1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
新たにショップがすべて入れ替わり、この連載も遂に11シーズン目に! 1巡目のラストである第84回目は、「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」の藤井 潤 & 土井 健さんが2回目の登場! どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
Vol.84_鹿の子素材のクルーネックシャツ
―さて、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?
今回は、春先に調子の良いトップスを取り挙げたいと思います。この時期だと、クルーネックのスウェットなんかが定番ですが、〈チャンピオン(CHAMPION)〉のリバースウィーブが人気再燃し、その次に〈ラッセル アスレティック(RUSSELL ATHLETIC)〉に注目が集まったりで、徐々に高騰化していたスウェット全体の相場も、若干落ち着いてきたので……。
―ここで次なる一手というワケですね。
そう。そこで用意したのが、スウェット素材ではなく“鹿の子素材”を使用したクルーネックシャツです。シード・ステッチとかモス・ステッチなんて洒落た呼び方もありますが、要は、表面に編みによる凹凸があることで肌との接地面積が少なく、それによって通気性に優れているのが、鹿の子素材の特長。見た目的にはサーマルよりも網目が細かく、高級感がある感じですかね。雰囲気が良いだけでなくスポーツの際にも着用可能と機能的なので、ポロシャツでは定番となっています。
―たしかに鹿の子素材ってポロシャツ以外のイメージがあまり湧かないんですが、実際のところクルーネックシャツにした場合の着心地は?
タッチでいうと、通常のスウェット素材よりもちょっと固めでサラッとしています。季節的にも真夏以外の3シーズン使えるので活躍度も高いかと。
―たしかに裏パイルのスウェットに近いけど、もう少しシッカリした着心地で。
ポロシャツに使われるだけであって、スポーティーでカジュアルな雰囲気はありつつ、素材感でちょっと差が付けられるというところがポイント。どうやらアメリカでも流行った時代があったようで、いわゆるスポーツブランドからマイナーなボディメーカーまで、色々なモノが古着で見つかります。今回紹介するモノは90’s〜00’s。着丈がちょっと短くて身幅広めのシルエットはぼくら好みでもありつつ、これらが製造された年代を物語っています。
―シルエットに共通項が見られるとのことですが、デザインなどの面でブランドごとの特色ってあるんでしょうか?
正直、そこはもう千差万別。たとえば、この2つのモデルはリブがちょっと面白くて、ラインが入った配色パターンになっています。まずはこちらの〈ジャージーズ(JERZEES)〉。先ほども話に挙がった〈ラッセル アスレティック〉のプリンタブル・ウェアラインとして1983年にスタートし、スウェットがよく出てくるので古着好きにはお馴染み。今回3種類のバリエーションを用意しましたが、これがいちばん、“ならではの雰囲気”があるかも。
―そういや、リバースウィーブにもこういったラインリブのタイプがありましたよね。
ですね。続いては〈プロ スピリット(PRO SPIRIT)〉から。コーチが着ていそうなちょっとゴルフっぽい雰囲気があります。首元にガゼットが施されたいわゆる“前V”だけど、この素材なので本来の汗止め的な役割ではなく、あくまでデザイン的なアクセントとしてでしょうね。「なんとなくオシャレでしょ?」的な高見えポイントで。
―「プロップス ストア アネックス」から“高見え”なんてワードが出たのは意外です(笑)。
もしくは「Vゾーンを華やかに」とか?(笑)。あとキャッチーで分かりやすいところだと〈チャンピオン〉とかも。よく知っているブランドなのに、よく見ると違うっていうのがイイかなって。ちなみにウチでは値段もすべて均一としています。
―このプライスなら確かに手を出しやすいですね。選ぶ際のポイントは?
これに限らずすべてのアイテムに言えますが、まずはデザインとシルエット。その上で、縫製の良し悪しも要素のひとつとしては重要。汚れの有無とともにこの辺も細部までチェックします。あとは、“自分らに似合わないアイテムは選ばない”。もしかしたらこれがいちばん大事かもしれませんね。
―これを機に、注目するショップも増えそうです。
ウチとしても、もっと数が集まれば推していきたいところですが、そもそも“良いと思える個体”がホイホイ集まってくるものでもないので、どうですかね。もちろん、スウェット感覚でシャツやTシャツの上にラフに重ねて着られるし、手入れも洗濯機に放り込むだけでラフに扱えるので、オススメしたいのは事実。もし見つけたら、新たなトップスの選択肢にぜひ!って感じでしょうか。
藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
ストリート直撃世代からシティボーイまでを虜にする、原宿発の人気インポートショップ「プロップスストア(PROPS STORE)」、またその姉妹店でグッドなレギュラー古着が見つかるユーズドセレクトショップ「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」。その両方をディレクションする広島出身の2人。
インスタグラム:@propsstore_annex
公式サイト:propsstoreannex.shop-pro.jp