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で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ  “ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。
What Is NEW VINTAGE?

で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ
“ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。この古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ってもらう連載「で、NEW VINTAGEってなんなのさ?」の今回はスピンオフ回です。テーマは、いまやストリートの絶対王者となった〈シュプリーム(SUPREME)〉。各店がニュー・ヴィンテージとして残っていくであろうアイテムを紹介し、その見所や楽しみ方を好き勝手に話してもらった1万字オーバーの大放談。少々長いのですが、最後までお付き合いください!

PROFILE

坂本 一

「インスタントブートレグストア(instantbootlegstore)」主宰。「ベルベルジン(BerBerJin)」にて8年余り業界に携わりバイイングも経験。その後、セレクトショップ「ファン(FAN)」に参加。以降は様々な企画を手掛ける。その坂本 一が思う良い物を“素敵な小遣いの使い方”をテーマに販売する古着屋「インスタントブートレグストア(instantbootlegstore)」を始動。
Instagram:@hajime0722
公式HP:instant-bootleg.com

PROFILE

羽月基(左)
葛西智裕(右)

「ブルールーム(blue room)」オーナー。スタッフは20代で構成されており、90年代〜00年代のストリートウェアなどを主に取り扱う。当時のファッションやカルチャーを、リアルタイムで通ってないなりの解釈で提案し、同世代を含む若い世代に、当時の熱量を伝えることを目的して活動中。現在はオンラインショップのみで、店舗の再オープンに向けて、日々準備中とのこと。
Instagram:@blue_room___
公式HP:blue-room.jp

PROFILE

青木 崇

「シエスタ(SIESTA)」店主。渋谷・神南エリアの人気古着屋「I&I」を経て、インポート&古着、自転車のパーツなども取り扱うショップ「シエスタ」を、原宿・とんちゃん通りにオープン。アメリカ西海岸周辺のカルチャーの匂いを感じさせるセレクトで、スケーターや自転車乗り、シティボーイから業界関係者まで幅広くファンを獲得。昨年で10周年を迎え、11年目に突入。
Instagram:@siestastore
公式HP:siesta81.com

PROFILE

伊藤忠宏

「伊藤商店」店主。2008年に古着屋「T」を高円寺にオープン。ストリートに根ざしたセレクトが話題を呼ぶ。その後、渋谷に移転し、ミュージシャンやファッション業界人などにもファンを拡大。現在は古着や、自身が手がけるヘッドウェアブランド〈ギーク(geek)〉などをセレクトした、ウェブショップ「伊藤商店」を運営。さらに不定期でポップアップストアも開催する。
Instagram:@mr_t_ito
公式HP:itostore.thebase.in

Selector 1_Instantbootlegstore 坂本一

地味なインラインにこそ語れるアイテムがある。

ー それでは、それぞれがお持ちいただいた“ニュー・ヴィンテージな〈シュプリーム(SUPREME)〉”を紹介していただきましょうか。

坂本: では、ぼくからいっちゃいます! まずはこのジップフーディーです。

伊藤: いきなりシブイなぁ〜(笑)

坂本: そう、これがまたシブイんですよ。買ったのは2001年なんですが、こういうのしか買えなかったんですよ、当時は。いまもそうだけどショップにすごく並ぶじゃないですか。でもコッチは、メシの種として本気で来ている転売ヤーとかじゃないから、何か格好いいからってノリでいざ買おうにも、こういう何でもないヤツしか残ってないっていう。で、これのポイントがフード部分。“Home of the Bravest”って刺繍が入っているんですが、この年にアメリカで同時多発テロが起きたじゃないですか? その時、ショップのスタッフに「俺たちのホームタウン(ニューヨーク)は負けない!」というメッセージが込められているって言われて、「ウワッ、超格好いい! 買います!」って即決(笑)。フロントには同色でアーチ型にデザインされた“NEW YORK”のロゴもいいんですね。

伊藤: アーチで“SUPREME”っていうデザインは多いけど、“NEW YORK”っていうのはあまり見ないすね。というか、コレだけかも。

青木: たしかに。

坂本: それこそ、ニューヨークの同時多発テロがあったから誕生したデザインといわれる所以なんじゃないですかね。そもそもニューヨークのスケートセレクトショップのオリジナルとしてはじまったブランドだけあって、地元のスケーターたちのフッド感というか、そういう格好良さをはじめて教えてくれたのが〈シュプリーム〉。1994年に誕生して、それと同時期か少しあとに、日本でも裏原宿ムーブメントが起こるんですけど、仲間内で本当に格好良いモノを共有するという文化の下地が、ここにあったんじゃないかなって。

ー ちなみに“Home of the Bravest”というワードはアメリカ合衆国国歌の歌詞にもあり、“勇者の故郷”と訳されるようです。このフルジップという仕様も2000年初頭らしいですよね。

伊藤: いまは出してないってことは、ぶっちゃけプルオーバーに比べて売れないんじゃないですかね。というか“ジップフーディーが今年くる!は、こない”って古着業界あるあるでもありますし(笑)

青木: というかコレって退色したブラック? それともブラウンなの?

坂本: こいつはブラウンで、ボディはカナダ製です。

ー ということはCYCがOEM生産していたものですね。〈スプルース(SPURUCE)〉や〈ウイングス・アンド・ホーンズ(wings + horns)〉を展開していた。

坂本: ですね! 同地の水が硬水だからか生地自体も硬く、ヘビーデューティーな雰囲気が特徴です。

伊藤: いきなり語れるヤツ持ってきて、ハードル上がっちゃったなぁ(笑)

一同: (爆笑)

羽月: いまアリですよね。ジップフーディーは一昨年くらいから「誰も着てないしアリでしょ!」ってことで、ぼくらも注目していました。

葛西: うん。最近はプルオーバーよりもジップの気分だったりするし。

羽月: 特にサーマル付きはヘビーで暖かいので、アウター代わりに着たりもしていますね。それにアーチロゴってロマンを感じるっていうか。

坂本: そう、男のロマンなのよ。アーチロゴって。

青木: おっ、キタね(笑)

坂本: 〈シュプリーム〉っていまでは、ファッションにさほど興味がない人たちも、このロゴありきで着ていたりするじゃないですか? だからって、〈シュプリーム〉=ダサイっていう認識は間違っていると思うんですよ。いつも格好いいと思う。分かりやすいネタ使いのアイテムがフィーチャーされがちですが、コラボとかじゃないけど語れるアイテムって、実はこういう地味なインラインにこそあるっていうのを伝えたかったんです。そして20年後には、そういったアイテムを元ネタに使うブランドも出てくるはず。そこで「これは2001年のアイテムで〜」なんて語れるようになったら、もうそれはオーセンティックな古着と同列にあるワケで、まさにニュー・ヴィンテージってことなのかなって。

ー 坂本さんより少し年上の青木さんから見て、このフーディーはいかがですか?

青木: イイね。それこそ当時の代官山店ってマジ怖くって、しかもメチャ並んでいるから欲しいモノなんて、なかなか買えなくって。そんな中で人気のブラックが買えず、しょうがなく買ったブラウンがいま、逆に格好いいと感じられる。これも時間を経て熟成されたと考えるなら、まさに本来の意味でもヴィンテージって呼べるよね。

なんか雰囲気がイイっていうので十分なんですよ。

ー そしてもう1つは?

坂本: 〈パドモア&バーンズ(PADMORE & BARNES)〉とコラボしたレザーブーツですね。たまたまなんですが、これも2001年リリースかつブラウンカラー。〈クラークス(CLARKS)〉のファクトリーとしても知られていて、実は名作「ワラビー」を考案したのもココ。いまも創業当初から変わらず、アイルランド製を貫いているブランドです。ぼくの場合、このブーツを通して〈クラークス〉よりも先に知ったんですよね。せっかく行ったんだから、何か買わないともったいないっていうノリで買っただけあって、当時全然履かなかったっていう(笑)。当時はスウェットにチノパンみたいな、ド普通な格好で合わせたりしていました。

伊藤: 全然売れてなかったよね、コレ(笑)。デザイナーチームが〈クラークス〉を好きみたいで自己満的なノリで別注していたみたいですけど、とはいえ2000年代初頭にこのコラボを実現させたのはすごいですね、いま考えると。

坂本: 〈パドモア〉自体、どちらかといえばキレイめな印象が強く、それをストリートという切り口で持ってきたのも画期的でしたね。

ー 売れなかった=隙間という視点では、まごうことなくニュー・ヴィンテージですね。青木さんいかがですか?

青木: イイんじゃないの。

坂本: そう! なんか雰囲気がイイっていうので十分なんですよ、コレは。だってヒール部分に入ったロゴの型押しとインソールのプリント以外はインラインとほぼ同じ。

伊藤: しかもハジメちゃんのはどっちも薄れちゃってるから、コラボかどうかも全然分かんない(笑)

葛西: でも、実は……っていう分かりづらさが逆に良くって、いまこそ履きたいヤツですよね。

坂本: 今回は、どちらもデザインや製造背景など、アイテムに隠された意図を読み取ることができるアイテムを選びました。こうやってインラインの何でもないモノに注目し、さらに深掘りすることで〈シュプリーム〉の新たな楽しみ方に気付くキッカケになるんじゃないかなって思っています。

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