CLOSE
NEWS

連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.33 “ちょっとヒトヒネリ”が面白い。2000年代のステューシーのパンツ。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

さて連載開始から5シーズン目に突入し、参加ショップも入れ替わってリスタートした本連載。第33回目は「テンポ(tempo)」のブンヤさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


ブンヤ / tempo オーナー
Vol.33_ステューシーのパンツ

―ブンヤさんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

それこそリバイバルもあって、かつてレギュラーと言われていた90年代までのアイテムはある程度、掘り尽くされたと個人的には感じていて。そこで新しいものに注視していきたいと考えた際に、“時代的にはそう古くないのに見かけなくなったモノ”の中にも良品がまだまだ埋もれていると気付いたんですよね。実際、当時は見ていたはずなのに、コレは知らないなってアイテムってあるじゃないですか。本連載で「インスタントブートレグストア(instant bootleg store)」の坂本さんが紹介していた〈ギャップ(GAP)〉なんて、まさにソレで。

―確かにオーセンティックのアイテムが多い印象ですけれど、2000年代になると変なアイテムが出てきたりして。

そうなんですよ。“時代が古いモノほどイイ”という古着的価値観が存在するからこそ、みんなが気にしていない“その他”にこそ面白いモノがあるっていう。そこで今回は、ウチの店でも推している00年代の〈ステューシー( STUSSY)〉から、“ちょっとヒトヒネリ”のあるパンツを取り挙げたいと思います。

―「テンポ」では90年代〜00年代の〈ステューシー〉を数多くセレクトされていますが、その辺のアイテムでは、何か特徴があったりするんですか?

〈ステューシー〉に限らずですが、この時代に作られたストリートブランドのアイテムって素材やパーツに凝っているモノが多いんですよね。ガラケーやMP3プレーヤーサイズの内ポケットなど時代感を反映したディテールとか。ジーンズのコインポケットのように本来の用途から離れたデザイン的ポイントとして、若い世代が楽しんでいるのも面白いですし。こと〈ステューシー〉に関していえば、この頃から、よりストリートブランドっぽくなっていった印象があります。基本はベーシックだけど、“ちょっとヒトヒネリ”を加えたアイテムも多く見つかるっていう。

―なるほど。例としていくつか紹介していただけますか?

まずはこれです。タグから2000年代でも後期のアイテムと思われるのですが、見所はなんといっても、この充実すぎるポケット。正直な話、実用性としてはあまり高くないでしょうね。だって、こんなに小さくてしかも横向きのポケットが、しかもこの位置に配置されてもじゃないですか。〈ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉なんかでも、いくつかのモデルをミックスさせてというのは常套手段ですが、これはカーゴパンツでも元ネタがミリタリーとは考えにくく……どうなんだろう?

ステューシーのカーゴパンツ ¥11,000(テンポ)

ぼくがコレを見た瞬間、パッと思い浮かんだのが〈ジェネラルリサーチ(GENERAL RESEARCH)〉のパラサイトシリーズのフィッシャーマンパンツ。そちらは90年代なので時代的にはズレますが、なんらかの影響を感じますよね。しかも、ただデザイン的にキャッチーなだけでなく、春夏っぽく薄手の生地に負担がかからないように、スナップボタン部分を補強するといった気遣いも。この辺はさすがですね。

―こちらはフライトパンツですかね。

おそらくそうでしょうね。年代でいうと、00年代初〜中期のアイテムだと思われます。フロントとバックのポケットがジップ仕様になっていて、ヒザ部分とヒップ部分には直線的カットのパッチを当てていたりと、ミリタリー的アプローチは残しながら、本気度だけ中和したちょうどイイ抜き加減。なんとなく空気感が〈グッドイナフ(GOOD ENOUGH)〉のフライトパンツを彷彿とさせます。一言でいうならば、ストリートのフライトパンツという解釈でしょうか。

ステューシーのフライトパンツ ¥11,000(テンポ)

―ラストはちょっと毛色が異なる感じで。

ウエストがゴムで、裾はドローコードとサイドジップで調節するイージーパンツですね。この辺りも〈ステューシー〉の得意とするところで、ストリートでスポーツ MIXが流行っていた00年代によく見受けられました。素材はナイロンが入った薄手のリップストップコットンで左右のポケットには引き手としてパラコードを装備。これらの情報から、ミリタリーのトレーニングパンツをベースに、アウトドアの要素を足したモノではないかと思われます。すごく今っぽくないですか? 20年近く前のアイテムですが、時代にフィットした1本なんじゃないかなと。

ステューシーのイージーパンツ ¥11,000(テンポ)

―どれも派手さのあるアイテムではないけど、だからか本当に、ちょうどイイ感じですね。手に入れたら、即ワードローブのスタメン入りみたいな。

そう、そこなんですよ! この時代の〈ステューシー〉は、見たこともなかったアイテムが見つかるのが楽しいんですよね。言語化は難しいのですが、「ニュー・ヴィンテージとは?」という問いへの回答が、まさにこの感じなのかなって。冒頭で、“時代的にはそう古くないのに見かけなくなったモノ”の中にも良品がまだまだ埋もれている。と話しましたが、正確には、時代の流れの中で埋もれたのではなく“自分自身が気付かず通り過ぎてきたモノ”の中に、今見て面白いと感じるモノを見出す”。それがニュー・ヴィンテージであり、その楽しみ方なんだと改めて感じた次第です。

ブンヤ / tempo オーナー
「原宿シカゴ(HARAJUKU CHICAGO)」下北沢店から古着屋としてのキャリアをスタート。その後、旅に出たり他の古着屋で働いたりと紆余曲折を経て2016年、明大前に自身の古着屋「テンポ(tempo)」をオープン。90年代〜2000年代のグッドレギュラーを、ちょうどよいプライスで手に入れたければココに行くべし。
公式サイト:tempo2016.thebase.in
インスタグラム:@tempo.2016

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP > NEWS

関連記事#NEW VINTAGE

もっと見る