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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.32 “洒落が効いててオンリー・ワン”。犬と言葉の 80〜90’sスウェット。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

第32回目は「ミスタークリーン(VINTAGE CLOTHES & ANTIQUES “Mr. Clean”)」の栗原道彦さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


栗原道彦 / VINTAGE CLOTHES & ANTIQUES “Mr. Clean” オーナー
Vol.32_80〜90’sのプリントものクルーネックスウェット

―今回、ご紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

今回のテーマは、再評価の動きもある80〜90’sのプリントスウェット。その中でもドッグプリントとメッセージプリントを紹介したいと思います。そもそもなぜこの辺りが今イイのか。ぼくの中でこの辺の年代のスウェットはTシャツと同じ扱いなんですよね。これまで古着業界におけるスウェットの立ち位置というのが、色々な種類があるTシャツに対し、「年代が古い=イイ物」というヴィンテージ的価値観で語られる存在でした。ジャンルも基本がミリタリーとカレッジの2択みたいな。それが近年のオーバーシルエット流行もあって、この辺の年代やジャンルもアリとなってきたことで「意外と面白いモノがあるじゃん!」って気付かされて。

―たしかにドッグプリントは最近、盛り上がっていますよね。でも、コレってどこから火がついたアイテムなんですか?

どちらかといえばTシャツの方がよく見つかるんですが、流行り始めたキッカケはSNSでしょうね。それも日本からの発信で。その影響から、ここ1年ほどでアメリカでも値段が高騰してきていて、昔なら15ドルで買えたのが今じゃフリマで40ドルとかもザラにあります。

―アイテム的な特徴ってあるんでしょうか?

モノによっては、全体像があって犬種の特徴が描かれていたりもしますが、人気があるのは犬の顔と犬種名がプリントされたこのタイプ。「BACA’s BULLDOG」というのは、飼い主がバカさんだったんでしょうね。「馬鹿のブルドック」ではなく、あくまで「バカの飼っているブルドック」っていう意味合いかと。

オニータのクルーネックスウェット ¥8,800(ミスタークリーン)

―色合いや風合いが、何だかちょっと不思議ですね。

それはブリーチされているから。元はグレーだったけど、色が抜けて杢感が出たんでしょうね。ちなみにボディは90’sに裏原宿系のブランドも使っていた〈オニータ(ONEITA)〉。この感じで、ブルドッグ以外にもラブラドール・レトリーバーやコリー、ダックスフンドなど、ほぼ全犬種あるんじゃないかってくらい豊富なバリエーションが揃います。というワケで続いては、こちらも人気のパグ。ボディは〈ヘインズ(Hanes)〉でラグランスリーブというのがミソ。

ヘインズのクルーネックスウェット ¥6,600(ミスタークリーン)

―可愛いですね。写実的なタッチで犬好きにはたまらない。で、もう一つがメッセージプリントですね。この「UGLY XMAS SWEATER.」というのは?

欧米では12月になると、クリスマスがモチーフになったダサイ「アグリーセーター」をあえて着て楽しむという文化があるんですが、それをプリントするという、要はアメリカンジョーク。同じように、ハロウィン用の「THIS IS MY HALLOWEEN COSTUME」とプリントされたTシャツもあるので、そのノリですね。パッと見は普通に格好良く、さらにメッセージの意味を分かっているとより面白いっていう。

フルーツ オブ ザ ルームのクルーネックスウェット ¥6,600(ミスタークリーン)

―確かに普通に格好いい! でもシルエットはちょっと面白いですね。

あぁ、それはメンズじゃないからでしょうね。これは〈フルーツ オブ ザ ルーム(FRUIT OF THE LOOM)〉のレディスでサイズはXXL 。80年代以降になると、大手メーカーはどこもメンズとレディースでシルエットを変えて販売するようになっていったんですが、基本的にレディースモデルは身幅がちょい広く丈が短め。そういう意味では今っぽいボクシーなシルエットになっており、これもその例に漏れずユッタリしたサイズ感。男性でも全然着れちゃいます!

―栗原さん的メッセージプリントを選ぶ際の基準を挙げるとすれば?

ちゃんとプリントの意味が分かって、人からツッコまれても大丈夫で、洒落が効いているモノを選ぶのが大前提。これなんかは本当に存在するのか、冗談なのか分かりませんが、「左利きの方が優れている」と主張する、言わば左利き至上主義団体(!?)の一着。アレクサンドロス大王から、ベーブ・ルースにピカソ、チャップリンといった古今東西の左利き有名人の名が、左寄りにプリントされています。なかなか洒落ていると思いません?

フルーツ オブ ザ ルームのクルーネックスウェット ¥6,600(ミスタークリーン)

―話のネタにもなりそうだし、まさに古着ならではの一着。その他に、素材やディテールなどで押さえておくべきポイントってありますか?

スウェットはTシャツに比べて、ファッションアイテムとして認知されるようになったのが80’s以降と比較的最近。なので、ここら辺もボディのほとんどがコットンとポリエステルの50%:50%だったりするし、素材やディテールがどうのこうのっていう部分はあまり気にする必要はないかと。むしろコットン100%に比べると生地もソフトだし、オーバーサイズでも違和感なく着こなせるので、気になる一着を見つけたら即購入をオススメします!

栗原道彦 / Mr.Clean オーナー、ヴィンテージバイヤー
10代の頃よりヴィンテージショップで働き始め、その後、原宿の名店「ロストヒルズ」のバイヤーに。2011年に独立し、フリーランスとして活動したのち、富ヶ谷に「ミスタークリーン」をオープン。またヴィンテージバイヤーとして、1年のうち約180日間はアメリカへ渡って買い付けを行う強者。その豊富な知識と確かな目利きにより、フイナムの名物企画「古着サミット」では初回からレギュラーメンバーを務める。
公式サイト:www.kurikurivintage.shop-pro.jp
インスタグラム:@mrcleantomigaya

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