スタイリストとしてのみならず、写真に映像制作、はたまたブランドディレクションまで、肩書きにとらわれることなく自由に表現活動を繰り広げる梶雄太。そんな彼が自ら綴った〈サンセ サンセ〉の商品説明を、ランダムに紹介していく連載企画。2022年春夏シーズンは、パット入りのジャケットにまつわる親子の物語から幕を開けます。
国会議事堂を見に行きたいと言いだしたのは娘だった。
学校の社会の時間でちょうど民主主義ということを教わっているらしい。
娘の関心事に最大限の協力をすること、そしてその部分を最大限に引き延ばせるような環境を整えること、そうして得た経験や知識で自身の未来への選択肢を増やせるということ。
全ては民主主義というもののおかげなのかもしれない。
国会の中に入ると壮大に議員の写真がならんでいた。そのうちの1人とおもわれるお方がたまたま近くに。
「みんなただのオジさんみたい!」
気付いてない娘が写真を見ながら言った。
「オジさんじゃないよ、先生かな」
親としてもっともらしいことしか言えなかったそのタイミングに、その議員はこちらをみながら親しみのある口調で「そんな言い方をしないで大丈夫ですよ、私もたくさんのオジさんの中のたった1人にしかすぎませんからね」
そう言った後に優しげな顔をしながを肩を揺らして微笑んだ。
ジャケットにパットが入っていることはその時気が付いた。
この国は自由だ。