いつ終わるとも知れないコロナ時代。“ステイホーム” や “ニューノーマル” というワードは消費され、コロナのなかで生きることが当たり前になりました。ぼくらの生活に欠かせないファッションもこのパンデミックが前提になり、これまでとは意味合いが変わっていきそうです。
そんなことを感じたのが、3月の「楽天 ファッション ウィーク東京」で行われた〈フォーサムワン(FORSOMEONE)〉のランウェーショー。デザイナーの小川哲史さんはコレクション発表後の囲み取材で「コロナ禍のなかで時間の使い方が変わり、郊外に行く時間が増えました。そういったなかで都市生活と自然の調和をファッションで表現したかった」と2021-22年秋冬コレクションについて説明します。
タイトルは「HUMAN NATURE 2.0」。1970年代のヒッピームーブメントから想像を膨らませ、ブランドの底流にあるストリートスタイルにボヘミアンなテイストを織り交ぜています。ちなみに、このタイトルは小川さんが好きなマイケル・ジャクソンの曲「ヒューマン・ネイチャー」からヒントを得たものなのだそう。
ボヘミアンなムードを形づくるため、さまざまスタイルに使われたフレアパンツをはじめ、〈ミヤギヒデタカ〉とコラボしたムートンジャケットやウエスタンシャツ、ニットの〈ASANTE SANA〉と一緒につくったモヘアニットなどが登場。程よいアースカラーも見るひとたちの心をくすぐります。
また、都会的なスタイルも見どころのひとつ。ファーストルックのジャケットなどいくつかのアイテムには、都市の風景や建造物に水や樹木など自然のモチーフを組み合わせた、アーティストの佃弘樹さんのグラフィックがあしらわれいます。実はモデルたちがつけた、物々しいマスクも佃さんの手によるもの。これは廃材やプラモデルのパーツをコラージュしたもので、いまの生きづらい世の中を風刺しているようにも感じられます。
このコレクションで小川さんは、ストレスフリーのものづくりにこだわり、全体の服の85パーセント以上に天然素材を採用。シルエットはオーバーサイズ、イージーフィット、フレアといったゆとりのある形にしたところもポイントです。
ショーのフィナーレで流れたのはシャカゾンビの「Big Blue」。小川さんは、今年1月に逝去したこのヒップホップユニットのラッパー、オオスミタケシさんについて「ぼくがファッションをはじめたきっかけのひと」と語ります。〈フォーサムワン〉を手がける一方、「LDHアパレル」の代表としても活動するなかで、オオスミさんと三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの衣装をつくったことも。そんな大切なひとに感謝を捧げる気持ちもこのコレクションには詰まっています。