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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.38 難しいのが“アリとナシの境界線”。でも、だからこそベネトンは面白い。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

さて連載開始から5シーズン目に突入し、参加ショップも入れ替わってリスタートした本連載。第38回目は「シーシーエックス(CCX)」の鈴木克哉さんの2巡目。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


鈴木克哉 / CCX 店主
Vol.38_ユナイテッド カラーズ オブ ベネトンの Tシャツ&トロリーケース

―さて、今回ご紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

今回は、30代後半以上の世代なら一度は目にしたことがあろう〈ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON)〉です。現在も存在しており、前身ブランドが1955年設立なので約70年の歴史を誇るイタリアの代表的ファッションブランドとされています。特に日本での知名度が高まった80年代から90年代にかけての人気っぷりといったら、当時日本でも人気だったイタリアンブランドの中でも、群を抜いていたんじゃないでしょうか。

―たしかに。で、どんなアイテムがあるんでしょうか?

当時だと、ファッション関係者にもファンの多い〈カルバン・クライン(Calvin Klein)〉や〈ギャップ(GAP)〉のノリに近いのですが、人種差別や性差別の撤廃を掲げたキャンペーンを80年代から行っていましたし、メッセージを発信するという点では他ブランドよりも早かったと言えます。ブランド名のカラーには“色”と“人種”という2つの意味があり、それがユナイテッド(団結)ですから、世界の融和を願うピースな想いが込められているんでしょうね。それがアイテムからも感じられる気がします。

―正直、ライセンス商品のブランド的なイメージがありました。

日本だとそうかもしれませんね。ですが、前回お話しした“パニナリ(イタリア版アメカジ)”にも通じるところがあって、80年代のアイテムでは〈ペンドルトン(PENDLETON)〉を意識したようなネイティブ柄のニットやアウターなど、アメリカへの憧れを感じるデザインも数多く見つかります。それが90年代に入るとメッセージ性や“ベネトンカラー”と呼ばれる独自の色彩感覚を前面に押し出したコマーシャルなアイテムが増えていく印象です。

―ユーズド市場では、バッグや小物をよく見かけますよね。

確かにライセンス商品でその辺りがよく出てきますね。バッグ、ハンドタオル、さらにはカンペンケースまで(笑)。その一方、服に関してはこだわったモノ作りをしていてクオリティも高く、中にはメイドインイタリーのアイテムもあったりします。ちなみに90年代はアメリカでもダンサーやミュージシャンが着ていたりしました。メッセージ性と派手なカラーリングが黒人文化にマッチしたんでしょうね。というワケで、そんな雰囲気が伝わる Tシャツを持ってきました。

―この陽気でポジティブなデザインは、まさにあの頃のベネトンのイメージ!

90年代のアイテムだと思われますが、最大のポイントは、このユースライクで派手な色使い。とはいえ、当時は大人が着ていたはずなので、感覚的には〈クージー(COOGI)〉なんかが近いかもしれませんね。パネル切り替えのボディとフロントのグラフィックプリント&刺繍が時代を感じさせます。先ほども話したように、90年代になるとビジュアルがメインになっていくので、そんなブランドの変遷が感じられるアイテムでもあります。

ユナイテッド カラーズ オブ ベネトンのTシャツ ¥6,600(CCX)

―もう一点は、トロリーケースですね。

先ほどもライセンスで色んなアイテムは作られていると話しましたが、こちらは90年代後期のインラインじゃないかな。ちょっとネタっぽくなっちゃうんですが“らしさ”のあるアイテムなのでぜひ(笑)。プラスチック製かポリカーボネート製のボディが、まるでオモチャみたいな見た目ですが、内装に総ロゴ柄の生地を使っていたり、ちゃんとダイヤルロックやキャリーハンドルが完備されていたりとしっかり作リ込まれています。もちろんポイントは原色全開な配色。こんなアイテムを贅沢に作っちゃうという点に、当時のブランド力と時代背景が忍ばれますね。もしかしたら大多数の方にとっては、これがベネトンのイメージかも。

ユナイテッド カラーズ オブ ベネトンのトロリーケース ¥16,500(CCX)

―両方ともインパクトが強いだけに、取り入れ方がポイントになりそう。

そこなんですよ! 探せば近所のリサイクル屋さんでも見つかると思います。ただ、アリとナシの境界線がすごく難しいのがベネトン。取り入れ方によってはすごくダサくなってしまう。そういう意味でも、前回の〈ベストカンパニー(BEST CAMPANY)〉同様、すごく堀り甲斐・着こなし甲斐がありますね。ぼくならさっきのTシャツはセットアップのインナーに合わせます。もしくはフレアデニムと Gジャンのセットアップに、ボリューミィーなスニーカーみたいな。またはカニエ・ウエストが出始めた頃のノリでY2Kっぽく、ちょっとアップデートさせる感じも面白いかと。ブランド名の通り、誰もがボーダーレスに取り入れられるという点が、ぼくはすごく好きなので、皆さんもぜひ自分らしく楽しんでみてください!

鈴木克哉 / CCX オーナー
自由にファッションを楽しむ人達に向けた“マイノリティの逆襲、尖ったものを発見する喜びを提案する”セレクトショップ「シーシーエックス(CCX)」を2021年7月7日にオープン。ヴィンテージ、デザイナーズ、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、ミリタリー、ワークなどジャンルに縛りを設けることなく、とにかく他には無いアイテムやスタイルを紹介する。
公式サイト:www.ccxwebstore.xyz
インスタグラム:@ccx_kitazawa

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