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【FOCUS IT.】ファッションディレクター高島涼がリアルへ回帰。ヘドメイナーの隣に工芸品が鎮座するセレクトショップ「+81」とは。

インスタグラムからはじまり、YouTubeの配信、そして3つのブランドのディレクションも手がける高島涼さん。そんな彼によるセレクトショップ「+81」が五本木にオープンしました。コンセプトに“シームレス”を掲げ、国内外やジャンルを横断した高島さん“らしい”ラインアップが店内に並びます。

固定観念にとらわれないスタイルでアプローチしてきた彼が描くリアルな空間とは。そして、ファッション×伝統工芸に向けられた展望についてもお伺いしてきました。

PROFILE

高島 涼
ファッションディレクター

1992年生まれ。静岡県出身。建築士からアパレル販売員に転身。2018年に独立して、インスタグラムやYouTubeなどのSNSを用いてファッションを発信。自身の名を冠したブランド〈リョウタカシマ(RYO TAKASHIMA)〉を旗揚げし、他にも〈ラムス(rams)〉や〈ワイス(WEISS)〉も手がける。セレクトショップ「プラスエイティーワン(+81)」では、ディレクションからバイイングまでを担当。
Instagram:@ryo__takashima

建築業界で培った不動のバランス感覚。

ー そもそもの話になるんですが、服を好きになるきっかけはなんでしたか?

学生の頃から服は好きだったんですが、本気でファッションに目覚めたのは、「ステュディオス」に入る前、建築系の仕事に就いていたころですね。そこの先輩がとにかくおしゃれで、休みの日にいろんな服屋に連れて行ってもらって徐々に覚えていきました。

ー そこからアパレル業界へ転身したのは、かなり大きな決断ですよね。

そうですね。転職を考えていたのは仕事に就いて3年目のころで、資格が取れるとかいろんなことが重なっていたタイミングだったんです。このままいまの仕事を続けるか、それともファッション業界に挑戦するのかってことを1年近く悩んでいました。でも、その先輩を筆頭に周りの人たちに後押ししてもらって、転職を決意しました。

ー その決断があるから、いまがあると。いまではご自身のブランドも手がけられていますが、建築で培ったことが生かされていると感じる瞬間はありますか?

あんまり大げさなことは言えないですが、自分のつくる服に構築的な部分が加わっていたらいいなと思っています。最近インテリアに興味が湧いてきたのは、その影響が大きいのかもしれないですね。

“◯◯系”のない時代の
シームレスなセレクト。

〈ラキネス(RAKINES)〉や〈エムエーエスユー(MASU)〉、〈コッキ(KHOKI)〉などがラックに顔を連ねる

ー 以前から自分の店を持ちたいと思っていたんですか?

はい、前職時代からの夢でした。「ステュディオス」にいたときから、周りに「いつか自分のセレクトショップをやりたい」と話していたくらいだったので。ようやくといった感じですね。

ー SNSで発信していたのも、オープンするための布石だったとか?

いやいや、当時ははっきりとしたビジョンがあったわけではなく、漠然とした気持ちでした。SNSで発信するようになったのも、最初は販促のためだったんです。ぼく自身が接客に長けていたわけではなかったので、他の人と違うことをして注目されなくちゃと思っていて。

ただ振り返ってみると、誰よりも早く行動に移していてよかったなと思っています。この経験があったからいろんな人に知ってもらえるようになったし、自分の好きなものをセレクトして発信するという、いまの土台になったのかなと思います。

ー これまでさまざまなブランドのアイテムを紹介されてきた高島さんですが、ショップのセレクトに関してはどういった基準で選ばれていますか?

「+81」では、“シームレス”というコンセプトを掲げていて、国内外やジャンルを問わず、さまざまなブランドやアイテムをピックアップしようと思っています。それと実際に足を運んで、自分の目で見てきたものをセレクトしています。

ー インポートブランドもセレクトされてますが、それも同じですか?

基本的にはそうですね。〈ヘドメイナー(HED MAYNER)〉もパリに行って、デザイナーさんにお会いしたことがありますし、〈コッキ(KHOKI)〉というブランドはファーストシーズンにたまたま表参道で見つけて。そういう偶然の出会いや人との繋がりで知ったブランドが中心ですね。

ー 高島さんご自身のスタイルもまさに“シームレス”ですよね。ストリートとモードなど、さまざまなジャンルを巧くミックスされています。それは意識的にされてきたんですか?

いえ、これとこれを混ぜようみたいなことは特に考えていたわけじゃないです。それこそ、SNSで発信するようになった当時は参考にする人もいなかったので、試行錯誤の連続。その中で成功したこともあれば、失敗したこともたくさんあって。いろんなものを見てきたから、“シームレス”というスタイルができたのかなって思っています。それにいまは「◯◯系」みたいなものがなくなっていると思うので、若い子たちにとって、ぼくみたいな考え方が自然なんだと思います。

ー なるほど。高島さんのスタンスに憧れている方もかなり多いですもんね。

いやぁ、ありがたい限りです(笑)。

ー やっぱり照れ臭いですか?

めちゃくちゃ照れますよ(笑)。ぼくと同じような服装をしてるお客さんも多くて、うれしさ半分、照れ半分って感じです。ほんとに感謝しかないです。

ー でもそれは高島さんが「売れそうだから」という目線ではなく、「自分が着たい」という正直な目線でアイテムをピックしているからでしょうね。

そう思ってもらえていたらうれしいですね。お客さんは大切なんですが、媚びるのは違うなと思っているんです。「このアイテムはお客さんが好きそうだから」って媚びすぎてしまうと、きっと期待値を超えられないと思うので。

ー ネットとリアル、その両輪をうまく活用されている高島さんにお伺いしたいんですが、それぞれのメリットはなんですか?

やっぱり、ネットはスピーディにいろんな人に届けられるし、受け取れるので、圧倒的に便利ですよね。服に興味を持ってもらえるきっかけになりやすいのかなって思います。その反面、すべて完結させるのは難しい。極端な話をすれば、16万円もするコートをネットでポチるなんてぼくには絶対できない(笑)。

やっぱり自分の目で見て触って、ちゃんと確かめないと決断しづらいと思うんです。こんな時代なので、なかなか難しいことだと思いますが、なるべくお客さんと直接コミュニケーションを取りたいんですよね。ネットを介して興味を持ってくれた人と距離を縮めるのがこの場所だと思っています。

ー その考えに至ったのは、これまでの経験を通してですか?

そうですね。インスタライブで細かいところまで紹介したり、試着しても実際に本人が着てみないことには本当の魅力は伝わらないと感じていたんです。TVでタレントさんがいくら美味しそうにごはんを食べていても、味なんてまったくわからないじゃないですか。服もそれと一緒だなって。

ー たしかにそうですね。

「これだ!」って服に出会えたときの高揚感は、リアルの方が何倍も大きい。ぼく自身が強くそう思っているので、みんなにもショップならではの楽しさをしっかりと感じてほしいんです。それに最初は買う気じゃなかったけど、着てみたら気に入って衝動買いしちゃうってこともありますし。リアルな空間にはそういうイレギュラーがあるからおもしろいし、魅力的だと思っています。

ー これまでポップアップを通じて、お客さんと直接コミュニケーションされたことも大きいですか?

かなり背中を押されましたね。大阪でポップアップをしたときもSNSで「実物を見てみたい」と多くの声をいただいていたから、やってみようと思えましたし。そのポップアップでもお客さんが喜んでくださっていて、ぼく自身がそういう声をダイレクトに聞けたり、実際に着ている様子を間近に見れたのがうれしかったんですよね。

デザイナーズ×地場産業のフォアサイト。

ー 内装はかなりシンプルに設計されていますよね。“シームレス”というコンセプトの受け皿にぴったりですね。

内装はデザイナーさんに頼まず、ぼくたちで考えました。なるべくナチュラルな雰囲気でお客さんがリラックスできる空間にしたいなと。いざ出来上がってみると、自宅を見られているような気がして、少し恥ずかしい(笑)。

ー そうですね、以前高島さんのご自宅にお邪魔させていただきましたが、面影があります(笑)。服だけでなく、ディータ・ラムスのスピーカーなど、工芸品やアート作品も気になりますね。

これは販売しているわけではないんですが、ショップとしてだけでなく、今後はギャラリーの機能も持たせたいと思っています。アートやインテリアの個展、伝統工芸や地場産業なんかも発信できたらなって。

ー 伝統工芸や地場産業は意外ですね。

別件で京都に行く機会があって、そこでモノづくりの現場を見させてもらったんですが、すごく技術が高くて、それに感動しちゃって。だけど、その現場にいる方たちのほとんどがおじいちゃん、おばあちゃんたちで。後継者不足だったり、コロナの影響でなくなりそうな工場が多いということを聞いて、とても気になっています。

まだ取り組みができているわけではないですが、伝統工芸の技術を応用して現代的なプロダクトに落とし込めないかなって考えています。

ー たしかに、高島さんのような影響力のある若い方が日本の技術を発信すると、また違った目線で捉えられそうですよね。国内外のブランドを見て、着てきたからこそ、ジャパンメイドの本質的な良さがわかるというか。

そうしていきたいですね。日本人なのに日本のことを知らなすぎたということに気づいて。「+81」というショップ名も日本の国際ダイヤルから拝借しているので、ここから海外に向けて発信できたらなという思いがあります。

ー 〈ヘドメイナー〉の隣に、日本の工芸品が並んでいたら、かなりおもしろいですね。まさにシームレス!

そういった仕掛けしていきたいですね。そのためにも、まずは身近な人たちに喜んでもらいたいです。

INFORMATION

+81

住所:東京都目黒区五本木2-15-7 市川ビル1F
時間:14:00〜20:00、土日祝12:00〜19:00 水曜休
「+81」オフィシャルサイト
Instagram:@plus81.official

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