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東コレ初参加となる、京都発のナインエム。伝統の手捺染を駆使し、スポーツの力を表現しました。

3月15日から20日の会期で開催された「Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 A/W」。鬱々としたコロナ禍を吹き飛ばすかのように、計51ブランドが参加し、デジタルショーに加えて、観客を招いたランウェイショーも行われました。

なかでも今回ご紹介するのは、初参加となった〈ナインエム(9M)〉。コレクション自体は映像で発表し、その後会場に集まった記者たちに対してデザイナー本人が解説するといった、デジタルとアナログを融合させた今までにない形式が採用されました。

まず知らない方のために説明しておくと、〈ナインエム(9M)〉は京都の染物工場「久山染工」が手がけるブランド。

普段は、海外メゾンをはじめとするさまざまなブランドに向けたテキスタイルをつくっていますが、〈ナインエム〉はそんな自社生地を駆使しオリジナルアイテムを展開。主に旅やアートから着想を得て、デザインに落とし込んでいます。

コロナ禍以降、以前にも増してスポーツをするようになったデザイナー・吉田力さんが、運動を通じて心身の健康を感じたという実体験を元に製作された21AWコレクション。まずは今作に対する彼の想いを一読ください。

スポーツには様々な力があると思います。憲法にもあるように“スポーツは心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得 等の身体活動である。生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものである”とされています。コロナ禍になり、以前にもましてスポーツをするようになりました。人のコアの部分で大事なことは、人生を楽しむという心が健康でいる状態だと思います。スポーツをすると色々なモヤモヤが無くなり、何とも言えない充実感があります。コロナ社会になったことでスポーツの持つ力を再認識しました。〈ナインエム〉のコンセプトは、“Luxury abnormal uniform”。着ると前向きになる、高揚するようなデザインを心がけています。色々な規制や節制があり、気持ちが下向きになりがちな社会情勢ですが、スポーツの力がみなぎるようなコレクションをテーマに作りました。

テーマは「The Power of Sport」。ショー映像は、軽快な音楽を背に、緑の芝生が広がるサッカーコートをモデルが闊歩するという、スポーツテイスト満載の仕上がりとなりました。

各アイテムを見てみても、スポーツをモチーフとするデザインが散見されます。例えば、こちらのシャツとパンツのセットアップ。ボディには、五輪カラーのストライプが走り、今年開催を控えるスポーツの祭典を祝福するようなアイテムとなりました。

素材はコットレーヨンを採用しているので、落ち感があり、体にフィットするように設計されているのもポイント。吉田さん曰く、「丸三日間き続けられる服」を想定してつくったとのこと。

ちなみにこのコレクションのキーカラーはレインボー。それに伴い、モデルも肌の色や性別問わずキャスティングしています。

カーディガンとニットには、ブラジルやポルトガル、フィンランドなどの国旗を配置。ちなみに吉田さんがサッカー好きということで、サッカー強豪国が多くなっているそう。つくり手のパーソナル部分が垣間見えるデザインです。

ブランドの十八番である手捺染を使用したシャツとパンツは、多色使いでインパクト抜群。スタイリングに苦労しそうですが、それ以上に着ているだけで楽しい気分にさせてくれるようなパワーが、この服にはあるような気がします。

例えば、ルックのように真っ黒のスタジャンなどのシンプルなアイテムでバランスをとるのがいいかもしれませんね。

生地にヒマシ油を塗り込むことで防水性を高めた、コットンのステンカラーコート。吉田さん自身が旅好きであり、旅行用の防水布をつくりたいという思いから生まれたプロダクトです。

リバーシブル仕様となっていて、内側をウールのメルトン素材で切り替えています。襟ずりにレインボーを配色するなど、正統派のアイテムに遊び心を詰め込んだ一着。

こちらのジャケットは迷彩柄のように見えますが、実は柔道やランニング、スキーといった運動をしている人間のグラフィックが落とし込まれています。

さらに防水性を高めるために、ヤニと天然由来の素材からつくられた材料をコーティング。雨天でも活躍する機能性ながら、フッ素フリーで地球に優しい仕上がりに。

そのほか、柔道着や、ボクサーが羽織るガウンから着想を得たアイテムなどがラインナップ。どれもスポーツに向いた機能性を持っているというわけではなく、デザインの面でスポーツテイストを表現したものとなっています。

綺麗めのアイテムとスポーティーなアイテムが共存しているルックが多く、いわゆるスポーツミックススタイルの参考になりそうです。

ちなみにコレクションの裏テーマは「合成繊維を使わないこと」。天然素材を主軸にクリエイションを展開する姿勢は、あくまで推測ですが、自分が好きな旅先、しいては地球を守りたいという思いが根底にあるのではないでしょうか。

そんな風に吉田さんの思いや趣味嗜好が、アイテムを通じて受け手に伝わる〈ナインエム〉の21年秋冬コレクションでした。ルックはもちろんのこと、コレクション動画も是非チェックしてみてください。

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