「北海道コンサドーレ札幌」の取締役を務めるデザイナーの相澤陽介さんと、〈ジャーナル スタンダード〉をはじめとするいくつものセレクトショップを運営する「ベイクルーズ」の副社長、古峯正佳さん。旧知の仲であり、ともに熱狂的なサッカーフリークの二人によって実現した異業種コラボが、雪まつりに沸く2月の札幌でお披露目! 二人の対談から浮かんでくる、彼らの采配とビジョンとは? サッカーの熱量は、スタジアムの中には留まりません…!
Photo_Shinji Serizawa
Text_Rui Konno
PROFILE
1974年生まれ。「ベイクルーズ」上席取締役副社長。ゲームシャツ探しは日課で、「トヨタカップ」のプラティニの幻のゴールは、スタジアムで生で観たという生粋のサッカー好き。
Instagram:@masayoshi_komine
PROFILE
1977年生まれ。2006年に自身のブランド〈ホワイトマウンテニアリング〉を設立。現在日本で唯一、Jリーグチームのクリエイティブディレクションを手掛ける服飾デザイナー。
Instagram:@yosukeaizawa
その地域に根ざしたことで
何かコトを起こさせたいなって(古峯)
―本題に入る前にどうしても触れざるを得なかったんですが、机に山積みされたこの大量のサッカーシャツは…?
相澤陽介(以下、相澤):…できるだけそこには触れちゃいけないなと思ってますよ、ぼくは。
古峯正佳(以下、古峯):あ、ぼくの私物です。「サッカーの話だし、いくつか持ってきて」って言われたから。
相澤:ぼくは「10枚くらい持ってきて話をしよう」って頼んだんだけど…。
持参した古峯さんの私物たち。古いものから、昨夏の選手団の来日時に同行した「パリ・サンジェルマン」の限定品など、希少なものまでさまざま。右上は紛れ込んだ相澤さん私物で、名前入りの「ユベントス」のもの。
―(笑)。古峯さんのサッカー愛だけは十分伝わってきます。何十枚あるんでしょうね、これ…。
古峯:まだありますよ。今日は半分ぐらいしか持ってきてないです。
相澤:ぼくもひとのことを言えないんですが、趣味がマニアックで過剰過ぎますよね(笑)。
古峯:(笑)
―まぁ、そんな距離感のお二人が企画したのが今回の協業ということで、改めてお話し、聞いていいですか?
相澤:はい。もともとぼくが2019年に「コンサドーレ」のクリエイティブディレクターになって、3年前には取締役になったんですけど、ディレクター就任の当初から古峰さんと飲みいくと大体サッカーの話になるんです。特にユニフォームの話。当然お互いファッションの世界にいるのでそこにまつわるサッカーアパレルの話で盛り上がるので、「いつかこんなこと、できたらいいよね」みたいな感じだったんです。
古峯:そうだね。でも、「じゃあ、本格的にやろうぜ!」とまではなかなか行かなくて。
相澤:クリエイティブディレクターになったばかりだった5年前はまだ、「コンサドーレ」のグッズの規模感だったりとか、札幌のサポーターのひとたちの心理とかをぼくがそこまで分かってなかったのもあって。
でも「ベイクルーズ」に代表される日本のセレクトショップって非常に独特で、日本のさまざまな都市に存在して、ローカルマーケティングも行っていて、さらに年齢層の幅も広い。これって世界的に見ても稀有な業態であり、やっぱりセレクトショップって文化のハブになっているなって思っていたんです。その中で札幌にもちゃんとお店があって、そこに根ざしているお店と組みたいなと思い、改めてぼくから一緒にやりませんか? と依頼しました。
古峯:うち(ベイクルーズ)の社内で、地方活性化プロジェクトっていうのがあるんですよ。ローカルをフックアップして、地方でキャリアを築いていける環境をつくろうっていう。
赤のグラフィックが利いた今回のコラボアイテム。スエットシャツ ¥12,100、スエットパンツ ¥11,000、ニットキャップ ¥5,500、レザーグローブ ¥11,000
「コンサドーレ」のエンブレムを配したスエットシャツ。各¥12,100
ニット(¥14,300)やブルゾン(¥17,600)も展開。
―その一環が札幌だったんですか?
古峯:ですね。〈ジャーナル スタンダード レリューム〉の札幌店にも、その地域に根ざしたことで何かコトを起こさせてあげたいなっていうのがもともとあって。ミーティングに行ったときに札幌店の店長から「『北海道コンサドーレ札幌』と何かできたりしないですか?」っていう提案があったんです。
相澤:ぼくの方でも〈ジャーナル スタンダード レリューム〉さんっていう札幌に長くあるショップの中に、「コンサドーレ」が入ってくれたらいいなと思って、古峯さんにも相談してね。
古峯:うん。…みたいなことで、そこから「やろうか!」とガッと話が進んで。
相澤:役員会でも「もともと『ベイクルーズ』さんは東京の『パリ・サンジェルマン』のショップをずっとやってて…」と話すと、みんな一発で理解ができるわけで。ファッションとサッカー両方ともに深く関わっているからこそ同じ感覚なんだという説明ができたのは大きな意味があります。
古峯:あ、それも話してくれたんだね。で、彼らが〈ジャーナル スタンダード〉と、〈ジャーナル スタンダード レリューム〉のMDなんですけど、それぞれサッカー経験者だったんで「ちょっと君たち、企画を考えてみてよ」って投げたのがスタートです。
サッカーと文化、ファッションが
日本はまだリンクしてない(相澤)
―それで形になっていったと。でも、仕上がりを拝見して、直球のユニフォームやゲームシャツがなかったのはちょっと意外でした。
相澤:これは「コンサドーレ」というよりも「Jリーグ」全体の話になってくると思うけど、デザインとかグッズの観点で言うとぼくはスポーツとか体育とか、週末のレジャーみたいなものから抜け出さない限り、「Jリーグ」はヨーロッパのサッカーには届かないと思っていて。サッカーと文化、ファッションっていうものが日本はやっぱりまだリンクしてない。
ぼくは「セリエA」や「プレミアリーグ」の試合をよく観に行きましたが、そこでの応援の仕方とか、実際にはよい行いでは無いんですが、ファッションの視点で見るとフーリガンの出で立ちなどグッとくるところがあるんです。それはスタジアムの中ではなく外で感じることが多い。ファッションの中にサッカーが入り込めばそれはもう生活の一部になっていき、文化に変わっていきます。
例えば、それが〈ストーンアイランド〉とか〈アンブロ〉の着方だったり、マンチェスターのひとたちが雨の日にスタジアムで〈バブアー〉のジャケットを着てずぶ濡れになってる光景だったりとか。それこそリアム・ギャラガーみたいな雰囲気で。音楽もファッションもサッカーもリンクしてるのがヨーロッパだって考えると、日本はまだ分離してるんですよね。
古峯:確かにね。
相澤:だから今回、週末だけ着るユニフォームに関わるもの、応援のグッズではなくて、日常で「なんかいいよね」となるものにしたかったんです。
―誰もが思うサッカーグッズっぽいアイテムをあえて外した意図についても聞いていいですか?
相澤:それは彼らから話してもらった方がいいね。
本企画の功労者でもあるお三方。左から〈ジャーナル スタンダード〉でMDを担当する長尾享さん、PRの渡邉茉耶さん、〈ジャーナル スタンダード レリューム〉でMDを手掛ける山口純平さん。コラボアイテムとともに。
長尾享(以下、長尾):山口と一緒に古峯に呼ばれてこのお話しを聞いたときに、「どういうものにしようか?」となって。さっき相澤さんが仰っていたように、せっかくコラボするのであれば日常着として、〈ジャーナル スタンダード〉や〈ジャーナル スタンダード レリューム〉の根底にあるアメカジと、「コンサドーレ」のブランディングの格好よさみたいなものを合わせて形にできたらいいよね、っていうところからはじまりました。
山口純平(以下、山口):そうだったね。
長尾:それでいろんな案をキャッチボールする中で、「さっぽろ雪まつり」というところに辿り着いて。そこからアメリカの冬季スポーツ大会、90年代の古着みたいに連想していって、そのイメージを掘り下げてデザインに起こしたら、他にはないアイテムができるんじゃないかと。
山口:それでヴィンテージ風のスエットだったり、90年代にありそうなスポーツジャケットだったりレザーグローブだったりとアメリカを感じるデザインに落としていって。
長尾:応援グッズのマフラーとか、イメージしやすいものはあえてつくらないようにしました。

スエットシャツ ¥12,100、スエットパンツ ¥11,000、レザーグローブ ¥11,000(Photo_Kai Naito)
ブルゾン ¥17,600
スエットシャツ ¥12,100、ヘアバンド ¥4,400
―なるほど。それが成立するのは実在のサッカーチームとの協業だからこそですよね。
相澤:そうだと思います。セレクトショップだけでやるとどうしても架空のものになっちゃいますからね。サッカークラブ風、カレッジ風、みたいに。実在する意味のあるロゴを一緒に使っていけるのはぼくとしてもすごく意義があることで。「コンサドーレ」のロゴだったりエンブレムが日常にずっとあるようにしたいんです。
究極はやっぱり「ニューヨーク・ヤンキース」の “NY” みたいな存在ですよね。多分、「ユベントス」のブランディングを変えたのもそういうところだったと思うし。そう思うとこの企画はすごくおもしろくて。
―やっぱりユニフォームはもちろん、サッカーのオフィシャルグッズってそういう熱量を持ち得ますよね。それこそ「ユベントス」の影響で「ダノン」のヨーグルトが身近に感じだりとか。
古峯:あるよ。(といって私物の山からアーカイブのユニフォームを取り出す)
相澤:あるんだ(笑)。
古峯:おもむろに出して行こうかなと。
―(笑)。でも、札幌の象徴的なイベントですけど、“雪まつり” というのはちょっと予想外のキーワードでした。
相澤:ぼくは今回ははじめの企画にはタッチしてなくて最終判断をする立場なんですけど、NGっていうのはほとんどなくて。もちろん「ベイクルーズ」っていう会社に対するぼくの信頼もありますけど。「雪まつり」だからソリもあったり。
―え! ソリも販売されるんですか?
長尾:はい。ソリとスノーボール、雪合戦の玉をつくるおもちゃもあります。
―だいぶ新鮮なラインナップですね(笑)。
相澤:ウェアも「コンサドーレ」にフォーカスすると普通は赤とか黒になってくるんですけど、今回は「雪まつり」なんで、白いボディが基本だったんですよ。そういうアイテムから入っていったのが、企画の段階では一番おもしろかったかな。
―企画はスムーズに進んだんですか?
相澤:はい。ただ、ひとつグラフィックでどうしても難しいのがあって。本当はアメリカっぽくしたかったから、“U.S.A” をもじって “H.C.S” ってやりかったんですよ。“北海道コンサドーレ 札幌” で。でも、それが調べていくと商標を取られていて文字単体の羅列は使えなかったんですよ。文字組みをデザインし、ひとつのエンブレムにすることは可能なんですが、今回シンプルに3文字を並べる企画が出てきて、その部分だけは実現できなかったですね。
山口:そうですよね。でもそれ以外のところは「いいね、いいね!」っていう感じに言っていただいたのは、意外でもあり、すごく嬉しかったところですね。
相澤:“こうじゃなきゃいけない” みたいなのは、ぼく自身が嫌なので。〈ジャーナル スタンダード レリューム〉と〈ジャーナル スタンダード〉でこういう企画をしたら、 基本的にはよくないわけないじゃないですか。
古峯:本当? なんか裏があるんじゃないの?(笑) まぁ、やっぱりみんなサッカーが好きだっていうのが根底にあったからこそだとは思いますけどね。
―こうやって完成して、実際に北海道のひとたちや「コンサドーレ」のサポーターが札幌のものを身につけるのはやっぱり特別な意味があるんじゃないですか?
相澤:そうですね。でも、今回好評になって、また夏とか来年も一緒にできたらいいなと思うんですよ。〈ホワイトマウンテニアリング〉でも「コンサドーレ」のユニフォームをつくったりしてるから、それを販売してもいいし。
古峯:それもあるよ。(私物の山を漁る)
相澤:それを着てインスタとかも上げてましたね(笑)。
長尾:相澤さんは集めてないんですか? ユニフォーム。
相澤:集めてますよ。でも、古峯さんとは集め方が違って。実際にその場所に行ったときに買うから、現行品がメイン。古峯さん、俺のも見とく?(と言って自身のアトリエの棚を開く)。
古峯:あ、すげぇ! 負けてらんないわ。
相澤:ここには一軍しかないからね。二軍は倉庫の中。…ってやっぱりこれ、キリないね(笑)。
主に出張時の旅先で購入し増えていったユニフォームの中でも、相澤さんが一軍と呼んでいるもの。「セリエA」に念願の昇格を遂げた「ACモンツァ」など、さり気なく驚きのものも散見する。
北海道コンサドーレ札幌×ジャーナル スタンダード
発売日:2月1日(木)
取扱店:ジャーナル スタンダード 札幌店、ジャーナル スタンダード レリューム 札幌店、オンラインストア「ベイクルーズ ストア」
※ソリ、スノードームは店舗でのみ販売
※「ベイクルーズ ストア」では同日の午前10時発売開始
ジャーナル スタンダード 札幌
電話:011-214-2048
ジャーナル スタンダード レリューム 札幌店
電話:011-209-5504