがたくさんあります。あと、国内外問わずデッドストックの生地もけっこう使っていて、そこのハンドリングができるのも〈ソウモ〉の特徴かなと思います」

T SHIRT ¥12,800+TAX

今回のエキシビションは受注会&即売会という形式をとっていて、このTシャツはその場で購入できるアイテムのひとつ。プリントされたグラフィックには自虐の意味があると山本さんは言います。

「自由自由とは言いながらも、Tシャツはちょっと〈グラフペーパー〉さんの雰囲気に引っ張られました。無機的なイメージだったり、直線を多用したのはその影響です。グラフィックに関しては、結局ぼくは()に閉じ込められた自由人です、という誰にもわからない自虐Tシャツになっています」

即売会のアイテムがもうひとつ。複数の紐が付いたリネンのパンツは、自由を最も表現した1本です。

PANTS ¥29,000+TAX

紐の結び方は自由。サイドについたループの場所を変えれば、紐の高さも調節できる。

結び目は中央よりもサイドにずらすのが、山本さんおすすめの結び方。

「サイドとフロントにたくさん紐がついているんですけど、自由に結んでもらって結構です。正解はありません。あと、フロントにゆとりがあってバックはすっきりさせています。前後ろ逆に穿いてもらっても全然いいと思います」

自由度の高いアイテムではありますが、どこで紐を結ぼうときれいなシルエットになるから不思議なんです。ウエストではなく、片方の足に巻きつけたりしてもさまになる。体感あるのみです。そして、エキシビションでひときわ異彩を放っていたのが同型のデニム。こちらは受注販売。

上と紹介したパンツと同型のデニム。横糸が和紙でバリバリ触感。¥58,000+TAX

5分丈とフルレングスのデニムもあり。

「デニムは旧式力織機を使って織っているんですけど、どれだけ機械で手織りに近づけるかという挑戦でもありました。ただ、このデニムをつくるときに工場から『死人が出る』と言われたんです。実際にシャトルが飛んで、窓ガラスが割れたこともありました」

危険をおかしてまでつくった生地は残りパンツ30本分。今後、この生地はつくれないそうです。手に入れるなら、本エキシビションが最後のチャンスかもしれません。

「ほかにもたくさんアイテムをもってきたんですけど、自由というテーマはもちろんなんですが、裏のテーマとして対極というのがあります。白と黒だったり、目が詰まっているものと詰まってないものとか。そのへんにも注目してアイテムを見てもらえたらうれしいですね」

非日常のなかに日常を。グラフペーパーのなかに和室を。

アイテムのほかにインスタレーションもあります。1辺2メートルほどの四角い部屋です。

「インスタレーションを〈グラフペーパー〉さんでやるとなったとき、まず浮かんだのが白いイメージと非日常空間というキーワード。なので、対極の話にも繋がるんですが、あえて非日常のなかに日常というものをもってきたかった。いまって非日常が当たり前にあるから、それなら非日常のなかに日常があった方が、非日常を演出できるんじゃないかと考えたんです」

襖と、鴨居にかかった1週間分のガーメントケース。そこに「(自由)→自由」を表現した鮮やかなグラフィック。会期中は、これが店内中央に鎮座しています。裏側にも精巧なデザインが施されているので、そちらは会場で確認を。

「ぼくたちはネットもSNSも、ほとんど活用していません。そうすることでクリエイティブがにごらないというか、自分の考えを純粋なまま保てる。余計なものに触れなくていいのは、岡山でやっている魅力なのかなと思っています」

コロナのあと、ますます混沌としていくだろう世界において、〈ソウモ〉のクリエイションはまったくブレそうもありません。時代や通例にとらわれないアイデアとアイテムが、〈ソウモ〉の求心力に繋がっているんだと感じました。会期は6月28日(日)までです。それでは最後に、ルックをちら見せ。

INFORMATION

SOUMO Exhibition【(自由)→自由】

会期:6月20日(土)〜28日(日)
場所:Graphpaper AOYAMA
住所:東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション1A/2D
電話:03-6418-9402
www.graphpaper-tokyo.com

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