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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.74 正直あんまり…なんて声も聞くけれど でも、ラスラーは“逆にそこがイイ”。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

前回から新たにショップが全て入れ替わり、スタートした10シーズン目! 第74回目は千葉県浦安市に居を構える「メロウ(mellow)」の清水たかやすさん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


清水たかやす / mellow PR
Vol.74_ラスラーのブラックジーンズ

―まずお聞きします。あなたにとってニュー・ヴィンテージとは?

ひとつのキーポイントとしては、単純に“安く買える”こと。最近の古着は全体的に高騰していて、ひと昔前までは5千円くらいで買えていたはずのオールドの〈ギャップ(GAP)〉が1万円越えもザラなんですよね。ニュー・ヴィンテージの良さって、トゥルー・ヴィンテージと違って着て楽しむことができやすい。これに尽きると思うんです。それでいうと“まだあまり知られていない”っていうのも同様。

―モノとしての価値と乖離することなく、正当と判断できる値段をつけているかどうか。すべてにおいて物価が高騰している現在、難しくなっている部分もありますが、確かに重要ですね。

あとは、ぼくがいま21歳で、これまでこの連載に登場したお店の皆さんや読者の皆さんよりも随分年下ということで、同じ古着でも根底にある価値観の違いはあると思うんです。

―世代間での価値観の違いの部分を、もう少し詳しく教えてください。

ぼくはヒップホップ、特にリアルタイムでは通っていない90年代のラッパーが好きなんですが、そこにリアルタイム世代の捉え方とはまた違った格好良さを感じているんですよね。その感覚って、古着にも共通して感じることが多くて。「スウェットをいま選ぶなら、〈チャンピオン(Champion)〉よりも〈ラッセルアスレティック(RUSSELL ATHLETIC)〉の方がかっこいいよね」みたいな。特に「リバースウィーブ」なんて、90年代のモノも立派なヴィンテージとして付加価値がついていますが、ぼく自身はあまり魅力を感じません。逆にそういった感覚を持ち合わせていないがゆえにセレクトできることってあると思うんです。

―知っていることで、バイアスがかかってスルーしてしまうこともありますね。

もちろん、古着を扱う者として、いわゆるトゥルー・ヴィンテージの知識も持っているということが大前提にはありますけどね。スタンスの違いもあるので、ピラミッドの頂点のみを扱うショップがあってもイイと個人的には思いますが、その三角形の底の両端の部分にこそ、次に来る可能性のあるアイテム=ニュー・ヴィンテージが潜んでいると思うので、ウチでは常にそこに注目しています。

ーなるほど。スキー場のリフトの行列は真ん中に並ぶよりも左右端に並んだ方が早いっていうのと、通ずるものがありますね。ということで、今回紹介してもらうニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

今回は〈ラスラー(RUSTLER)〉のブラックジーンズを用意しました。ブランド名を聞き慣れない方もいるかもしれませんが、要は〈ラングラー(Wrangler)〉の兄弟ブランドというかセカンドラインですね。ブランド名が牧童=カウボーイを意味する兄に対して、こちらは牛泥棒という意味があるとか。兄弟で対立構造にしている点もシャレが効いているなと。ただ語弊があるのを承知の上で言うと、〈ラングラー〉自体が3大デニムブランドと称される〈リーバイス(Levi’s)〉や〈リー(Lee)〉に比べると、ちょっと格下に見られがちで、しかもそのセカンドラインは正直ちょっと…と見られているのは事実。ですが、最初に話した価値観の違いでいうと、“だからイイ”という逆転の発想もありまして。

ラスラーのブラックジーンズ ¥8,800(メロウ)

―逆張りの美学というか。このブランドはいまも継続していて、新品が買えたりするんですか?

本国の公式サイトを調べたところ、現在は巨大スーパーチェーンの「ウォルマート(Walmart Inc.)」と「ケイマート(Kmart)」のみで取り扱っているそうです。まぁ、調べてみたら普通の小売店にもありそうなので、あくまで公式サイトいわく、ですが。

―最近、ちょいちょい扱っている古着屋を見かけますが、どこもブラックジーンズが多いですよね。

いえ、ところがそんなこともなくって、普通にブルージーンズも展開されていますよ。といっても織り方の違いでやや光沢感があるブルーですが。シルエットは、今回用意したのがほぼ〈リーバイス〉の「505」。学生時代に陸上競技をやっていて、ケツがデカめのぼくにもジャストフィット。細めで穿きたい時に重宝するんです。

―いまの相場的に、〈リーバイス〉の「505」を買うのとどれくらいの差が?

「505」もアメリカ製の場合だと¥13,000位はしますが、それに比べてまだこちらは認知度が低いこともあって、平均¥8.000くらいなので、まぁ¥5,000くらいの差ですかね。ディテールは廉価ブランドらしく、補強用のリベットやポケットの飾りステッチもなく、フロントはトップボタン+ジップといった感じで、よく言えば“ミニマルでシンプル”(笑)。ネームタグは年代によって差異があるみたいなんですが、色々と見ていくと混在していたりもして、その辺は謎(笑)。

―その辺りの情報が体系化されていないんですね。

そうですね。年代ごとの細部の違いまでディグっている人は少ないと思います。“日本一のラスラーマニア”とか聞いたこともないですし(笑)。最近はぼくと同世代でも、まさにカウボーイのような70’sスタイルをする子がすごく多いので、ぜひそういう子たちに取り入れてもらいたいっていう気持ちもありますし、ショート丈のアウターをコットンニットに重ねるみたいな普通の着こなしにも似合うと思います。ぼくだったらデカめのスウェットに合わせる感じですかね。潔いほどにシンプルだから直球も逆張りも自由に楽しめる。その自由度の高さこそが、まだ何色にも染まっていない〈ラスラー〉の魅力なんじゃないでしょうか。

清水たかやす / mellow PR/ストアマネージャー/ディレクター
茨城県水戸市出身。高校時代に「渋谷T」のディレクターであった ITOさん(現「伊藤商店」ディレクー)に憧れ、ショップに通い詰める中で、90年代を中心としたレギュラー古着の面白さに目覚める。その後、同店を運営する「mellow」に入社。現在は同店のPRとストアマネージャー/ディレクターを務め、さらに今年10月からは「渋谷T」のプロモーターも兼任する。
公式サイト:feeling-mellow.com
インスタグラム:@mellow_used_clothing

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