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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.17 “ストーリーを語ることによって価値が生まれる”シュプリーム。

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そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

今回から、3ショップが入れ替わってリスタート。第17回目は「インスタントブートレグストア(instant bootleg store)」の坂本一さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


坂本一 / instant bootleg store 主宰
Vol.17_シュプリームのTシャツ

―さて、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?

今回は、以前のスピンオフ回でも取り上げた〈シュプリーム(supreme)〉。ここ最近急速にヴィンテージとして扱われ出して、一年前では考えられないくらい色々な古着屋さんで目にするようになりましたが、ぼくが思うニュー・ヴィンテージとしての〈シュプリーム〉を改めて掘り下げたいなと。なかでもコレからの季節に主役となるアイテムであり、ブランドの魅力を伝えるのにも一番分かりやすいTシャツに焦点を当ててお話をさせていただきます。

―おかげ様でスピンオフ回は評判も良く、〈シュプリーム〉のインラインは、ニュー・ヴィンテージという概念を説明する上で、分かりやすいサンプルとして認知されるようになりました。

とはいえ〈シュプリーム〉であれば、どんなモノでもニュー・ヴィンテージになるかと問われれば、それもちょっと違う。〈リーバイス(Levi’s)〉だって、501の価値が高まってから、それ以外の品番も引っ張られてヴィンテージに仲間入りしていったじゃないですか。それこそスピンオフ回でも、みんな地味なインラインのアイテムを持ち寄っていましたが、普通なら素通りしてしまうようなモノにもちゃんと魅力が詰まっているのが、〈シュプリーム〉の地力の伺えるところで最大のストロングポイント。例えばこれなんかがイイ例です。

シュプリームのTシャツ ¥24,200(インスタントブトーレグストア)

―美味しそうですね。でもなんで、パストラミサンドウィッチ!?

って思いますよね(笑)。これは2005年にリリースされた、通称”パストラミT”。仰る通り、パストラミサンドウィッチがプリントされているんですが、実はバックデザインに答えが隠されているんですよ。要はデザインソースが分かるっていう。大多数の日本人はもちろん、アメリカ人でもニューヨークに住んだり、訪れた経験のある人でないと馴染みがないかもですが「カッツ・デリカテッセン」という超老舗サンドウィッチ屋がありまして…。

―映画にもよく登場し、ニューヨークを代表するスポットのひとつとして知られているお店ですよね。

そう! そこの外壁にこのバックプリントのデザインが全く同じように描かれているんです。いや、たしかにニューヨークレペゼン感全開ですけど「そこ!?」みたいな(笑)。これに気付けると一気に魅力的なアイテムに思えてきますよね。ブランドとしてはネタ元を晒されたくないだろうし野暮なんですが、我々日本人はそうやって古着を楽しんできた歴史があるし、こうゆうのがニュー・ヴィンテージとして〈シュプリーム〉を楽しむ際に欠かせないポイントじゃないかなと。毎シーズン型数が半端じゃないので、派手なコラボ物ばかりが記憶に残りがちですが、この手の地味なヤツが実は一番“らしいコト”をやってるんですよね。それで言えばコレなんかも…。

シュプリームのTシャツ ¥27,500(インスタントブトーレグストア)

―おっ、これはストレートに格好いいヤツじゃないですか!

ご存知〈チャンピオン(champion)〉とのコラボレーション。これは90年代終わり頃のやつですね。〈チャンピオン〉がいまのようにファッションとして捉えられるようになった経緯として、日本で古着が流行って逆輸入的に世界に広まったっていうのはあります。この頃はあくまでアメリカンアスレチックウェアを作るメーカーという感覚だったため、むしろコラボと呼ぶかさえ怪しいところで。単に〈チャンピオン〉をボディに使っただけみたいなノリだった可能性はありますが(笑)

―これも元ネタってあるんですかね?

ヴィンテージで見つかる〈チャンピオン〉のカレッジ物からインスパイアされたデザインでしょうね。そういう意味でも、コレこそ“ぼくらやもっと上の世代の古着フリークと新しい世代のヴィンテージ好きを繋ぐハブ”となるアイテム。まさにニュー・ヴィンテージと呼ぶに相応しいのではないでしょうか。で、ドン尻に控えしはデッドストックのコチラ!

シュプリームのTシャツ ¥29,800(インスタントブトーレグストア)

―フォトTはすごくセンスが問われるアイテムですが、これのポイントは?

ヴィンテージの定義ってただ古ければイイかといったら、そこはちょっと違うじゃないですか。背景に語れるストーリーがあったり、誰々が着用したモデルだとか、そういう付加価値が重要になってくるワケで。コレも2019年リリースなので古くはないのですが、背景にあるストーリーが抜群! ご存知の方も多いと思いますが、「シュプリーム ロンドン」のオープン直後にサインボードの盗難事件が発生したんですよね。で、その事件のすぐ後に、第1号店であるラファイエットストリートにあった店舗のクローズのタイミングで発売されたTシャツがコレ。

―で、その2つのトピックがどう関係するんですか?

実はこの写真に写っているのが、1号店で最初にかかっていたバナーなんです。ゆえにファンの間ではダブルミーニングになっていると言われています。盗難・閉店とヒストリカルな出来事があった年を象徴するデザインということで、非常に感慨深いっていうね。まぁ、アイテム的にはボックスロゴの亜種と考えていいでしょう。それとボックスのフォト物ってほとんど出してないので、貴重な存在でもあります。そういった観点からもこの通称 “バナーT”は、10年後にニュー・ヴィンテージになり得るアイテムじゃないでしょうか。

―確かに背景を知ることで、途端に欲しくなってきますね(笑)

これもスピンオフ回でも話しましたが、〈シュプリーム〉って元ネタのアナウンスを全くしないんですよね。でも、その排他的なところがイケてるんです。今回紹介したTシャツだって、デザインの意味を理解するためには、こちら側にも相当な予備知識が求められる。だからこそ、それが分かった時に何倍にも愛着が沸いてくる。ちゃんと王道的なモノも作れるブランドだからサンプリングしても安っぽくならないですし、そんなモノ作りを毎シーズンやっているということが賞賛に値しますよね。デザインやネームバリューだけに固執していると素通りしてしまうようなモノにこそ、ニュー・ヴィンテージとしての価値が隠されているというワケです。皆さんも興味があればぜひ、調べまくって深掘りしてみることをオススメします。

坂本一 / instant bootleg store 主宰
原宿「BerBerJin」にて8年余り古着業界に携わりバイイングも経験。その後、セレクトショップ「FAN」に参加。以降は様々な企画を手掛ける。その坂本一が思う良い物を“素敵な小遣いの使い方”をテーマに販売する古着屋、それが「instantbootlegstore」である。
インスタグラム:@hajime0722

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