CLOSE
NEWS

NY出身の写真家コリン・サッシンガムが撮りためた、あまりにも眩しい旅の残滓。無性に旅に行きたくなる一冊です。

自由に移動が、旅ができなくなった今、その行為を思い起こさせてくれるコンテンツは貴重なものとなりました。それは音楽だったり、映画だったり、そして写真だったりするわけです。

この旅、いやこの度リリースされるNY出身のフォトグラファー、コリン・サッシンガム(Colin Sussingham)の写真集『Disappear Into Earth』はまさにそういう類の一冊です。

2019年に〈NIKE SB〉のサポートのもとで、2008年から2019年にかけてのNYのスケートボードシーンの姿を捉えた写真集『BOYS:A DECADE OF SKATEBOARDING IN NYC』をリリースしたコリンが今回新たなテーマに選んだのは、2014年から20年にかけて行った6度のロードトリップのドキュメンタリーでした。

本作に収められたのは、風景や物体、友人、考え、好奇心などなど、コリン自身のパーソナルな記録でありながら、不思議と見た人それぞれの記録、記憶とリンクしていくようなものとなっています。

昨年の夏、フイナムにて写真集に対する深い愛情を披露してくれた野村訓市さんが本書発刊につき、メッセージを寄せています。

PROLOGUE

人の写真を見て、勝手なことはいいたくはないし、そんな資格もないのだけれど写真を見るのは好きだ。一枚の写真からいろんなことを考えたり、夢想したり、思い出したりする。昔はカメラを手に入れて自分でも旅行中に撮ったこともあるのだけれど、現像して受け取るプリントのガッカリ度は半端ないものだった、常に。自分の思い出に残っているその時の印象と、自分が撮った写真がかけ離れすぎていて、俺はそっとカメラを置いた。どうやら自分には写真が向いていないようで、写真を撮るくらいならそのときの情景や感情をダラダラと文字にしたほうが、まだそのときの情景に近いんだと思う。

コリンの写真は違う。スケーターである彼が捉える彼の写真を見ていると、もう絶対に戻ってはこない昔のことを思い出す。それは自分がまだ若く、ふらりふらりとしながら色んなことを夢みたり、その夢から覚めてみたりを繰り返していた頃のことで、移動しながら一日中変わることのない景色を夢中で眺めたり、綺麗な景色に心が震える自分に驚いたり、どうでもいいものに心が揺れたりしたものだった。世界の真ん中にいると思った次の瞬間に宇宙一孤独だと思ったりしたあの頃だ。

きっとそんな時代こそが大人になるってことなんだろうけど。写真は時間を超越するといつも思う。撮られた時期がいつだろうと、どこであろうと、そこに何か自分のいつ抱いたのかさえ忘れていた感情と繋がる瞬間を生み出すのだから。そしてフォトグラファーという奴らは、その瞬間を実にうまく捉える。捉えて、その奥に広がる物語に見るものたちを引きずりこむ。 俺はまだ一度しか会ったことのないコリンの目がファインダー越しに捉えた瞬間の数々を、ページ越しに自分の昔を重ね合わせて見た。コリンの見たインディアナの夕陽はかつて自分がテキサスで見た夕陽となり、過ぎ去った日々の感傷となり、俺自身のものとなる。

そしてそれはこの自由な移動が禁止され、旅という行為が何よりも高価で手の届かないものになった今、俺ができうる最も旅に近い行為であり、旅そのものだった。

野村訓市

まさに「TRAVELLING WITHOUT MOVING」というわけですね。

ちなみに、本作は感度の高いアート作品を多く取り扱う「スタックス(stacks)」より出版されます。

¥3,520

さらに写真集発刊に合わせた写真展が幡ヶ谷の「ギャラリー コミューン(gallery commune)」にて開催され、またフォトTのリリースもあります。

¥6,600

アートそれ自体も、コロナ以前とはまた違った捉えられ方をされているように思います。自由の象徴というと、乱暴すぎますが。心を潤してくれるアートにぜひ触れてみてはどうでしょうか。

INFORMATION

Colin Sussingham “Disappear Into Earth”

会期:5月8日(土)〜23日(日)
会場:GALLERY COMMUNE
住所:東京都渋谷区西原1-18-7

Colin Sussingham:@colinsuss
stacks:@stacks_bookstore
GALLERY COMMUNE:@ccommunee

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP > NEWS