今年6月に発表された、〈ロエベ(LOEWE)〉の2023年春夏コレクションは草に覆われた。それは比喩ではない。本当に本物の草が靴や服に植わっていたのだ。聞くところによると、ショーのおよそ3週間前から手塩にかけて育てた草という。“テクノロジーと自然の融合” を掲げる今シーズンに相応しい(というよりも脱帽ものの)チャレンジだった。
そのランウェイで草にも増して印象に残ったアイテムがキャップだった。黒に注目して前回紹介したスモールレザーグッズのひとつ「トライフォールドウォレット」同様、“ロエベパッチ” がバイプレイヤーを務めている。くっきりとした凹凸はデボス加工の賜物。トーンオントーンであしらったパッチはさり気なくも効果的なアクセントになっている。
スモールレザーグッズとのリンクを考えるなら黒で決まりだが、織り目が浮かび上がるブルーやグリーンのキャップも捨てがたい。その色合いはしっとりとしていて、どんな服にも溶け込んでくれそうな懐の深さを感じる。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa