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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.22 “定番と思いきや、実はレア!?” なステューシーのワールドツアーT。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

第22回目は「ペンギントリッパー(PENGUIN TRIPPER)」のアベヒロユキさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


アベヒロユキ / PENGUIN TRIPPER 店長
Vol.22_ステューシーのTシャツ

―さて、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?

今回もまた〈ステューシー(STUSSY)〉です(笑)。名作と呼ばれるアイテムは沢山存在していますが、ファンならずともストリートカルチャーをかじった経験がある人なら1度は見た覚えがあるのが、この「ワールドツアーT」じゃないでしょうか。

ーたしかに〈ステューシー〉の代表的Tシャツといえばコレ! といったイメージがあります。

初登場年に関しては実は明確にされておらず、88年とも89年とも言われているようにブランドの初期から存在していました。以降、現在に至るまで継続リリースされてきましたが、実はこのモデルって、近年では販売期間が決まっているアイテムでして……。

ー販売期間とは?

昔はシーズン立ち上げ時に入荷し、それが完売したらそのシーズン分は終わりという感じでしたが、今は何ヶ月かごとに数週間の期間限定でリリースするという販売方法がとられている模様。それだけブランドの中でも、特別なデザインとしての位置付けがなされているということでしょうね。

―そもそも「ワールドツアーT」がどういったアイテムなのか知らない人もいそうです。

デザイン的な特徴を挙げるなら、定番のストックロゴにSSリンクロゴ、さらにニューヨーク、ロサンゼルス、東京、ロンドン、パリといった都市名がプリントされています。この都市名が入っている理由には諸説あって、ブランドの創設者であるショーン・ステューシーがファッション的な影響を受けた都市名が並んでいるとする説が有力視されています。では、古いものから年代順に追ってご覧いただきましょうか。まずはオリジナルと称されている初期タイプから。

ステューシーのTシャツ ¥24,990(ペンギントリッパー)

ープリントに色ムラがあったり、ハンドメイドっぽい感じですね。

実はこのロゴ部分にも初期モノは違いがあるというのをご存知ですか? 上部の3つの点が90年代中盤以降は、このように2つになります。この理由をショーン本人に直接聞いた人の話によると、本人はなぜ3つの点を付けたのかをよく覚えてないそう。当時の、イイ意味で適当な空気感を感じさせるエピソードですよね(笑)。ちなみにファンの間では、シルクスクリーンプリントの版が潰れたか何かで、新たに作り直した際に2つになったんじゃないかと言われています。

ーしかしこのグラフィックのセンスは、今見ても色褪せませんね。

文字を描いただけのデザインを、ファッションとして昇華させたという功績は本当に称賛に値しますよね。ではこの流れで、近年のスタンダードなモノも見ていただきましょう。古着市場では様々なカラバリが見つかりますが、実は定番カラーと呼べるのは黒ボディに白プリント、白ボディに黒プリントの2色のみ。それ以外は、そのシーズンでしか作られない、いわゆるシーズナルカラーとなっています。

ステューシーのTシャツ¥4,990~5,990(すべてペンギントリッパー)

ーへぇ〜知らなかったです。そういえばアーティストとのコラボモデルも当時、色々とリリースされていた覚えがあります。

ですね。その先駆けが2003年に登場した“カスタメイド”というシリーズ。これは左が、ニューヨークのグラフティシーンではレジェンドの1人とされているクラッシュで、右が〈ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)〉でもグラフィックを手掛けたチカーノ・グラフティアートの巨匠、チャズ・ボホルケス。フォントが変わるだけで、こんなにも印象が大きく異なるのかと驚かされます。

(左から順に)ステューシーのTシャツ ¥9,990、¥9,990(ともにペンギントリッパー)

で、その後の2006年に“ワールドツアーパック”という名称で、さらにアーティストの数を増やして展開されていた時のものがコチラ。左が〈サンタクルーズ(SANTA CRUZ)〉のグラフィックアーティストとして知られるジム・フィリップス。右は同じくオールドスクール世代のスケーターにはおなじみの〈ブルドッグスケーツ(BULLDOG SKATES)〉です。

(左から順に)ステューシーのTシャツ ¥8,990、¥8,990(ともにペンギントリッパー)

ーこちらもそうですね。

白ボディの方がスケシン(スケートシング)さんデザイン。かなり崩しているので、パッと見は分からないかもですが、よくよく見ると構成されている要素は一緒。対する黒ボディの方は、〈グッドイナフ UK(GOODENOUGH UK)〉などでデザインを手掛けていた日本人アーティストのヒットさん。こちらも全然別物にしか見えませんが、よく見るとエンブレムの周囲に都市名が記されています。このように「ワールドツアーT」というフォーマットのみ指定され、あとは完全にアーティスト自身にお任せだったようで、各々の個性が発揮されたユニークなデザインが見つかります。

(左から順に)ステューシーのTシャツ ¥12,990、¥9,990(ともにペンギントリッパー)

ー最後に改めて、ニュー・ヴィンテージとしての〈ステューシー〉の魅力とは?

この「ワールドツアーT」がまさになんですが、正直かなりの数が市場に出回っているので“いつでも買える”と思われがち。ですが、古着屋でレギュラーとして売られているTシャツが、実はシーズン限定カラーだったり、知る人ぞ知るアーティストがデザインしていたりと、知れば知るほど面白い。しかもそれをもう1度買おうにも、同じモノはそうそう出てこないのでメチャクチャ困難。前回紹介した“チャプト限定”のようにネットでも情報が出てこない場合もやたらとあるし、〈ステューシー〉のなんでもないアイテムとの出会いは、皆さんが思っている以上に一期一会。なので、この記事を読んで興味を持った人がいれば、早めに古着屋へと足を運んでみてください。そこでちょっとでも気になるモノがあれば、とりあえず買っておくことをオススメします。

アベヒロユキ / PENGUIN TRIPPER 店長
〈ステューシー(STUSSY)〉のアーカイブを1,000点以上所有し、その物量と知識量から世界有数のコレクターとして海外でも名を馳せる男。原宿の「ペンギントリッパー(PENGUIN TRIPPER)」は、そんな彼が店長を務めるストリート特化型の古着屋である。また現在は、同じく原宿のとんちゃん通りに2号店「ペンギントリッパー B1(PENGUIN TRIPPER B1)」も営業中。
インスタグラム:@penguin_tripper@xxabehiroyukixx

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