〈ジル サンダー(JIL SANDER)〉の削ぎ落とすデザインワークはコンストラクションにまで及んでいる。
「トリコンパートメントウォレット」はその名のとおり三つ折りのウォレットで、コンパクトなつくりながら独立したファスナー仕様のコインパース、8つのカードスロット…といった具合に収納力は申し分がない。閉じたときの端正な佇まいもそんな設計思想のなせる技だ。内側のパーツを極限まで取り払ったボディはどこまでもフラットである。この点では「ジップポケットウォレット」も引けをとらない。
もちろんデザインに関しては非の打ちどころがない。キメの細かなカーフレザーに、レザーの色を拾ったステッチング、そしてごく控えめなロゴ。その持ち味を生かそうと思えばブラックで染めた「トリコンパートメントウォレット」が定石だが、「ジップポケットウォレット」の新色、クレイも見逃せない。粘土の意となるその色は、ひとの手の温もりを感じさせて、ミニマルモダンな素焼きの陶芸とどこか重なり合う。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa