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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.67 地元のアウトサイダーな先輩も愛用 。“中途半端さがY2K”なアディダス。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わって9シーズン目がリスタート。第67回目は「アーリートゥエンティ(Early20)」の重光孝詩さん。打順は長打も期待される3番目。どんなニュー・ヴィンテージが飛び出すのか、乞うご期待!

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


重光孝詩 / Early20 オーナー
Vol.67_アディダスの半袖ハーフジップジャケット

―重光さんの考えるニュー・ヴィンテージとは?

う〜ん…頭の中を言語化するのが苦手なぼくにとっては、なかなか難しい質問ですね。

―それぞれのお店ごとのニュー・ヴィンテージがあって然るべきと考えているので、重光さんの考える“10年〜20年後に新たなヴィンテージとして残り続けるであろうグッドレギュラーとは何か?”を教えてください。

それで言えば、ウチの店で取り扱っている商品すべてに当てはまるかと。いまって、90年代ブームの流れから00年代の古着に注目が集まっていますよね。ぼく自身もその時代のアイテムがすごく好きなので、「なぜイイと感じるか?」の理由を考えたんです。そこでふと思い当たったのが“自分の中で、絶頂に面白い人生を歩んでいる”と思えていた時期だからじゃないかなって。その当時の空気感をそのままパックされているから心の琴線に触れるっていう。

―当時だと、重光さんは何歳ですか?

いくつだろう? まだ小学校に通っていたし、小5〜小6くらいじゃないですか。当時は、朝早くから立ち入り禁止の野池に忍び込んでブラックバスを釣ったりしていました。で、それが学校側にバレて、校長室に呼び出されて怒られるまでがワンセットみたいな(笑)。ちょうどその頃から自分で選んで服を買い始めたので、印象深いというのもあるかと。

―要は、ご自身のファッション原体験に繋がっているからということですね。

あくまでも“ぼくの場合は”ですけどね。地元が山梨県の田舎でずっとサッカーひと筋だったこともあって、ファッションの情報に関しても、東京など都会に住んでいる人に比べると遅かったですし。

―「アーリートゥエンティ」のセレクトにも、その辺りの感覚が反映されていると。

そうですね。自分自身が通って、良いと感じてきたモノを集めた店なので、まさにぼく自身のクローゼットそのままさらけ出している感覚で、たまたまそれが昨今のY2Kブームにハマったようで。

―Y2Kスタイルって、フューチャリスティックな素材感や多ポケットやジップ、ラバーパーツやループなど見どころも多くて面白いですもんね。では、それらの中でもニュー・ヴィンテージたり得るモノの条件ってありますか?

素材の質感や表情も重要です。Y2K的な記号を押さえているからと値段を付けるお店も多いのですが、しっかりしたクオリティが担保されてないと残っていくモノにはならないと思います。00年代までの服ってちゃんとコストをかけられたこともあってつくりの良いモノが多いので、そういった部分はチェックすべきかと。それと買い付けの際に気を付けているのがシルエット。当時はバギーシルエットがデフォルトでしたが、いま着ることを考えるならデカイだけじゃダメ。肩の落ち方や袖丈、身幅のバランスを意識することで、ポーズじゃない“リアルさ”が伝わると考えています。

―なるほど。で、今回紹介してもらうアイテムは?

アディダスの半袖ハーフジップジャケット 1万2980円(アーリートゥエンティ)

時代的にもジャストなところだし、個人的にも大好きなハーフジップのナイロンジャケットを用意しました。こういった切り替えのアイテムを「ガキっぽく見える」と敬遠する人もいますが、ぼくは永遠に好き。基本ジャンルはスポーツですが、ちょっとサイバー感もあることから最近はテック系にカテゴライズされることも多いですよね。ウチではずっと昔からやっています。

―ブランドは〈アディダス(adidas)〉ですか。

00年代ですかね。ボディには〈アディダス〉独自のテクノロジーとして一世風靡し、現在も継承されているクライマの一種で、撥水性のある高密度ポリエステルシェル“クライストーム”が採用されています。これは吸汗速乾性と防風性、さらに優れた透湿性も兼ね備えることで快適な衣服内気候を実現するそう。シャカシャカしていなくてソフトな肌触りで調子イイですよ。

―ディテールも欲しい要素をすべて押さえていて。

そうそう。スタンドカラーのハーフジップで、モノトーンカラーの身頃は脇下とサイドに切り替え。さりげないジップポケットに、絞ることでシルエットに変化を付ける裾のドローコード。さらに背面にはラバーパッチ。ギミックが多くて、どこを切り取っても楽しいですよね。サイズ表記はLですが、身幅はXL相当。ボックスシルエットで着ると可愛い。

―先ほど話にも出たように、スポーツアイテムだけど街で着れますね。

当時、こういう服って地元のアウトサイダーな先輩や大人が着ているイメージが強かったですよね(笑)。で、そのストリートな着こなしのニュアンスが、ぼくらの目にはすごくクールに映っていて。着こなしとしては、バギーなボトムスに合わせるのが定番。ウチのお客さんだとタイトなボトムスやスラックスで、シルエットやテイストの対比を際立たせるスタイルも人気ですし、いまの時期だと膝に掛かる丈感のショーツもアリです。

重光孝詩 / Early20 オーナー
「キューバ(CUBA)」「オツ(OTSU)」「フィフティ-フィフティ(FIFTY-FIFTY)」「コウ(COU)」など複数の古着屋を運営する〈CV〉に入社し、キャリアをスタート。その後、25歳の時に”好きな音楽をかけれて好きなものが目に入る職場で働きたい”との想いから、原宿にて自身が手掛ける古着屋「ビジネスアズユージュアル(BUSINESS AS USUAL)」をスタート。以降、下北沢に「ドンタク(zondag)」を開店。さらに2019年、同地に新店「アーリートゥエンティ(Early20)」オープンし、いまへと至る。また同店は、2023年中に移転を予定している。
インスタグラム:@eeearly20
bau-tokyo-online.com

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