近ごろはダウンジャケットもエレガントな方向にシフトしている。汎用性を高めようと思えばもっともな一歩だが、ダウンはモコモコしてこそダウンであると信じて疑わないダウン・ラバーには物足りない。
〈ジル サンダー+(JIL SANDER+)〉のダウンジャケットはそんなダウン・ラバーをも満足させた。
パンパンに膨らんだボディは羽毛が透けて見えそうなほど繊細なリップストップナイロンの賜物。服において “響く” という表現を使えば大抵の場合、好ましくないニュアンスを帯びるけれど、このジャケットは羽毛がまさしく響いていて、いい。日本の侘び寂びを愛し、不完全さに美を感じると語るクリエイティブ ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤーの面目躍如である。そのナイロンはリサイクル素材、というのも嬉しい。
もうひとつの見どころはダウンパックを使っていないところ。羽毛は〈ジル サンダー+〉独自の縫製方法を駆使して閉じ込めている。このコンストラクションにより羽毛をそのまままとっているような軽やかさを実現した。
羽毛にはグースとダックがあるが、充填したのはダウンボール(綿毛)が大きく、品質が高いとされるグース。ゆえに温かさも折り紙つきである。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa