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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.43 若い世代の(多分)約9割以上が未体験、 トラッカーキャップは“ノリの良さがすべて”。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

なんだかんだ6シーズン目に突入した本連載。というワケで、ショップが入れ替わってリスタート。第43回目は、豪徳寺にある「アストロロジー ストア(Astrology store)」の與賀田洋佑さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


與賀田洋佑/Astrology store 店主
Vol.43_雰囲気とノリのいいトラッカーキャップ

―與賀田さんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

多分、この連載にこれまでご登場されてきた皆さんと、基本は一緒だと思います。“まだ世間が気付いていない面白さがあって、かつ新たな提案ができるモノ”。この2つがぼくの中では重要。アメリカ買い付けで古着の卸し業もやっていますが、向こうと日本では、同じ若い世代でも古着の着こなしにタイムラグにあるような気がします。なので、買い付け時に向こうの若い世代からヒントを得たりもしますし、そういった部分は意識するようにしています。

―ということで今回、ご紹介いただくのは?

色々考えたんですが、トラッカーキャップとかどうでしょうか。最近はあんまり被っている人もいなかったし、この辺のノリをアメリカの若い世代が取り入れているのを見て、「面白いなぁ」と感じるようになったのでイイかなぁと。それこそ90年代〜00年代初頭って、スケートボード・カンパニーからもよくリリースされてたじゃないですか? そういった当時のリバイバルっぽいノリもありつつ、ニッチな所を攻めてみたいなと思いまして。

―ノリで作れちゃうアイテムということもあってか、ファッションではない文脈で面白いデザインが見つかったりしますよね。

アメリカでは、もう完全に日用品の1つですからね。まぁ、それでいうとデニムなんかもそうですが(笑)。ぼく自身、若かりし頃はよく被っていたんですが、随分ご無沙汰ですね。ちょっと前に被りが浅く、バイザーがカーブしているダッドキャップが流行りましたが、そこからキャップを被り始めたような若い世代にとっては目新しいんじゃないでしょうか。

―確かにここ10数年間は流行った覚えがありませんし、全く通っていない世代がいる可能性は大きいですね。では、そんなトラッカーキャップを今ピックアップするとしたら?

大別すると、①フロントパネルにスポンジ入り、②スポンジなし、③フルメッシュとあって、さらに①だけどスポンジが劣化しちゃってヘタっているやつとかもあったりします。デザイン的には、フットボールや野球などのスポーツものと企業ものが多く見つかりますね。例えばこれ。ネブラスカ大学リンカーン校にコーンハスカーズというフットボールチームがあって、そこと試合した対戦相手が作ったものでしょうね。バッファロー(※ネブラスカ州に同名の郡がある)に載せた“H”UCKと“F”USKERSの頭文字を入れ替えることで相手を揶揄しています。この一見分からない感じが、すごく洒落てるなぁって。

対ネブラスカ・コーンハスカーズ戦のトラッカーキャップ ¥6,380(アストロロジー ストア)

―こちらは「ハーゲンダッツ(Häagen-Dazs)」ですね。

ハーゲンダッツのトラッカーキャップ ¥9,020(アストロロジー ストア)

見ての通り直球のロゴものデザインですが、ワッペンver.は結構珍しいと思います。Tシャツは、ブラック・フラッグのヘンリー・ロリンズが着たことで、その筋の人たちの間ではかなり値段がついていたんですが、グラフィックアーティストVERDYくんの〈ウエステッド ユース(WASTED YOUTH)〉とコラボした影響でさらに値段も高騰。その点、トラッカーキャップだったら探せば比較的安く見つかったりします。と言っても、そんなヒョイヒョイ出てくるものではありませんが(笑)

―これはオフィシャルですか?

だと思います。多分ユニフォームとして、当時店舗スタッフが被っていたものだったんじゃないですかね。販売されたものだったら、もっとタマ数があると思いますし。バイザーとボディが同色でこのワッペンというのが渋いですよね。値段はまぁまぁしちゃいますが、そこはコレクターズアイテムってことで。続いても企業ものです。

―この「セーフティーローン(SAFE-T-LAWN)」ってなんの会社なんですか? 

セーフティーローンのトラッカーキャップ ¥6,380(アストロロジー ストア)

これに関しては単純にノリがいいなと思ってチェックしていましたが、ちょっと調べてみますね……。あ、どうやらスプリンクラーの販売会社みたいです。“T”の部分をスプリンクラーのヘッドに見立てて、そこから水が出ていると。てっきり山が描かれていると空目してました(笑)

―そうやって背景などを調べる楽しみもありますよね。それも、よく分からないローカル企業の(笑)

そうすね、あと単純にプリントが地味に細かいというのもモノとしてのポイント高し。もうひとつの企業ものが「ベスティール(BESTEEL)」。これはベスト(最良)とスティール(鋼鉄)をかけている…んだと思います。韓国メイドなので80年代のものだと思います。先程の「セーフティーローン」は台湾メイドなんですが、こちらもイイですね。

ベスティールのトラッカーキャップ ¥6,380(アストロロジー ストア)

80年代だと韓国メイド、台湾メイドが多いですね。その他に香港メイドもありますし、当時は人件費的な理由で極東生産を選ぶことが多かったのでしょう。〈ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉なんかもそう。〈パタゴニア(Patagonia)〉も香港メイドや台湾メイドで面白いものが見つかります。それにクオリティの面でも、作りが良いものが多い。ただトラッカーキャップに関しては、特に関係ありませんが(笑)

キャンベルスープカンパニーのトラッカーキャップ ¥8,140(アストロロジー ストア)

―こちらが最初に説明いただいた③のフルメッシュですかね。涼しげで夏に良さげ!

アンディ・ウォーホルでもお馴染みの「キャンベルスープカンパニー(Campbell Soup Company)」ですね。このワッペンだけでも価値がありますし、ぼく自身もこれは初見。カリフォルニア州サクラメントにある本社工場のもので、工場のスタッフ用もしくはプロモーション用だったんじゃないかなと。トップボタンが赤でトマトっぽいのも可愛いんですよ。ピックする際には、「ここの企業ものだから」とかではなく“全体の配色やノリの良さ”を基準にすると、自分なりの楽しみ方ができるんじゃないでしょうか。

―こういったメッシュキャップって、クラウン部分が高くて被りも深いじゃないですか。被り方のポイントがあれば教えてください。

バイザー部分を変に曲げたりせず、あくまで適当かつ普通に被る。古着のキャップの場合、バイザーを曲げたら折れちゃったなんてことも多いので、やってもチョイ曲げくらい。自分の中でのルールとしては、プリントTだとうるさくなるので、無地Tに合わせるようにしています。あとはアメリカの若い世代を見ていると、シャツなどの小綺麗な格好にハズシとして合わせるパターンも多いので、ぜひ真似してみてください。

與賀田洋佑 / Astrology store 店主
古着業界でのキャリアスタートは、原宿の「ヴォイス(VOICE)」から。同店でバイヤーを経験した後に独立。自身で古着卸業を始め、10年目となる2021年、豪徳寺に実店舗として「アストロロジー ストア(Astrology store)」をオープン。店内には衣類だけでなく小物やヌイグルミなど、與賀田さんの審美眼で選ばれた“なんか雰囲気のいいアイテム”が並ぶ。
公式サイト:astrology727.base.shop
インスタグラム:@astrology__store

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