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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.73 “羊の国で110年の老舗”が作るクラシカルな、ほっこりウールウェア。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

今回から新たにショップがすべて入れ替わり、本連載も遂に10シーズン目に突入! 第73回目は「ドラセナ(Dracaena)」の滝 祐輔さん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるか期待大。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


滝 祐輔 / Dracaena PR
Vol.73_スワンドライのハーフジップウールシャツ

―まずお聞きします。あなたにとってニュー・ヴィンテージとは?

前提として、いまや手の届かない“トゥルー・ウィンテージへの憧れ”があります。なので単純な話、上質な素材や作りに加え、ブランドやアイテム自体になしかしらのバックボーンが感じられるかどうか。いわゆるトゥルー・ビンテージの定義と同じなんですが、「将来まで残っていくモノとは何か?」という基本に立ち返った時に、やはりその2点はハズせないのではないかと。その上で、まだ世の中に“良品とバレていない”アイテム。それがニュー・ヴィンテージと呼べると思っています。

―「ドラセナ」は古着ディーラーとして、さまざまな店舗に卸売りもされています。そういった視点から選ぶニュー・ヴィンテージっていうのは、また違うんじゃないかなと思ってご登場いただきました。

仰る通り、ウチの場合は卸売りもしているので、ジャンルに特化しているというよりも幅広いセレクトが求められます。その上でひとつ重要視しているのがコンディション。古着慣れしていないお客さんの来店も非常に多いこともあって、デニムをはじめとした経年変化を楽しみたいモノに関しては古着ならではのアジとして捉えられる感覚はもちろん持ちつつも、シャツやブレザーは状態の良いモノをピックするなど、アイテムに合わせた提案は意識しています。これは良品を長く楽しむという意味でも、ニュー・ヴィンテージの条件のひとつに挙げられるのではないかなと考えています。

ーなるほど。では、そんな滝さんに今回ご紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

〈スワンドライ(SWANNDRI)〉のハーフジップウールシャツをご用意しました。ニュージーランドで1913年に創業された老舗ブランドで、多種多様なウールウェアを展開しています。アメリカでいえば〈ウールリッチ(WOOLRICH)〉のノリですね。以前、2年間ほどカナダでの仕入れを担当していた際にたまに見かけて買い付けていたのが、ここの「ブッシュシャツ」というレースアップ&ロング丈のパーカでした。ただ当時はどうすれば格好よく着こなせるのかイメージが湧かず、ぼく自身はスルーしていて……。そんな〈スワンドライ〉に対するイメージを覆してくれたのが、このアイテムです。

スワンドライのハーフジップウールシャツ 参考商品(ドラセナ 吉祥寺本店)

―たしかにウール素材ならではのナチュラルで温かみのある質感と、クラシカルなデザインのバランス感が良いですね。

素材は100%ピュアヴァージンウールですからね。先ほども述べたように、レースアップのブッシュシャツというタイプしか見たことなく、しかもブロックチェック柄がデフォルト。こういったハーフジップで無地のタイプは完全に初見。しかもこのクラシカルなデザインですからね。攻略法を考えるのが楽しいアイテムです。ぼくは、スウェット感覚でデニムシャツを下に着て襟を出してっていう着こなしがいまっぽくて好きです。

―ちなみに古着市場での評価は?

調べると日本のセレクトショップも一時期は別注していたらしいんですが、こと古着市場に限っていえば、ネットでもほぼヒットせず、掲載商品数万点を誇るウチのECストアでも取り扱いは1着のみ。一部では正直、知名度はほぼないと言えそうです。現地では普通のファーマーのおじさんが着るようなブランドなので、みんな「着古して捨てる」みたいな感じでまだ価値が見出されていないのではないかなと。

―この大きさの胸ポケットって、何を入れるんでしょうね。

なんでしょうね? 最近のスマホは大きくて入らないと思うので、タバコ(ソフト)とジッポライターくらいでしょうね、入るとしても。そんな不器用な感じも無骨でイイですよね。またポケットのスレキにも注目。チェック柄のフランネル生地が使われているんですが、なぜか裏地使いです(笑)。もしかしたら、スレキが破れたかなんかで前オーナーが生地を付け替えたのかもしれません。

ー先ほどトップスの着こなしについてはお聞きしましたが、その場合のボトムスは?

パンツはもうオーセンティックにチノパンで合わせます。で、足元は〈コンバース〉の「オールスター」みたいな。あと普段から古着はリペアして着ることが多いので“修理しても着たいかどうか”というのも、ぼくの考えるニュー・ヴィンテージのひとつの基準といえます。こういったアイテムって、素材や縫製もしっかりしているだけでなく作りもシンプルなのでリペアがしやすいというのがポイント。ファッション業界全体でサステナブルの重要性が語られているいま、そういった部分を意識する良い機会にもなると思います。あと、2008年からニュージーランド生産が終了し、生産拠点をアジアに移したという話もあるので、もし見つけた際はメイド・イン・ニュージーランドかどうかのチェックもお忘れなく。

滝 祐輔 / Dracaena PR
33歳。大学卒業後、イギリス生まれの某ブランドに約5年間勤めたのち退社。その後、「ドラセナ(Dracaena)」に入社し、カナダで約2年間仕入れを担当。現在は、同社でPRなどの店舗運営とイベント企画などに携わりつつ、積極的に店頭にも立っている。
公式サイト:e-dracaena.com
インスタグラム:@dracaena_kichijoji

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