〈チューダー(TUDOR)〉の注目度が日増しに高まっている。牽引役は「ブラックベイ」。ドーム型の風防やスノーフレーク針といった往年のスペックを研ぎ澄ましたものづくりで目の肥えた男を唸らせたコレクションである。
そんな〈チューダー〉が満を持してリリースしたのが「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」だ。お尻の “925” から推察できる通り、オープンケースバックにまとわせたのはシルバー925である。間に挟んだ “フィフティ-エイト” はベースとなったダイバーズウォッチRef.7924、通称 “ビッグクラウン” が発売された1958年にちなんでいる。
シルバーはかつてはありふれたマテリアルだったが、経年変化が進むと黒ずんでしまう欠点があり、現在はほとんど使われていない。
この欠点を克服すべく開発したのがインカンデセントシルバー。シルバー925は92.5%の銀に銅やパラジウム、ニッケルなどを混ぜ合わせたものをいうが、〈チューダー〉は残り7.5%の配合の工夫により黒ずみを抑えることに成功したという。
サテン仕上げを施したそのケースは “ビッグクラウン” を彷彿とさせるプロポーションと相まってマスキュリンのひと言。トープカラーのダイアルとベゼルインサート、そしてファブリックストラップのバイプレーヤーぶりも見逃せない。
ケースバックから覗くのはキャリバーMT5400。スイス公認クロノメーター認定を取得したそのキャリバーは合格ラインの日差−4秒から+6秒を軽くクリアして、−2秒から+4秒に収めてきた。パワーリザーブは70時間。金曜の夜に外し、時間を忘れて週末を過ごしても、月曜の朝もまだゼンマイを巻く必要がない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa