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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.36 “普通の良さ”を知る大人たちに。まだよく見る、緑タグのジェイクルー。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

さて連載開始から5シーズン目に突入し、参加ショップも入れ替わってリスタートした本連載。第36回目は、再びの登場となる「伊藤商店」の伊藤忠宏さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


伊藤忠宏 / 伊藤商店 店主
Vol.36_ジェイクルーのコットンアノラックパーカ&ナイロンアノラックパーカ

― さて、伊藤さんは1stシーズン以来の登場となります。お帰りなさい!

ただいま(笑)。ぼくの周りでも、この連載を見ているという声もよく聞くので、下手なものは出せないというかハードルが上がっていて……さらに久しぶりということもあり怖いですね(笑)。ということで今回は、ずっと温めていた〈ジェイクルー(J.CREW)〉を取りあげたいと思います。一部のアイテムは有名ですが、2022 S/Sシーズンから〈ノア(NOAH)〉のブレンドン・バベンジンがメンズチーフデザイナーに就任したこともあり、古着でさらに注目されそうなこのタイミングでいっときたいなと。

―ちなみに古着業界では、どういった立ち位置なんですか?

日本からは撤退してしまっているため、認知度の割に地位はちょっと低めという印象ですね。近しいイメージとしては〈ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉と同じアメカジ・アメトラ界隈で、立ち位置的にはその次にきて、それに続くのが〈ギャップ(GAP)〉〈バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)〉みたいな。90年代までのアイテムはすごくイケてるので、個人的にはもっと評価されてもいいと思っているのですが……。

―現行ものでも別注アイテムは、インポートセレクトショップでよく見かけますよね。

別注のベースモデル選びも〈ナイキ( NIKE)〉のキルショットや〈ニューバランス(New Balance)〉の1400や992など、すごくセンスがいいんですよね。また、その象徴だったのが2008年から2019年までニューヨーク・トライベッカにあった「リカーストア」という名のメンズショップ。古い酒屋をそのまま使った内装もイケてたし、他ブランドのアイテムセレクトも抜群。すごく格好良かったけれど、日本ではそのノリがイマイチ伝わってなかったのが残念でした……。

―なるほど。で、今回紹介していだくアイテムというのが?

まずは“名作”と名高いコットンアノラックパーカ。フード下にミニポケット、その下に大きなカンガルーポケットがあって、袖口にもジッパーを採用。いま人気のフィッシングブランドでも、今季これをサンプリングしたアイテムをリリースしていますし、〈シュプリーム(SUPREME)〉が〈ナイキ SB(NIKE SB)〉とのコラボコレクションで展開していたアノラックパーカも、まんまこのデザイン(笑)。このことからも、業界内での評価の高さが分かりますね。切り替えが施されたバイカラーが特徴で、この他にレッド、イエロー、ネイビー、それとシャンブレー素材 Ver.なんかもあります。気が利いたディテールを備えており、シンプルだけど奥深い一着です。

ジェイクルーのコットンアノラックパーカ 参考商品(伊藤商店)

―たしかに雰囲気がイイですね。続いては?

同じくアノラックパーカですが、今回はむしろコチラが主役です。単色1枚仕立てでシンプルなナイロン素材というのがポイントで、またこの無駄にデカくて使いづらいフラップポケットや、ちょっと野暮ったいコードストッパーなどギミックも興味深い。ぼくの中では〈ジェイクルー〉を象徴するアイテム=アノラックというイメージがあります。なんかアノラックの「頭からすっぽり被ればどうにかなる」という適当な感じがすごくアメリカっぽくないですか? これだって普通なら脱ぎ着のしやすさを考慮してサイドジップを付けたりするのに、それもないから着づらい(苦笑)。でも、そこもまた大人になって気付く良さというか。

ジェイクルーのナイロンアノラックパーカ ¥5,500(伊藤商店)

―この2つの共通点はアノラックというところでしょうか?

それでいうと、この緑タグですかね。90年代位までのアイテムにはこのタグが付いていて、オールド〈ギャップ〉の四角タグや〈エディー・バウアー(Eddie Bauer)〉の黒タグとか同じく、探す際の目印になります。だからといってこのタグが付いていると価値があるとかではなく、単純にぼくが好きなアイテムに多いというだけの話なんですけどね。

―以前、ニュー・ヴィンテージの定義として“まだ市場に十分な数があって誰でも楽しむことができること”と仰っていましたが、これなんかは?

コットンの方は既に価値が付いてしまっているので数は減っていますが、大部分のアイテムがそこに当てはまるんじゃないでしょうか。今はまだ「わざわざ狙って仕入れているお店ってあるのかな?」という感じですからね。見つかるのは普通のデザインばかりだけれど、基本的に大きなサイズのものしか出てこないことも相まって取り入れやすいのもイイんですよ。〈ギャップ〉同様、膨大なアイテムがリリースされているため、サンプリングしても分かりづらいから調子イイみたいな感じで、ネタにするようなブランドも増えるんじゃないかなと。みんなが気付いちゃう前に、ぜひチェックしてみてください。

伊藤忠宏 / 伊藤商店 店主
2008年に古着屋「T」を高円寺にオープン。ストリートに根ざしたセレクトが話題を呼ぶ。その後、渋谷に移転し、ミュージシャンやファッション業界人などにもファンを拡大。現在は古着や、自身が手がけるヘッドウェアブランド〈ギーク(geek)〉などをセレクトした、遊び半分のウェブショップ「伊藤商店」を運営。さらに不定期でポップアップストアも開催している。
公式サイト:ito-store.stores.jp
インスタグラム:@mr_t_ito

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