永世定番がずらりと揃う〈パラブーツ(PARABOOT)〉にあって、新たな定番と目されているのがここで紹介する「ティエール」だ。
丸みを帯びたボディも甲のエッジを攻めたモカ縫いも朴訥としていて、蚤の市に転がっていそうな雰囲気がある。いや、本当に転がっていてもおかしくない。「ティエール」は日本での露出が少なかっただけで、誕生は1960年代とすでに半世紀の歴史がある。フランス本国では長らく愛されてきたモデルなのだ。
厚みのあるロケイドソール、クッションをたっぷり詰め込んだシュータン&トップライン――足を入れた瞬間の感覚はコンフォートシューズのそれに近い。ガンガン歩きたいある日の一足に格好だろう。
この春、「ティエール」はオリーブ、グレイで染めたスエードをまとった。「ティエール」お馴染みの艶やかなスムースレザーが醸し出す野暮ったさももちろんいいが、洗練の目盛りをひとつ、ふたつ上げるこのさじ加減にはやられてしまった。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa