〈ジル サンダー(JIL SANDER)〉の2022年の春夏コレクションはたまらなく軽やかで、心が浮き立った。
そんなシーズンを象徴するのがニットだった。
ひとつはドナルド・ジャッドの作品にインスパイアされたロングスリーブニット。ドナルドはミニマリズム・ムーブメントの旗手と讃えられたアメリカの美術家だ。後世の評価も頷けるマルチカラーブロックがウール、シルク、リネンの三者混のニットに映える。首、裾、袖口はリブ編みで仕上げている。
もうひとつはロンTをレイヤードしたシルクモヘアのオープンニット。ドロップショルダー&オーバーサイズフィットが駄目を押して、そのニットは中空に舞いそうなほど軽やかだ。
Tシャツの背中に描かれたレターは “AUTONOMY&CLARITY”。前者は自主性、自治、後者は明晰、明瞭といった意味になる。ボーダーレス&アグレッシブに生きる人々を切り取った、このシーズンのキーワードである。
ビビッドなカラーパレットもタイポグラフィもクリエイティブ ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が愛してやまないストリート由来のものだが、ふたりの手にかかればご覧の通り、洗練を極める。毎度のことながらそのさじ加減には唸らされた。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa