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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.60 “古着好きほどノーマーク”なのでは!? まだまだ間に合うマウンテンハードウェア。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

本連載も8シーズン目に突入! というワケで、ショップが全て入れ替わってリスタート。第40回目は「カラーアットアゲインスト(Color at Against)」の高橋優太さんが、シーズン2以来2度目の登板!

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


高橋優太 / Color at Against 店主
Vol.60_マウンテンハードウェアのシェルジャケット

―シーズン2以来となる2度目の登板! 今回はどういったニュー・ヴィンテージなアイテムを紹介いただけますか?

今回またこの連載のお話をいただき、改めてニュー・ヴィンテージの定義について考えたんです。その際に、〈エル・エル・ビーン(L.L.Bean)〉や〈エディー・バウアー(Eddie Bauer)〉と同様に、そろそろ仲間入りさせてもイイんじゃないかな? って思ったのが〈マウンテンハードウェア(MOUNTAIN HARDWEAR)〉。今回はゴアテックスを採用した1990年代のシェルジャケットと2010年代初期に登場した“ドライQ”と呼ばれる〈マウンテンハードウェア〉独自の防水透湿素材を使ったジャケットを紹介したいなと。まずは、こちらの1990年代のモデルから。

マウンテンハードウェアのシェルジャケット 2万2000円(カラーアットアゲインスト)

―そもそも〈マウンテンハードウェア〉ってどんなブランドでしたっけ?

1993年に〈シエラデザイン(SIERRA DESIGNS)〉で働いていた人たちが独立して設立したアウトドアブランドです。ここのアイテムはファッションではない本気の山仕様なのがイイんですよね。それがいまとなっては、逆にファッション的な目線で素敵に感じられると言いますか。そんなワケで、設立当初から革新的技術を採用したアイテムを次々と発表している同社では、ゴアテックスもブランド設立直後からずっとウェアに採用されていたんですが、2002年~2003年からの約10年間は使用されない時期が続きます。なので、この90年代製のゴアテックスウェアは結構レア。ゴアテックスのタグも当時の雰囲気があって格好良くないすか?

―たしかに雰囲気ありますね。

カテゴリー的にはハイスペックの上位ラインに属するんだと思います。腰部分のスノーガード、脇下にはベンチレーションもあって三層構造のゴアテックス搭載で裏地はメッシュ。90年代初期らしさ全開のハイグレード感があるし、シルエットも結構ドカッと着られて本当にイイ感じっスね。技術の発展と共に動作や耐久性などを第一に考えて作られていくので、この進化途中の雰囲気がたまりません。チラっと見えていますが、フロントポケット内には、カギなどの貴重品を付けるためのループがあったりして、当時どういう用途を想定していたのかを想像するのも楽しいかと。

―他ブランドと同じようにモデル名もあるんですよね?

もちろんモデル名はちゃんと存在するはずですが、ぼくはあえて全く調べません。例えば〈パタゴニア(Patagonia)〉の「ダスパーカ」が良いと言っちゃうと、みんなピンポイントでそれだけを探すようになっちゃう。それを「ナイロン素材でポリエステルのインサレーションが入ったジャケットとか暖かくてイイよね」に留めておくことで、みんな「コレかな?」って探すじゃないですか。その方がたまたま辿り着いた時の喜びも大きいし、常にフラットな目線で自分だけの1着を探して欲しいんです。それこそが古着を掘ることのおもしろさなので。なんて言っても、最終的にはモデル名を知ることになるんですけどね(笑)。

―で、続いてこちらが2000年代初期のモデルということですね。

マウンテンハードウェアのシェルジャケット 2万2000円(カラーアットアゲインスト)

はい。先述のようにゴアテックスではなくドライQを採用したハードシェルジャケットで、ご覧のように一気に山っぽさが増します。ただ表面が撥水はしますが透湿性に関しては……まだこの機能が出来たばかりのモデルなのか、裏面も撥水しちゃう(笑)。とはいえ風も通さず体温を逃さないので、すごく高性能だとは思います。また、有名な登山家と共同開発したデザインということもあり、運動時に無駄なくフィットするパターニングとフォルム、さらに止水ジップを使っていたり現代的かつ機能的。重さも250g前後と軽量。どうやら、このモデルは1〜2年くらいしか作られていなかったモデルのようで、アウトドアギア好きの間では結構高騰しているとか。

―話を伺うに、昔からの古着ファンの中には〈マウンテンハードウェア〉を古着で掘る。という行為自体を新鮮に感じる人も多いんでしょうね。

ぼくらが若い頃は古着市場での流通数も少なく掘れませんでしたからね。でも、だからこそイイんです! アウトドアに対して本気で取り組む中で生まれたアイテムは、どれも機能的で“モノとしてのチカラ”があるので、今後も残っていくブランドだと思うんです。まだ古着としての歴史が浅いからこそ、その進化の過程をブランド設立当初から遡って追っていくことがまだまだ可能。実際2つ目のジャケットはニュー・ヴィンテージと呼ぶにはまだまだ早いのですが、この連載がVol.500くらいまで続く頃には、確実にニュー・ヴィンテージと呼べる存在になっているんじゃないかなと。

高橋優太 / Color at Against 店主
秋田県出身。〈ステューシー(STUSSY)〉、某アメカジ系セレクトショップを経て独立。東京・代々木上原の駅近くの住宅街にて“遊び心を忘れない、童心を忘れたくない大人たち”をコンセプトに、アメカジをベースとし、古着や国内外を問わず面白さや楽しさを連想させるアイテムを提供するセレクトショップ、〈カラーアットアゲインスト(Color at Against)〉を営む。最近はキャンプや釣りなど、アウトドアにハマっている。
インスタグラム:@color_at_against

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