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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.48 “シュプ注目でまさかの復活!?”。アメリカなのに中国長城これいかに。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

なんだかんだ6シーズン目に突入した本連載。というワケで、ショップが入れ替わってリスタート。2巡目のラストを飾る第48回目は、代々木上原にある「ドゥージョー(dojoe)」の中野博之さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


中野博之/dojoe オーナー
Vol.48_ザ・グレートチャイナウォールのカーゴパンツ

―今回、ご紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

40代以上には馴染みのある〈ザ・グレートチャイナウォール(中国長城)〉を取り挙げたいと思います。アメリカはL.Aで1999年に設立。ここのデザイナーは元々、〈ハーレーダビッドソン(HARLEY-DAVIDSON)〉出身で、そこからオーダーメイドでステージ衣装の制作を請け負うようになり、さらに一点物のリメイクアイテムを作るようになったとのこと。流行ったのは2001〜2002年位かな。当時のぼくはヴィンテージ絶対主義者だったんですが、初見で「メチャクチャ格好いい!」と感じたのを覚えています。

―何とも懐かしいですね。たしかボディはヴィンテージとかって話でしたよね。

謳い文句はそうでしたが、その殆どがヴィンテージといっても比較的手に入れやすいミリタリーアイテムでしたね。そこに“リメイクという足し算をすることでどう格好良く変えるか”という大喜利感が面白くて好きなブランドでした。ただ正直、やりすぎているモノも多々ありまして(苦笑)。初期は割とシンプルで格好いいモノを作っていたんですが、段々とスカルをペイントしたり、スタッズを打ったりと「そっちかぁ〜!」って方向に走っていっちゃって…。今回はそんな中から、いまの時代でも通用しそうなモノを、改めてピックアップしてみました。

―当時の定価って結構したんですか?

値札付きのデッドストックがあるので、見ていただくと分かるように定価は288ドル。当時の日本円だと約3万〜4万円ってとこですかね。これでレザーを使ったジャケットなんかになると10万円位していました。

―似たようなミリタリー+αのブランドでいうと〈マハリシ(Maharish)〉も人気でしたね。ただ、そちらに比べるとやはりバタ臭さを感じますし、なんというかアメリカ古着っぽいなと。

ですよね。当時は、漢字の名前を付けたブランドなんて全然なくて、むしろご法度な雰囲気もあった位。そんな中、“中国長城なのにメチャクチャアメリカ”というギャップに喰らっちゃいました。ちなみに当時の国内代理店で勤めていた人に聞くと、仕入れの仕方も古着の買い付けと一緒だったそうです。デザイナーのアトリエに行くと、リメイクした作品が山のように積み上げられていて、そこから日本人サイズを選んで持ってくるっていう。そんなアイテムが、伊勢丹のような百貨店に並んでいたという事実もまた、非常に面白いなと。

―へ〜。ところで、今回用意していただいたのはボトムスですね。

スウェットやTシャツ、USアーミーのユーティリティシャツが多かったように記憶していますが、やはり当時を知る人間に一番馴染みがあるのが、カーゴパンツでしょうね。サイズは当時の感覚なので、30〜32インチが主。ただ、リメイクゆえ基本的にワン&オンリーなので、雑誌で掲載されているアイテムが欲しくてお店に行っても、まず同じモノは手に入らない(笑)。それが良い意味での付加価値になったという側面もあります。

(左から)ザ・グレートチャイナウォールのカーゴパンツ すべて参考商品(すべてドゥージョー)

―どういった特徴があるんでしょうか?

ボディは1980年代〜1990年代のモノを使用し、そこに様々なリメイクが施されています。このカモフラ柄の後染め&刺繍はまだスタンダードで、こっちはメッシュ生地や裾にプリントを入れていますし、これなんて鳳凰をパッチで見事に表現しちゃっていますからね(笑)。正直、これでもちょっとトゥーマッチだと思っているので、もう少し数が集まったら合わせやすいように黒染めするのもアリかなと考えています。

―どれもアク強め! 若い世代は当時どんなふうに合わせていたのか気になるでしょうね。

当時は白Tシャツが流行っていた時期ということもあって、他アイテムはシンプルに合わせるのが基本だったと思います。ご覧のようにコッテリでカロリー高めなので、オカズがこれなら、あとは主食の白米だけで十分みたいな(笑)。ぼく自身、こことの出会いをきっかけに、アメリカを象徴するヴィンテージ・マテリアルを、背景やテイストの異なる素材を組み合わせるブランド〈ジュディーオーガーデザイン(J.AUGUR DESIGN)〉なんかにも興味を持つようになっていきました。今改めて振り返ると、そういったアメリカ西海岸発のクラフトムーブメントの先駆者だったとも言えるのではないかなと。

―2022秋冬シーズンに〈シュプリーム(Supreme)〉とのコラボも発表されましたし、本国アメリカでも需要が高まっていそうです。

ところが、ブランドのホームグラウンドであるL.Aを中心としたアメリカ西海岸でさえ、最近はめっきり出てこなくって…。コレクターに譲ってもらうという手もありますが、そもそもそんな人がいるなんて話、これまで聞いたこともないっていう(苦笑)。とはいえ無数にあるラインナップの中には、ヴィンテージのデニムジャケットを使ったモノなど、スペシャルな逸品もまだまだ存在しているようなので、今回の〈シュプリーム〉とのコラボを機に、また注目が集まるとは思います。ぼく自身も「その辺りのアイテムに幸運にも出会えたらイイな」という気持ちで、気長に探していこうと思っています(笑)。

中野博之 / dojoe オーナー
高円寺の古着屋「ナウオアネバー(NOW OR NEVER)」でキャリアをスタート。その後アメリカへ古着留学、帰国後に「オキドキ(OKIDOKI)」で働きながら、「アノラック(AnoLuck)」のizmt氏にシルクスクリーンプリントを学び、手刷りのTシャツブランドを始める。2015年に代々木上原に古着屋「ドゥージョー(dojoe)」をオープン。アメリカで買い付けられてきたインポート&ユーズドアイテムのセンスの良さと先見性から、業界内にもファン多数。
公式サイト:dojoe-tokyo.com
インスタグラム:@dojoe_tokyo

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