色の魔術師といわれる〈ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)〉らしさを知ろうと思えばニットは格好のアイテムだ。
オフホワイトのハイゲージニットがまとったのは淡いブルーに染め抜かれた芍薬の花。まるで白浜に散ったかのような立体感はプリント加工の賜物だ。
もう一枚はハイビスカスがモチーフ。黒と白の毛糸で表現した大振りのハイビスカスはオーバーサイズの丸みのあるシルエットと相まって、コンテンポラリーアートを思わせる。
いずれもニットならではのぼやけた描線がモチーフの主張を控えめなものにすることに成功している。シンプルな冬の装いにおいて、程よいアクセントになってくれることは間違いない。
“ぼやけた描線” というフレーズは、失われた日常へのオマージュを捧げる今シーズンのキーワードのひとつだ。確かにぼくらが恋焦がれる日常はいまなお靄がかかっている。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa