〈カルティエ(Cartier)〉のレクタンギュラーウォッチは1917年に誕生して早々に、ファッションヒストリーに太字で記載された。アール・デコの先駆けになったためだ。三代目当主のルイ・カルティエが俯瞰した戦車に着想を得たというその名も「タンク」はルイが言うところの〈カルティエ〉の “根本精神” であり、数々の派生モデルを生んでいる。
そのひとつが、1922年に登場した「タンク ルイ カルティエ」だ。細く、丸みを帯びた縦枠、長辺を長くとったケース。「タンク」史上もっともエレガントな一本といって過言ではない。
新作の見どころは自ら “漆黒” と表現したのももっともな黒々としたダイアルにある。インデックスを排したそのダイアルとブラックアリゲーターのストラップに挟まれて、イエローゴールドのボディ、針、そして “CARTIER” と “SWISS MADE” のレターがくっきりと浮かび上がっている。そこにさり気なく輝くサファイアカボションがまた絶妙だ。「タンク」の名に相応しい、 マスキュリンとエレガンスの幸福なマリアージュ。
キャリバーは「1917 MC」。パワーリザーブは約38時間。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa