紳士服飾の世界にあって別格の存在といわれる〈ゼニア(ZEGNA)〉。1910年に北イタリアのトリヴェロで呱々の声をあげた、最高峰のテキスタイルメーカーだ。長じてプレタポルテに乗り出すが、スーツが板についていない若者にとってはまだまだ高嶺の花だった。
その存在が気になりだしたのはアレッサンドロ・サルトリがアーティスティック ディレクターに就任してからだ。〈ゼニア〉でキャリアを積んだサルトリは〈ベルルッティ〉のアーティスティック ディレクターとして花開き、そして再び古巣に舞い戻った。21年にはリブランディングを敢行し、ブランド名も〈Ermenegildo Zegna〉から〈ZEGNA〉へと改めた(新たなアメリカントラッド像を打ち立てた〈トム ブラウン〉を傘下に収めたニュースも新生〈ゼニア〉を語る上で欠かせないものだ)。
俄然物欲が刺激されたのがこのパンツだった。
タックを入れたオーバーフィットで、腿の部分にゆとりをもたせたテーパードシルエットは美麗のひと言。裾幅は19センチ。
素材はヘビーウェイトのピュアコットン。ガーメントダイを施したそれはしっかりとした肉感ながら、しなやかな穿き心地を備えている。
テーラーメイドに軸足を置きながらもいまこの時代に溶け込む親しみやすさを感じる。「(我々のコレクションに合わせる)足元はスニーカーだっていい」とかつて語ったサルトリの本領発揮である。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa