リバーシブルのスーヴェニアジャケットからインスパイアされたというその名も「リバーシブルサテンバッグ」は表地にフランス、裏地に日本のマップ、ならびにランドマークを刺繍している。鮮やかなサテンの裏地は思わず笑みがこぼれるほどかわいくて、用もないのにカバンの中身を確かめたくなってしまいそうだ。コンパートメントは身の回りのものがすっぽり収まるほどよいサイズ感で、レザーストラップを肩からかければハンズフリーで闊歩できる。
1950年代のアメリカンファッションへの憧憬、フランスと日本というメゾンのルーツを融合した――というのももっともなバッグである。
〈ケンゾー(KENZO)〉のアーティスティック ディレクターに就任したNigoのデビューコレクションは喝采を浴びた。彼の美意識は隅々にまで息づいていた。このバッグをみれば一目瞭然だろう。
慣らし運転と呼べるような期間もなく、いきなりフルスロットルで走り抜いてみせたNigoには驚くほかない。なおさら、彼の抜擢は運命づけられていたのかも知れないと思いたくなる。
高田賢三がパリのギャラリーヴィヴィエンヌに「ジャングル・ジャップ」をオープンし、勝鬨の声をあげたその年、1970年にNigoは生まれた。〈ケンゾー〉が「LVMHグループ」に入った1993年は、Nigoがキャリアをスタートさせた年だった。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa