正月の箱根駅伝に2年振りとなる出場を決め、シード権の獲得を目指す城西大学男子駅伝部。そんな彼らに、大手セレクトショップでランニングアパレルをプロデュースする牧野英明さんが、駅伝やランニングにまつわる話を伺うスペシャルトークの第二弾です。
櫛部静二監督に続く今回は、チームをまとめる藤井正斗選手に、キャプテンとして過ごしたこの1年を振り返ってもらいます。さらに、シューズにウェア、ソックスまで、ランニングギアに対するこだわりをお伺いしました。
PROFILE
2000年生まれ。名経大高蔵高校出身。城西大学男子駅伝部主将。主な実績として、第97回箱根駅伝7区13位、第52回全日本大学駅伝5区16位。自己ベストタイムは、5000m 14’19″72、 10000m 29’01″93、ハーフマラソン 1:03’02。
PROFILE
1980年生まれ。栃木県出身。大手セレクトショップ勤務。ファッションのスキルと現役サブスリーランナーとしての経験を活かして、ファッションランニングアドバイザーとしても活躍中。普段着のテーマは、常に10km走れるコーディネート。箱根駅伝は学生時代から欠かさず追っていると意気込む。
箱根ランナーが考える、ギア選びのポイント。
牧野:こんにちは。正月の箱根駅伝が迫ってきていますが、改めて予選会の3位通過おめでとうございます!
藤井:ありがとうございます。箱根駅伝でシード権を獲得できるよう、チーム一丸になって頑張っています。
牧野:ぼくは箱根駅伝が大好きですし、市民ランナーとしても藤井キャプテンにはいろいろとお聞きしたいことがあるので楽しみにしてきました。
藤井:こちらこそ楽しみです! 今日はよろしくお願いします。
牧野:ところで、普段からファッションを仕事にしていることもあって、ランナーの皆さんの走りはもちろんですが、身につけているアイテムも気になっています。デザインやカラーリングなど、ウェアの好みはありますか?
藤井:そうですね。ランニングウェアは派手な蛍光カラーを選ぶことが多いです。ぼくらは、1年中ほぼランニングウェアで過ごしているので、たまにしか着ることがない私服とのメリハリをつけたいんです。普段着では、モノトーンでシンプルな格好で過ごすことが多いです。
牧野:走っているときとそれ以外を切り替えているんですね。
藤井:はい。走らないときは、陸上以外のことを考えていたいので。
牧野:ぼくの場合は逆で、いつでも走れる服を選んでいます。街着としても違和感がなく、それでいて快適に走れるスタイル。
藤井:普段着とランニングウェアが一緒なんですね。それはなんでですか?
牧野:ファッションの感覚とランニングの機能性をクロスオーバーをさせるのが楽しんですよ。今日のこの服装なら、街で歩いてもおかしくないですし、いつでも気軽に走り出すことができます。
藤井:ぼくの場合、ランニングウェアは素材にもこだわるようにしていて。薄手で速乾性の高い素材が好きなので、シャカシャカした肌触りのウェアを選ぶことが多いです。特に防風保温性に優れたウィンドブレーカーは、メッシュ素材が入っていないほうが厚手にならず動きやすくて好きですね。
牧野:なるほど。シューズやソックスへのこだわりもありますか?
藤井:はい。例えばソックスは5本指タイプばかり履いています。
牧野:選手で5本指ソックスを履くのは珍しいんじゃないですか?
藤井:そうかもしれません。昔、通常のタイプを履いて走っていたら、足裏の皮がめくれてしまって。それ以来、指でグリップする感覚を得られる5本指派になっています。
牧野:ぼくは最近、ロング丈のソックスが気分。一見カジュアルだけど、実はランニング用につくられていて機能的だった、みたいなアイテムを見つけるのが好きなんです。
藤井:ぼくも長めの距離をスローペースで走る時はロング丈のソックスを履きますが、基本的にはくるぶし丈が好みです。ロング丈だと、素材が汗を吸ってグラム単位で重くなっちゃうんですよ。
牧野:おぉ、さすがだなぁ。ぼくら市民ランナーでは気にならないところも、選手レベルだと追求するんですね。シューズはどうですか。
藤井:同じ厚底モデルでも、メーカーによって反発性やクッショニングが違いますよね。なので、トレーニングメニューによって履き分けています。
牧野:シーンによる履き分けですか。
藤井:ジョグでも1キロ5分以上かけてゆっくり走る時は重めで反発を得にくいモデルを、1キロ4分台でジョグする時は多少反発を感じられる軽めのモデルを選びます。
牧野:同じジョグでも使い分けてるんですね。
藤井:はい。さらに1キロ3分30〜40秒の速めのペースで走る時は、硬めのソールで反発を得やすい軽量モデルを履いています。それとは別にレース用のシューズもあります。
牧野:さすがのこだわりですね。シューズを履き分けるメリットはどんな点にあると思いますか?
藤井:ぼくは大学4年間でほとんど怪我をすることはありませんでしたが、シーンに合わせて最適なシューズを選ぶことは、故障予防の点からも大切かもしれません。
牧野:シューズ全体へのこだわりはありますか?
藤井:そうですね。履いたときのフィット感を重視しています。特に厚底モデルはクッション性だけじゃなく、足裏のアーチが崩れないかどうかもチェックしています。それと、地面への接地のタイミングが合ったときに気持ち良く反発が得られるモデルもあるので、自分の走りに合ったシューズを選ぶことも大きなポイントだと思います。
牧野:ぼくも数えきれないほどたくさんのシューズを持っていますが、シューズ選びは本当に奥が深いですよね。
本当の意味で強いチームになるために。
牧野:さて、いよいよ箱根駅伝まで1ヶ月を切りました。主将として、この1年どんなチームづくりを目指してきましたか。
藤井:昨年は箱根駅伝に出場できなかったので、2年連続本戦を逃すわけにはいきませんでした。キャプテンとしてのプレッシャーを感じていた分、今年のチームで結果を出したいという思いもあります。ただ、それと同時に、数年かけて本当に強いチームになってほしいとも思っています。いつか「あの年から城西は強くなったよね」と言われたい。そのための基盤をつくれればと思います。
牧野:なるほど。今年だけじゃなく、来年以降の成長も見据えていると。
藤井:あとは結果を出したり、満足のいく成績を収めることも大事ですが、それ以上に悔しい思いを経験することも大切だと思っています。今年6月の全日本大学駅伝の予選会では、通過の7位まで40秒足りず悔しい思いをしましたが、それがあったから箱根予選会は3位通過できたんだと思います。
牧野:キャプテンとして、具体的にどんなところを変えていきましたか?
藤井:そうですね。チームの雰囲気を良くするために、まずは自分自身がどんなときでも笑顔でいるように心がけてきました。個人的に記録が出せず落ち込むことも多かったけど、みんなの前では笑顔でいるようにしてきました。
牧野:素晴らしい心がけですね。キャプテンが笑顔だとチームの雰囲気も明るくなりそうです。その一方で課題を挙げるとしたら?
藤井:雰囲気の良さはキープしつつ、チーム内の競争を高めていきたいです。走力別にAチームとBチームがあるんですけど、Bチームが活性化してチーム内の競争が激しくなれば、もっと強いチームになれるはずです。
牧野:藤井さんがキャプテンになって、新たに設定したルールもありますか?
藤井:以前、チーム内の掃除係は1・2年生の役割でしたが、今年から3・4年生もやることにして先輩と後輩の風通しを良くしています。それに加えて、定期的にチーム状況を把握するため、匿名のアンケートを取っています。
牧野:匿名アンケート!?
藤井:部員一人ひとりの素の意見を知るために始めました。匿名なので、チーム内の課題や状況を把握しやすいんです。
牧野:よく考えていますね。さすがキャプテン! そんな今年のチームで挑む箱根駅伝ですが、改めて目標を教えてください。
藤井:シード権を獲得することです。個人的には1区や3区を走りたいですが、ぼくが復路に回れれば、それがチームとして良い状態なのかなと考えています。全日本大学駅伝の予選会でも箱根の予選会でも不甲斐ない走りをしてしまったので、どの区間を走るにしても、キャンプテンとしてシード権の獲得を目指します。
牧野:藤井キャプテンがどの区間を走るのか注目しながら、正月の本戦を応援しますね。今日はありがとうございました!
Photo_kentaro Hisadomi
Text_Kenji Hashimoto