〈モンクレール(MONCLER)〉が世界中の傑出したクリエイターやデザイナーを招き入れ、それぞれの独自性を賛美するかのようなプロジェクト「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」。藤原ヒロシやジョナサン・アンダーソン、クレイグ・グリーンらが名を連ねることでも知られています。
このプロジェクトのひとつが〈2 モンクレール 1952 マン(2 MONCLER 1952 MAN)〉。ご存知ない方のために説明すると、このブランドは2018年に誕生。〈フェンディ〉や〈アクネ ストゥディオズ〉でも辣腕を振るったセルジオ・サンボンがデザイナーを務めています。
この9月にローンチしたばかりの最新作のテーマは「東京マインドセット」。今コレクションのために〈アンドワンダー〉や〈スイコック〉といった日本のブランドを指名し、取って置きのアイテムを揃えたといいます。さらに、〈モンクレール〉に欠かせないダウンジャケットやその他のアウターには東京にちなんだ名前が付けられているところも特徴のひとつ。ポップでウィットに富んだコレクションは、どんな思いのもと生み出されたのか? 今回、我々フイナムはザンボンにメールインタビューを申し込みました。
PROFILE
デザイナー。エジプト出身。イタリア人の父とクロアチア人の母のもとに育ち、「ヨーロッパ・デザイン学院」でファッションを学ぶ。〈フェンディ〉 に12年務めた後、〈アクネ ストゥディオズ〉のメンズウェアのヘッドデザイナーとして活動。2018年、〈2 モンクレール 1952 マン〉のヘッドデザイナーに就任。
—〈2 モンクレール 1952 マン〉では、東京の街に注目されたそうですね。そのきっかけや理由を教えてください。
私は活気に満ちたメガロポリス「東京」の大ファンです。東京の若者のスタイルや、日本のファッションブランドにはいつも魅了されています。また、先進的な考え方と同時に、目に見える形で文化を継承している点にも惹かれています。
—〈アンドワンダー〉や〈スイコック〉とのコラボレーションは、あなたがつくり出す〈2 モンクレール 1952 マン〉のワードローブに何をもたらしましたか?
2020年春夏シーズンから、クリエイターを通じて都市とのコラボレーションを行っています。昨年はLA、今年は東京を選びました。〈アンドワンダー〉のミニマルかつ機能的なスタイルと〈スイコック〉のアイコニックなサンダルをとても気に入っています。〈モンクレール ジーニアス〉というプロジェクト全体と、私のコレクションの両方でコラボレーションが行われていますが、そこから生まれるコミュニティの感覚をとても大切にしています。さまざまなクリエイティビティと協業することは楽しいですし、コラボレーションを通してお互い影響を与え合うことがプラスになると思います。
—コレクションの中核にあるアイディアだという “休息” について教えてください。それは、世界中の人々が過ごしたこの1年半に及ぶ日々にも関係していますか?
密接に関連しています。パンデミックの渦中、〈ビルケンシュトック〉のシューズ、カシミヤのソックス、トラックスーツにアウターを着て、唯一の外出機会である食べ物の買い出しに出かけていました。これが、私の生き方であり、インスピレーションの源でもあるのです。そして、その間、持続可能性と快適性という2つの要素が、私にとってとても大切でした。それ以前とは異なり、いまではプロジェクトをつくるためのキーとなっています。
—あなたが現在考えている “コンフォート” とはどのようなものですか?
コンフォートとは、スポーティなサンダルやニットのトラックスーツ、その上からダウンジャケットを羽織って外出することを意味しています。
—今回のコレクションのキーとなる要素について教えてください。
特定のルックやアイテムというよりも、カラーパレットがポイントになっています。グリーンとブラックのケープ、ミニマルかつ新しいアプローチのカラーブロック、そしてポップなカラーの組み合わせ。このように、私は色で遊ぶことが大好きなのです。色はパンデミックの影響を受けているいまだからこそ、ポジティブな影響を与えられると思っています。暖色と寒色の組み合わせで遊んだり、色を用いてさまざまな年代のスタイルを表現するのもいいですね。
—〈モンクレール〉にまつわる、個人的なエピソードはありますか?
1980年代にイタリアではストリートムーブメント「パニナリ」に関連して〈モンクレール〉が大ヒットしたことを覚えています。〈モンクレール〉がイタリアのブランドであるということは、イタリア人がいかに現代のラグジュアリーをリードしているかを示していると思います。
—モネスティエ・ドゥ・クレルモンで創業した〈モンクレール〉のレガシーは、〈2 モンクレール 1952 マン〉にどのように息づいていますか?
例えば、〈モンクレール〉のアイコニックなジャケット「カラコルム」のファブリックとシルエットをアップデートしたモデルなど、いくつかのアイテムはブランドのヘリテージとリンクしています。私はアイコニックなダウンジャケットに新しいイメージを与えるというチャレンジが気に入っていて、今回のポップなルックもそのためにつくりました。〈モンクレール〉のスタイルを進化させ伝統を継承しながらも、まったく新しい現代的な方法で表現することが求められるのです。
—今回のコラボレーターのひとりであるナイジェリア出身のグラフィックデザイナー、カロ・アクポキエールについて教えてください。
彼を「ヴェネチア・ビエンナーレ」で初めて見た時、日本の古いグラフィックを再構築した作品に魅了され、今回のコレクションにぴったりだと思いました。
—〈2 モンクレール 1952 マン〉では環境負荷の低いファブリックやアクセサリーを用いたアイテムをつくっています。いまファッション業界は環境に与える影響が特に大きいと言われていますが、ザンボンさんはこの状況を打開するにはどうするべきだと考えていますか?
サステナビリティは現在進行形のプロセスです。ヴィーガンマッシュルームレザーのように、革新的な技術が日々生まれていることを知っているので、可能な限りサステナブルな素材を取り入れるように努力しています。
—ザンボンさんはこれまで〈フェンディ〉や〈アクネ ストゥディオズ〉でも活躍してきました。ご自身が、理想とするファッションデザイナーや尊敬している方がいましたら教えてください。
イヴ・サンローランやストリートウェア、音楽にも影響を受けましたし、「モンクレール ジーニアス」のプロジェクトに参加しているクレイグ・グリーンやジョナサン・アンダーソンのプロダクトにも、とても感心しています。
2021 AW COLLECTION WITH “TOKYO MIND-SET”
「東京マインドセット」をテーマに掲げた今シーズン。ザンボンのフィルターを通した大都会のイメージがグラフィカルなデザインとして表現されています。さらに、変化する時代に合わせて、リラックスした要素を取り入れているのも特徴のひとつ。適度な機能性を持ち合わせたワードローブを一気に紹介します。
Photo_Kazuma Yamano(Still Life)
Text_Tatsuya Yamaguchi