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写真家山谷佑介を巡る 旅、写真集、書店、その他いろいろ。
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写真家山谷佑介を巡る
旅、写真集、書店、その他いろいろ。

昨年の夏、自分自身をさらけ出したドラムパフォーマンスをひっさげてバンドマンよろしく欧州を旅して回った写真家の山谷佑介。その旅の模様をつぶさに記録したのが、400ページ強の大作『Doors』です。今となっては自由に旅ができなくなってしまいましたが、旅が写真、写真集、写真家に与える影響とはどんなものなのでしょうか?この度、『Doors』というひとつの作品を軸に、かねてより山谷と交流のある野村訓市、「flotsam books」の小林孝行が集まり、3人で旅、写真、書店などについて果てしのない会話を繰り広げました。

PROFILE

山谷佑介

1985年新潟県生まれ。2013年に初写真集『Tsugi no yoru e』を自費出版で刊行。主な写真集に『ground』『RAMA LAMA DING DONG』『Into the Light』など。最新作は欧州を旅する中で撮影された『Doors』。

PROFILE

野村訓市

1973年生まれ、東京都出身。1999年に辻堂海岸で海の家「sputnik」をプロデュース。2004年には、友人と店舗設計などを手がける「tripster」を設立。現在は雑誌の原稿執筆から店舗などの設計、企業のブランディング、ラジオパーソナリティまで多彩な仕事を手がける。

PROFILE

小林孝行

ファッション、写真集、アート系のジャンルを中心に、ビジュアルブックを専門に扱う「flotsam books」のオーナー。フイナムブロガーでもある。
www.flotsambooks.com/

ー 今日は山谷さんの写真集『ドアーズ(Doors)』刊行に際して、みなさまに集まっていただきました。よろしくお願いいたします。

山谷:ありがとうございます。

野村:今日は写真集の話と、あと本屋の話ができればいいのかなと。

山谷:はい、よろしくお願いします。

野村:これ(写真集『ドアーズ』)ね、、分厚くて重くて、邪魔だったよ(笑)。

山谷:すみません、400ページもあるんで(笑)。

ー 最初にみなさんの関係性について、簡単に聞かせてください。

野村:えーっと、山谷くんと会うのは今日が初めてなんですよ。

山谷:いやいやいや。今日で3回目でしたっけ?(笑)

野村:けど、なにげに最初に会ったのって、アメリカだよね?

山谷:あー、そうでしたね。

野村:NYで会ったんだよ。

山谷:ですね。メシ食いましたね。

野村:けど、会うよりも先に、『スタジオボイス(STUDIOVOICE)』で仕事振ってたんだけどね。写真を見て面白いなと思って声かけたんだよ。

山谷:はい。作品を載せてもらったり、ブツ撮りしたり、あとはそれこそ小林さんと対談させてもらったり。

小林:ありましたね。

野村:おれ、あのときNYに何しに行ったんだっけな。

山谷:『グラインド(GRIND)』じゃないですか?

野村:あー、じゃぁマイケル・アヴェドン(リチャード・アヴェドンの孫)の撮影のときだ。

ー それが何年くらい前ですか?

山谷:5~6年くらい前ですかね。

ー 山谷さんの作品は、何を見たんですか?

野村:何ってわけじゃなくて、『スタジオボイス』で一緒にやってた子達が、色々まとめて見せてくれたんだよね。ほら、俺って若い子が好きじゃない(笑)。

一同:

野村:年配のおじいさんとかにも仲良しはすごく多いんだけど、なにか仕事をするってときは、なるたけ若い子に振るっていうのがポリシーで。

山谷:そのあともイベントに誘ってもらったりしましたね。で、ここ2年くらいは一緒に撮影とかするようになりました。朝5時集合みたいな撮影にも、訓市さん来ましたよね。大遅刻されてましたけど(笑)。

野村:そうだね、山谷くんの顔を見に行こうかなと思ってさ(笑)。俺はさ、行動力があるひとは好きなんだよね。あと、あんまり裏打ちのないひと。

ー どうなるかわからないけど、やるみたいな。

野村:よくわかならいけどやるとか、相談したくせに全然ひとの言うこと聞かないでやるとか、そういうひとが好きで。意見を求められて「そうですよね」って言うようなひとは、長持ちしないからね。例えば「ヨーロッパに行こうと思うんですけど、どう思いますか?」って聞いてきて、「うーん、今はどうかな」「ですよね」って辞めちゃう子って、結局一生行かないんだよね。「行かないほうがいいんじゃない」って言ったにも関わらず、2週間後にインスタとか見たら「行ってる!」みたいな子の方がいいかなって。山谷くんはそうだよね。同年代のカメラマンとは雰囲気が違うよね。良くも悪くも(笑)。

ー 今、おいくつなんですか?

山谷:35歳です。

野村:もうそんなになるんだ!

山谷:今日写真を撮ってくれてる名越さんと初めて会ったときは、たしか19歳くらいでした。

名越:そうやったね。まだ写真やってなかったもんね。

山谷:そう、当時はバンドやってて。「ビームス」が主催のイベントで、数人の写真家が日替わりで撮影するっていうのがあったんです。

名越:僕が主催者の知り合いに「誰か個性的な子を連れてきて」と言われて呼んだバンドのメンバーの一人が山谷くんでした。そのときの見た目を一言でいえば、クイーンみたいな感じでしたね(笑)。

ー 山谷さんと名越さんの関係性は、以前フイナムでインタビューさせてもらいました。
ちなみに、小林さんはおいくつなんですか?

小林:僕は名越さんと近いですね。42です。

ー なるほど。訓市さんと小林さんは以前から繋がってたんですか?

小林:僕は前々から存じ上げてました。

野村:この本屋さん、オンラインでずっとやってたよね。俺なんか買ったことあるよ。あと「フロットサム(floatsam)」といえばさ、「フロットサムアンドジェットサム(flotsam and jetsam)」っていうスラッシュバンドがあるよね。

小林:あー、聞いたことあります。

野村:だから、「フロットサムアンドジェットサム」が好きな人がやってる本屋なのかなって思って。それって、ものすごく狭いとこついてるなって。そんなにたくさん聞いたバンドじゃないけど、なんか念仏のように呟いちゃうんだよね。フロットサム、フロットサム、って。

山谷:残りますよね。

ー ハードコアとかが好きなんですか?

小林:いや、全然。僕、音楽全然詳しくないんですよ。

山谷:けど、こないだ雑誌の取材が来てたよね。

野村:それ、「フロットサムアンドジェットサム」って言えばよかったじゃん。なんか適当なエピソードをでっちあげてさ。彼らが来日したときに、生まれて初めてZINEをもらって、とかさ(笑)。

山谷:いいですね。それくらい適当に答えたい(笑)。最近みんな真面目だからなー。

小林:そうだね。真面目だね。

ー というと?

山谷:なんかみんな、真面目に本を作りたいとか、とにかく真面目に作品に取り組んでる人が多いんですよ。

野村:けど、それって家で音楽作ってる子が、レコードを作りたいって言ってるようなことと同じなんじゃないの。物体じゃないものを物体にするのって、一大事じゃない。

山谷:その通りですね。

野村:なんでみんなレコードを作りたがるんだろうって思ってたんだけど、「やっぱり自分の音が固形になるってすごいことだと思うんですよ」ってひとに言われて、なるほどねって。

山谷:フィジカルを求めるっていうのはありますね。話を戻すと、このコロナでみんな真面目に考えてるから、そういう意味でいうとこの作品(Doors)ってけっこうユーモアなところがあるんです。自分ではクソ真面目にやったんですけど、結果としてユーモラスになって。けど、ユーモアがあるってすごく大事なことだなって思うんです。そこから「写真とは?」とか、旅とか色んな要素が入ってくるんですが、掴みとして間口が広い方がいいなっていうか。今回の写真集では、そういうことを考えてましたね。

野村:これっていつの旅なんだっけ?

山谷:去年の9月です。

野村:なんかさ、写真を撮りたいから旅に行くっていうか、旅に行きたいから写真を撮るみたいなのってなかった?

山谷:そうですね。たしかにずっとバンドをやってたから、、


野村:そう、ツアーに行きたいからなんとかしないと、みたいな。目的がどっちなんだろうって思ったの。旅に行きたいから、ドラムのパフォーマンスをしてそれをショーにすればうまいこといけるんじゃないかっていう。

山谷:で、クラウドファンディングで金を集めて(笑)。


野村:そうそう。なんかその感じが、すごくいいなって思ったんだよね。

山谷:確かにそうかもしれないです。俺はバンドをやっててうまくいかなかった人間だから、やっぱりツアーに憧れてるところがあって。メンバーみんなで、いろんなところを回っていくって最高だなって。しかもヨーロッパツアー!?みたいな。うん、そういうフレーズに引っ張られたところはあると思います。今、気づきました。

野村:旅先で写真を撮ってるカメラマンって、最初は取材旅行というわけじゃなくて、旅をしてるときに撮りためたものが、そのまま作品になったりするわけじゃない。けど、だんだんそういうことでもなくなってくる。

山谷:うんうん。

野村:理由がないと海外にも行かないし、仕事をもらって海外に撮影に行って、その間に撮ったりもするかもしれないけど、まず遊びに行くっていうのが先に立つことがなくなってくると思うんだよね。俺も、バックパッカーのときを振り返ってみると確かに珍道中で、いろんなことがあったから面白おかしく友達とかに話すと、「お前仕事がないんだったら、本を書けばいいじゃん」って言われたり、「多分、訓市がやってたのはこういうことなんじゃない?」って言われてロバート・ハリスの本を渡されたこともある。あの本って、すごくかっこよく書いてあるじゃない、自分の旅を。自分もこういう本を書いたら美化してしまうんだろうなっていう危うさも自分のなかにある気がして。それを金に変えたら今まで苦労して過ごしてきた思い出を汚してしまうと思ったから、やんなかったんだよね。

INFORMATION

flotsam books

住所:東京都杉並区和泉1-10-7
営業:14:00-20:00
営業日:要確認

ww.flotsambooks.com

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