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不可思議な愛を、脆くしなやかな映像で描くホン・サンス。ベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した新作『逃げた女』が公開です。

これほど作風がわかりやすい監督はいない。しかし同時に、これほど鑑賞者を思索の渦に巻き込む監督もいない。

本日6月11日(金)公開の新作は、彼を知らないひとはもちろん、彼のファンをも困惑と興奮のフェーズに誘ってくれます。

STORY
5年間の結婚生活で一度も離れたことのなかった夫の出張中、初めてひとりになった主人公ガミ(キム・ミニ)は、ソウル郊外の3人の女友だちを訪ね、再会する。バツイチで面倒見のいい先輩ヨンスン、気楽な独身生活を謳歌する先輩スヨン、そして偶然再会した旧友ウジン。行く先々で、「愛する人とは 何があっても一緒にいるべき」という夫の言葉を執拗に繰り返すガミ。穏やかで親密な会話の中に隠された女たちの本心と、それをかき乱す男たちの出現を通して、ガミの中で少しずつ何かが変わり始めていく。果たして「逃げた女」とは誰のことなのか、そして、彼女は一体何から逃げたのか。

韓国が誇る映画監督ホン・サンスは、『ソニはご機嫌ななめ』(‘13年)や『正しい日 間違えた日』(’15年)、日本人になじみのあるもので言えば、加瀬亮さん主演の『自由が丘で』が代表作として思い出されます。

過去作はほとんどと言っていいほど、気まぐれな男性に振り回される”女性”を描いており、奇妙なズームアップや長回し、日常的なのにどこか可笑しなセリフまわしなどの手法が多く見られます。ともすればドキュメンタリーに捉えられる自然体な映像ですが、そこには緻密な設計がちゃんとあり、そんな無二の映画はヨーロッパを中心に世界各国で評価されています。

しかし、男性と女性の対立構造をつぶさに描いてきた過去作とは打って変わって、新作『逃げた女』は、女性心理に焦点を絞り、脆くもしなやかな映像で映していきます。ホン・サンスと公私ともにパートナー関係にあるキム・ミニが主人公のガミを演じ、かつて交流のあった女性3人に会いに行くという物語です。

結婚後、夫と一日たりとも離れたことがないガミが、女性3人と互いの恋愛観や過去の話をするなかで、自身の人生に立ち返る。その心の機微を、決して大げさではない映像で切り取っていきます。室内劇でありながらも、ときおり雄大な自然や道ばたに寝転ぶ動物のカットがはさまれ、その奥行きの深さには心がかき乱されます。

ガミを取り巻く女性3人にも注目。『夜の浜辺でひとり』(’17年)でもキムミニと共演したソ・ヨンファとソン・ソンミは親密な掛け合いを披露し、『はちどり』(’18年)のヨンジ先生役が記憶に新しいキム・セビョクが、また新たな一面を見せてくれます。

第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞し、日本の映画館でも特集が組まれるなど、すでにその期待値が高まりつつあります。公開は本日6月11日(金)から。ホン・サンスはきっとあなたの映画観を書き換えてくれます。

INFORMATION

映画『逃げた女』

監督・脚本・編集・音楽:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョクほか
原題:도망친 여자
英題:The Woman Who Ran
字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ
2020 年/韓国/韓国語/77 分/カラー/ビスタ/5.1ch
© 2019 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved

公開日:6月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

公式サイト

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