襟ぐりが着古したように緩く広がり、裾はほつれ、ペンキのようなシミが飛び散っている。そしてリブの凸凹もものともせず書き殴った――といわんばかりの “MARGIE LA” の文字。“E” と“L” の間に妙な隙間があるのは、そのタイミングでペンを持ち替えたことを匂わせる演出なのかも知れない。
まるでアイビーリーガーのロッカーにぶら下がっていそうなスエットとTシャツは〈メゾン マルジェラ(Maison Margiela)〉のこの春の新作だ。殴り書きのサインは学生が自分のユニフォームに名前を書くことをヒントしたというから、むせ返るようなロッカールームが思い浮かんだのはなかなか鋭い目のつけどころである。
設立当初、脱構築やデストロイコレクションと称され、その後も常識を覆すコンセプチュアルなアプローチで我々を驚かす〈メゾン マルジェラ〉の面目躍如なコレクションといえるだろう。
ちなみに、冒頭では “着古したように緩く広がり” と表現したが、実際に袖を通せばその襟ぐりは美しいカーブを描く。かつての服の記憶を可視化した、古着のような雰囲気を表現しつつ、美観を担保するデザインワークには舌を巻くこと請け合いだ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa