昨年9月に実現した魅力的なコラボレーションが、大いにシーンを賑わせたことは未だ記憶に新しい。それはなにせ、限られた相手としかコラボレートしない〈ループウィラー〉と、異業種とのクロスオーバーにより新たな価値観を創造してきた梶原由景さん、そして、いまやその一挙手一投足に業界中が注目する小木 “Poggy” 基史さんによる逸品です。その衝撃から半年、ついに第二弾がリリースされました。この全容を、梶原さん、小木さんの言葉から紐解いていきます。
PROFILE
「ビームス」でクリエイティブディレクターとして活躍後、独立し「ロウワーケース」を設立。異業種コラボの仕掛け人として、これまでに数々のプロジェクトに参画。近年では、アパレル企業の新規事業コンサルタントも手掛ける。
Instagram : @kajiwara_lc
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「ユナイテッドアローズ」のプレス、「ユナイテッドアローズ&サンズ」のディレクターなどを歴任し、2018年に独立。ブランドのディレクションや話題のコラボアイテムを手掛ける他、「2G」のファッションキュレーターとしても活躍中。
Instagram : @poggytheman
実現するべくして実現した両者のクロスオーバー。
以前から交流があったという二人。小木さんは梶原さんを「プレスだった時から温かい目で見守ってくれた先輩」と語り、梶原さんは「当時から飲みの場で頻繁に顔を合わせていて独特な感覚が面白かった」と振り返ります。その付き合いはかれこれ20年近い。ともすれば、昨年からはじまったプロジェクトもある種必然だったのかもしれません。小木さんはこう説明します。
「2018年に独立することを決め、その時、梶原さんにも報告させてもらったんです。それを梶原さんが覚えていてくださって、今回のお話もいただきました。〈ループウィラー〉はなかなかコラボできないブランドですし、それを提案できるのも〈ループウィラー〉の代表である鈴木さんと長年信頼関係を築いてきた梶原さんならではだなと思いますね」
「ご飯に行ってただけですけどね(笑)」とすかさず合いの手を入れる梶原さん。
「ただ、鈴木さんも小木くんと以前に多少関わりがあったみたいで、実現はしなかったけれど気にはされていました。そこで、どこかのタイミングで小木くんが独立した話をしたところ、鈴木さんもなにか一緒にやりたいと話されていたんですよ。だけど、いざスタートを切ったところ、小木くんのアイデアは鈴木さんの想像を超えるものだったので落とし所はいろいろと考えましたね」
とはいえ、小木さんのアイデアが単なる思いつきなどではなく、広く多くのひとたちに響くのは、これまでの経験がモノを言っていると梶原さん。
「小木くんの場合は、重松さん(現「ユナイテッドアローズ」名誉会長)や鴨志田さん(現「ユナイテッドアローズ」クリエイティブアドバイザー)のような東京のメンズファッションをつくってきたひとたちからもしっかり学ばれているのでファッションの背骨というんでしょうか、そこがしっかりしている。だからこそ面白い着想をしても成り立つんだと思います。多くのひとたちはその背骨がないから、ただ単におもしろいことだけやっていても続かない」
「ありがたいですよね」と小木さん。そして、多くのセレクトショップは、ただモノを売るだけの存在ではないことを強調する。
「セレクトショップっていろんな国のいいものをちゃんと選んでいますよね。そして、イタリアのジャケットにイギリスのシャツを合わせたり、スポーツウェアにエスニックなものやワークのものを取り入れたりもする。はたまた、いまのアイテムと数年前の古着、もしくは何十年も前のヴィンテージをワンスタイルで表現したり。セレクトショップは、国やテイスト、時間軸のミックスというめちゃくちゃ高度なことをしているんです。そこで学べたのは非常に大きいと思っています」
二人にとってのパーカの原点とは。
第一弾を鑑みても、メンズカジュアルのド定番であるパーカにこだわりとアツい想いを滲ませる梶原さんと小木さん。そんな二人のパーカの原点について話しが及ぶと、梶原さんはある雑誌からの影響を語りました。
「1984年に、雑誌『ポパイ』で “若者商品学” という面白い特集をやっていたんですよ。スニーカーだったらこれ、デニムだったらこれといった、メンズカジュアルの定番アイテムを定義付けた企画。もちろんスエットも項目の中にあって、さまざまなブランドのものが紹介されていました。ぼくは定番という概念がまだなかった時代から生きてきましたからやはりそこは追いかけますよね。そこに載っているのがぼくの中でのすべてといってもいい。未だにオックスフォードのBDシャツは着ていますし、古着屋の段ボールで売られていた3,800円のリバースウィーブのスエットも着る。着ては手放し、の繰り返しですね。ただ、当時着ていたものがいまでは数万円もするシロモノになっている。簡単に手放し過ぎたな〜とはちょっと後悔しています(笑)」
小木さんもそれに対して同調します。
「ぼくもリバースウィーブでした。シカゴブルズのやつを高校生の時に買ってよく着ていたのを覚えています。1990年代に、『ブーン』を見ながらヴィンテージに憧れていました。後付けパーカなんてもう高くて買えませんでしたから。そんな憧れがいまだ燻っているところはありますね。後付けパーカって、ジャケットのインナーに着るとネック周りに面白い変化が生まれるのでそういうところも好きなんです。いまはさらに値段も跳ね上がってますよね」
ただ、アメリカ一辺倒だった自分の中では〈ループウィラー〉との出会いはある種、衝撃的だったと梶原さん。
「基本、スエットというのはアメリカ製という考えがありました。〈ループウィラー〉に出会うまでは日本製のスエットに興味がなかったんですよ。でも、着てみたらすごくよくて。だからかもしれませんね、これまで着てきたリバースウィーブを手放ししまったのは」
プロジェクトコンセプトが色濃く反映された第二弾。
そんな背景を色濃く投影させた第一弾は、大好評のうちに幕を閉じたが、当初、小木さんの中では異なるイメージを描いていたといいます。
「最初、ボロボロのパーカをつくりたいなと思っていました。ボロボロって結構難しいじゃないですか。汚く見えてしまうボロボロもあれば、雰囲気のいいボロボロもある。いい塩梅の後者を古着屋で探すのが好きなんです。着込んだ時間や育てる方法はひとそれぞれですし、その魅力はお金では推し量れないところがある。ただ、雰囲気がよくても、例えば今回のパーカのモチーフとなった年代の両Vのモノって丈が短かったり、なかなかいい感じに着られるモノがないんですよね。それが、〈ループウィラー〉さんであったら面白いなって思って梶原さんに相談したんです」
「それはさすがに難しかったですよね(笑)」と梶原さん。
「〈ループウィラー〉はボロボロにならないっていうのが魅力ですからね(笑)。でもそこからの異なるアプローチは、小木くんらしいなと思います」
そこで小木さんは、方向性を変えることなく新たなアプローチを提案します。
「ヴィンテージのディテールを落とし込んで、〈ループウィラー〉のクオリティでやったら面白いんじゃないかと考えました。昔は手を温めるためにポケットがセパレートになっていたんですけど、そういうディテールを落とし込んだアイテムをつくりたいなと」
そんな小木さんの独特な感性を、より分かりやすく形にすることがプロジェクト内でのぼくの役割と梶原さんは語ります。
「彼はもう発信力も含め業界内ではファッションアイコンとして成り立っていますけど、一般の方が小木くんのような魅力を備えられるわけではありません。でも、彼が持っているものをエッセンスとして取り入れられるプロダクトがあったらすごくいいなと思うんです。そこでスポットを当てたのが、彼が日頃からそのよさを着こなしに取り入れているヴィンテージ。前回は、往年の古着でよく見られるセパレートポケットにしたりディテールに重点を置きつつ、シルエットや使い勝手などはいま風にするというアプローチで製作しました」
そして、今回の第二弾に対し、梶原さんは「プロジェクトのコンセプトをもっと深化させていった感じ」と話します。
「いわゆるヴィンテージの〈チャンピオン〉のリバースウィーブにあるような色を再現しました。’80年代ぐらいですかね。いわゆる、いま古着シーンで誰もが手に入れようと必死になっている年代のヴィンテージスエットにある色。古着では、リブの先がほつれているような状態のものしか残っていません。それはそれで価値のあるモノだと思いますが、普段から袖を通すのであれば雰囲気を楽しみつつより高品質のモノがいい、というのがぼくらの提案ですね」
梶原さん曰く「面白いのは、〈ループウィラー〉でありながらそうは見えない」という点です。
「赤は小木くんが提案した色で、ぼくが緑を提案しました。ベーシックなものもやった方がいいだろうということで、『アダムエロペ』さんにとってのベーシックな色であるダークトーンのカラーもラインナップに加えています。墨黒に白いひもって、いま改めて見るとアスレチックウェアにも見えるしモードにも見える。〈ループウィラー〉特有の質実剛健さやコンサバティブさもあるけどなんだかモード寄りにもなっている。そこが、コラボの面白いところなんですよね」
「次はもっと、小木くんのマニアックなところが反映されたアイテムを考えています」と梶原さん。第二弾が発表されてまだ間もないですが、お二人の中ではもう次なるアイテムへと進んでいるようです。その行方も気になるところですが、今季はひとまず第二弾のパーカを存分に楽しみましょう。
Text_Ryo Kikuchi
LOOPWHEELER × LOWERCASE × POGGYTHEMAN
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