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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.61 “イメージはしむけん? いやY2K?” 。そろそろアリかもエドハーディー。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

本連載も8シーズン目に突入! 2巡目のトップバッターとなる第61回目は、渋谷にある「渋谷 T(SHIBUYA T)」のShunさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


Shun / 渋谷T ディレクター
Vol.61_エドハーディーのトラッカーキャップ

―さて、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?

今回は、40代以上の読者さんならばご存知であろう〈エドハーディー(Ed Hardy)〉です。ぼく自身は実際に通ってきてはいないので、どんなブランドなのか改めて調べてみました。そもそもブランド名は、著名なタトゥー・アーティストのドン・エド・ハーディーに由来します。スタートは2004年。〈ディーゼル(DIESEL)〉や〈ヴォンダッチ(Von Dutch)〉なんかを手掛けたデザイナーのクリスチャン・オードジェーが、ハーディーのタトゥーフラッシュのライセンスを取得して立ち上げたとのこと。

―エド・ハーディーといえば、“モダンタトゥーのゴッドファーザー”とも呼ばれるカリスマ。アメリカントラディショナルと日本の伝統刺青をミックスしたスタイルが彼のシグネチャーですよね。ただ、アパレルとなると、彼自身の名声とは話が別というか……。

リアルタイムで見ていた先輩たちに聞いたところ、そうらしいですね(笑)。実際、ウチでも取り扱いは今回が最初で最後かもしれません……(笑)。なんて冗談さはさておき、これが流行っていた頃はまだ小学生だったので、“志村けんが被っているキャップ”というイメージしかなくって(笑)。ちなみに志村けんは、ぼくの実家の裏に彼の親戚が住んでいたこともあって、勝手に思い入れ深くもあります。

―不要な情報ありがとうございます(笑)。たしかに志村けんを筆頭に、大御所芸能人の私服っていうイメージはあります。

ブランドコンセプトも“自由なアートをライフスタイルに表現する”といったもので、そう考えると国民的コメディアンが、数あるブランドの中から選んでいたというのも納得かなと。海外ではブリトニー・スピアーズ、ブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオなどのセレブも愛用していたそうで、LAセレブファッション・ブームの先駆者とされています。

―“LAセレブファッション”! なんとも懐かしいワードですね。以前、この連載で「ドゥージョー(dojoe)」の中野さんが紹介されていた〈ザ・グレートチャイナウォール(中国長城)〉や〈トゥルーレリジョン(True Religion)〉のようなプレミアムジーンズなんかと横並びで、当時は雑誌に掲載されていました。

となると“成功者の証”みたいな存在だったんでしょうね。知らないけど。ということで、その〈エドハーディー〉ですが、主なアイテム展開としてはキャップやTシャツ、デニムがあったようです。そこで今回は、その中でも今のスタイルに取り入れやすそうなトラッカーキャップをピックアップしたいなと。

エドハーディーのトラッカーキャップ 各¥4,000(すべて渋谷T

―どれも派手な上に無駄に凝っていますね。これぞ“あの頃”のLAセレブって感じで。

インスタで海外のファッションアカウントを見ていると、白人のキッズが被りこなしている画像をよく見かけますね。基本的にどのアイテムもロックテイストで、グラフィックも定番のスカルに始まり、イーグル(鷲)にブルドッグなどなど、不良ではあるけれどどこか脳天気な感じがすごくLAっぽい(笑)。トラッカーキャップ自体は、若い世代の間で人気復権の兆しがあるので、ワンチャンあるんじゃないかなと。時代的にはY2Kドンズバですが、そちらの文脈で取り入れているのはあまり見かけないという意味では新鮮に映るでしょうし。

―なるほど。ニュー・ヴィンテージとしての魅力はどこにあると思いますか?

これまでに本連載でもクオリティ面で“モノとしての実力がある”というのはひとつの基準として挙げられていましたが、それでいうと「何色、使ってんの!?」っていうくらいカラフルで精緻な刺繍や、ラインストーンやハトメなどの付属パーツの豪華さ。頭頂部にはコンチョサイズのトップボタンがあって、見ようによっては〈クロムハーツ(Chrome Hearts)〉に見えなくも…いや、ちょっと言い過ぎました(笑)。ちなみにフロントパネル部分の内側には、型崩れを防ぐためといわれるメッシュパネルが備えられています。

―昭和の子供たちが下ろしてバイザーにして、ヒーローごっこを楽しむのに使ったというアレですね。そんなところもトラディショナルたるゆえんでしょうか。

ですかね(笑)。デザインはアメリカントラディショナルだけど、伝統をブチ壊す感じもニュー・ヴィンテージの精神にハマるというか。ウチの若いスタッフ(22歳)は、〈ショーン・ジョン(SEAN JOHN)〉のワイドデニムに、〈バレンシアガ(BALENCIAGA)〉のシューズを合わせたりしていました。そういった自由な視点で合わせられるのは、〈エドハーディー〉のキャップを着用する志村けんを知らない世代だからでしょうね。また、あえて“しむけんスタイル”のセオリー通りに取り入れるとしたら、ガッチリ色落ちしたヴィンテージデニムにピタピタの白Tとか。ボトムスはカーゴパンツでベッカムっぽく仕上げるというのも乙なんじゃないかなと。“じゃない方のY2K”ということで普通のアメカジショップではまず取り上げませんが、だからこそウチがやる意味があると思っています。

―ちなみにShunさんなら〈エドハーディー〉のトラッカーキャップを、この令和の時代にどういった感じでスタイル提案しますか?

それこそブーツカットやベルボトムなどのフレアジーンズと合わせてコテコテの70’sスタイルに持ってくるのはどうでしょうか? もしくはY2Kなノリで短丈のアウターに〈トゥルーレリジョン〉のデニムで、サラッと被るとか。意外性を狙ってテーラードジャケットにタイドアップしてハズす感じもアリですよね。ただ、確実に被る人を選ぶアイテムではあるので、その点を理解しつついかに楽しめるか。オリジナリティを確立するための一助にはなってくれると思うので、恐れずにぜひ一度チャレンジしてみてください!

Shun / 渋谷T ディレクター
21歳で株式会社mellowに入社し、同社が運営する古着屋「渋谷T」で働き始めるように。今年でキャリア9年目。現在は店舗のディレクターとして運営に関わる一方で、バイヤーとして商品の買い付けも行っている。同店で前任のディレクターを務めた「伊藤商店」のITOさんの後継者として、日々奮闘中とのこと。
公式HP:shibuya-t.shop-pro.jp
インスタグラム:@shibuya_t_shop

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