ピエール・フルニエが1994年にパリ4区の一角を借りて店開きした「アナトミカ」は文字通り、アナトミカル(解剖学的)な服や靴を取り揃える店であり、ピエールが〈オールデン(ALDEN)〉のVチップを売り場に並べたのは至極当然の成り行きだった。
正式名称を「アルガンコン」というこのモデルは〈オールデン〉が1950年代にメニューに加えた矯正靴用の木型を改良し、63年に完成させたモディファイドラストに釣り込まれている。特徴は、足なりに湾曲させたシルエット。Uチップとは明らかに異なる鋭角なエプロン&スプリットトウはその木型に沿わせるための工夫だったという。
新作は “ハンターブラウン” をまとった。ぼくらがブラウンと聞いてイメージする色に比べれば、若干赤味が強い。アメリカではミリタリーシューズやワークブーツでお馴染みの色合いだそうで、言い得て妙なネーミングである。
レザーは肌理の細かなテクスチャーに定評のあるドレスカーフ。艶やかな光沢がその色の美しさを引き立てているのが分かる。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa