スタイリストとしてのみならず、写真に映像制作、はたまたブランドディレクションまで、肩書きにとらわれることなく自由に表現活動を繰り広げる梶雄太。そんな彼が自ら綴った〈サンセ サンセ〉の商品説明を、ランダムに紹介していく連載企画。今回は、ファッションにおけるトレンドとスタイルの虚しい関係性について、シャツの袖丈の長さを巡る小噺を通してお届けします。
そんなに服をたくさん買う方ではないんです。
シャツにパンツ。夏はそれでずっと通してました。それがですね、会社の後輩に笑われたんですよ。
シャツの袖が短くないですかって?
よーく廻りを見るといつの間にか半袖シャツの袖ってヒジに掛るくらいになってたんですね。
それで慌ててショップにシャツを見に行ったんです。事情を説明してショップの方といろいろなシャツを試着したんです。とても親切な方でアドバイスもしてくれたのですが、最後はやはり袖の短いシャツを選んでしまうんです。
そしたらショップの方がこう言うんです。
「新しい物を取り入れるだけがファッションではないですよ、お客様のようにいろいろ悩んでトライしつつも変わらないということも1つのスタイルを続けるという立派なファッションだとおもいますよ」
安心したぼくはいつもと同じ袖の短いボタンダウンのシャツを買ったんです。
買い物を終えてぼくがショップを出て少しだけ歩き出したその瞬間、店内からは大きな笑い声がきこえてきたんですよね。