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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.75 新品は手に入らず、珍品もお手頃。”いま買いたい制服はUSPSとUPSです。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わり、スタートした10シーズン目! 第75回目は、世田谷区・三宿から無骨なアメリカンスタイルを発信する「アス(US)」の中村雄貴さん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


中村雄貴 / US プレス
Vol.75_USPSのワークジャケット & UPSのワークジャケット

―まずお聞きします。あなたにとってニュー・ヴィンテージとは?

ひとつの前提条件としては“ブランドやアイテムが現在進行形で存在しているモノ”。これによって、時代ごとの素材やデザイン、ディテールの差異を調べて、掘るというトゥルー・ヴィンテージ同様の楽しみ方が可能となります。また、ウチで10年間以上も取り扱い続けているけど、大して値段の変化がなかったモノが、気が付いたら高騰していたなんてケースがあります。例えば USミリタリーのBDUシャツや「アメリカ国立農業学校(FFA)」のジャケットなんかが、まさにそれに当たります。

―かつてはどこに古着屋にも置いてあって、投げ売りされていたイメージがあります。

ですよね。その「かつてはどこに古着屋にも置いてあった」ということに関係して、浮かび上がってくるもうひとつの条件が、“かつて1度、流行ったモノ”であること。古着に限らず、流行のサイクルって約10年周期と言いますよね。かつて流行ったということは、モノとしての実力が備わっていて、かつ市場に出てこなくても十分な数が潜在しているということ。要はリバイバルする可能性を秘めているということです。これに該当するモノがニュー・ヴィンテージなのかなって個人的には思っています。

―「アス(US)」はワークやミリタリー、スケートにバイクなど、男っぽくオーセンティックなアメカジが下敷きにあることは読者の多くも知るところ。今回紹介いただくニュー・ヴィンテージもそういったアイテムですか?

はい。ワークウェアでありながら、バイクカルチャーにも繋がるところで、「ユナイテッド・ステイツ・ポスタル・メール・サービス(United States Postal Service)」と「ユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service, Inc.)」のジャケットを用意しました。

―ストリートブランドがロゴをサンプリングしていたりもするため、「なんとなく見覚えはあるけど正確には何だか分かっていない」なんて人も多いと思うので、改めてどういったモノなのか教えください。

まず、USPSはアメリカ合衆国郵便公社の英略称で、我が国でいうところの日本郵政公社。対するUPSはアメリカ生まれの国際的貨物運送会社です。日本だとヤマト運輸といったところでしょうか。これらはすべて、そこのスタッフが実際に着用していたユニフォームです。実は、本国の公式サイトでも販売されているんですが、スタッフであると証明できないと購入できないため、これまでにも入荷を試みましたが無理でした(涙)。そういう意味でも古着だからこその価値があるアイテムと言えます。

―たしかに。しかも USPSもUPSも、パッと見は同じようでも実はデザインが違うんですね。

そうなんです。なので、ここではちょっと珍しいタイプをご覧いただこうと思います。まずはこのUSPS(集合写真左下)。有名無名問わず、さまざまなブランドのボディが使われていますが、こちらは〈レッドキャップ(REDKAP)〉と並ぶメジャーブランドの1つとして知られる〈スピワック(SPIEWAK)〉製。軍モノや警察などと同じく公共関係のユニフォームなので、基本的なデザインはよく見るタイプ(集合写真左下)と一緒です。

USPSのワークジャケット ¥9,790(アス)

先ほど話した〈レッドキャップ〉の普通のワークウェアにない部分で言えば、リフレクターラインがあしらわれたフラップ付きのアウトポケットや、背面のリフレクターライン。この個体では紛失していますが、脱着自在なライナーも付属します。またシルエットは着丈短めのボックス型なのでサイズアップしても動きやすく、バイク乗りにも重宝します。ちなみにこれは1980年代のモデルで、胸のロゴマークが現行とは違ってクラシカルな印象を与えます。

―デザインの違いは季節によってとかですか?

それも一理あるとは思いますが、厳密にいうと所属部署や業務内容によって変わるんじゃないでしょうか。配達員か内勤かで求められる機能性は変わってくるでしょうし。そしてもうひとつはUPS(集合写真左上)。ここの配達トラックとか日本でもたまに見かけますが、ぼく自身も初めて見たのがこの中綿入りのプルオーバー型で、やや新しめの2000年代製。ボディは「ツインヒル(TWINHILL)」。タグに名前と所属を書き込む欄があるのもユニフォーム然としていて良いですね。

キャプション

UPSのワークジャケット ¥11,880(アス)

風の侵入を防ぐ袖と裾のリブと、リフレクターのラインが入ったラグラン袖が、やや丸めのシルエットを構築しています。とはいえプルオーバーということで脱ぎ着は面倒くさそうだし、どんなシーンでの着用を想定して作られたのかも謎(笑)。まぁ、そこを想像するのもまた楽しいっていう。ちなみに珍しいだけで特に価値があるわけではないので、通常よく見かけるデザイン(集合写真右上)と値段は一緒(笑)。USPSとUPSのどちらにも言えますが、ワークウェアなので耐久性が高く、防寒性もあるためバイカーにもおすすめ。アメリカの日常と街並みに溶け込むという意味でも、ウチらしくリアルストリートなニュー・ヴィンテージと言えるのではないかなと。

中村雄貴 / US プレス
1981年生まれ、青森県出身。アメカジを中心に、ストリートな匂いのするインポートウェアやユーズドウェアを取り扱い、その優れた選球眼で幅広い層から支持を集めるセレクトショップ「US」のプレスを担当。一見無口で強面、だが実は口下手なだけの優しい野球バカである。
公式サイト:http://shop.us2000.jp
インスタグラム:@us2000_tokyo

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