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【FOCUS IT.】マンハッタンポーテージ × テクニクスのレコードバッグを監修。MUROが語るレコードとニューヨークにまつわるKing Of Diggin’秘話。

〈マンハッタンポーテージ(Manhattan Portage)〉と〈テクニクス(Technics)〉のコラボレーションアイテムがリリース。ラインナップされるのは、レコードバッグが3型とTシャツが2型。

〈マンハッタンポーテージ〉は、メッセンジャーバッグの代名詞として知られていますが、1983年創業当初からDJ用のバッグをラインナップしていました。一方の〈テクニクス〉はオーディオ機器のブランドとしてはもちろん、DJが使うターンテーブルのブランドとしても世界中のDJから愛用され続けてきた存在。それゆえに、この両社のコラボレーションはDJやレコードユーザーにとって待望のコラボレーションとも言うことができます。

さらに、このコラボレーションアイテムを監修したのはMURO。日本が世界に誇るKing Of Diggin’のアイデアと経験が詰まったバッグでもあるわけです。今回の監修者、MUROへのインタビューを行ったのですが、そのレコードバッグについてからスタートした話は、ニューヨークやDJにまつわるエピソードが次々と飛び出す、いわばKing Of Diggin’秘話でした。

Photo_Satoru Tada
Text_Tetsu Sumida
Edit_Seiya Kato

PROFILE

MURO

日本が世界に誇るKing Of Diggin’。80年代後半からKRUSH POSSE、MICROPHONE PAGERの活動を経て、「世界一のDigger」としてプロデュース/DJでの活動の幅をアンダーグラウンドからメジャーまで、そしてワールドワイドに広げていく。現在もレーベルオフィシャルMIXを数多くリリースし、国内外において絶大な支持を得ている。毎週水曜日21:00からTOKYO FM MURO presents「KING OF DIGGIN’」で、毎週新たなMIXを披露。また音楽とファッションを融合させたブランド〈レコグナイズ(RECOGNIZE)〉では自らデザインを手掛けている。

Instagram:@dj_muro

ー 今回のレコードバッグですが、カタチ的にもMUROさんのリクエストがかなり反映されているみたいですね。

MURO:そうですね。いちから作ってもらったので。でも、実はサンプルになったバッグがあったんですよ。以前、知り合いがポップアップショップをやっていて、そこに行ったら、壁に昔の〈テクニクス〉のレコードバッグが掛かってたんです。「うわー、懐かしいなぁ。これ、持ってた」と思って、それを買って帰ったんです。〈テクニクス〉のロゴが刺繍で入ってて、横にはクロスした紐が付いてサイズ調整ができるタイプのバッグでした。ちょうどその後に、今回のレコードバッグの打ち合わせがあったので、そのバッグを持って行ったんです。それをサンプルとして出して、これは要る、要らないとか、いろいろとリクエストしたんです。

ー フラップにスリットが入っていて、トートバッグ的に手持ちする時のハンドルを出せるようになっています。めずらしい仕様だと思うんですが、これもMUROさんのリクエストですか?

MURO:そうです。例の〈テクニクス〉のバッグもそうなっていたんですよ。昔のDJバッグでは、結構あった仕様なんですよね。最近はあまり見なくなっていたこともあって、リクエストしました。

ー それ以外に今回こだわったポイントというと?

MURO:12インチサイズだけでなく、7インチサイズをラインナップしたことですね。7インチ用のレコードバッグってあまりないんで作りたかったんです。アナログでやるDJの中では、この10年くらいはずっと7インチが主流みたいになっちゃってますからね。これは相当需要があるんじゃないかなって。

〈テクニクス〉と〈マンハッタンポーテージ〉のコラボレーションアイテムは、レコードが収納できるショルダーバッグ3型と、Tシャツ2型。バッグはいずれも素材に1000D CORDURA® Classic Fabricを使用。

ー 一番大きいタイプは、どのあたりがポイントでしょうか? このカタチは、レコードバッグとしてベーシックなタイプだと思うんですが、MUROさんならではのこだわりは?

MURO:カートリッジケースを入れられるポケットなんかもこだわったんですが、高さがあって、レコードを収納した上にヘッドホンが置けるというのが一番のポイントですかね。使っているヘッドホンがちゃんと入るように、高さも寸法を測ったりして、ちょうどいいサイズにしたんですけど、高さを出しかったのは、もうひとつ理由があったんです。パッと見ではレコードバッグには見えないモノにしたいな、と思ってたんですよね。

ー 確かに、ちょっと普通のレコードバッグより小さく見えますね。

MURO:そうなんですよ。高さを出した分、横幅がコンパクトに見えるんです。最近、海外に行くとロストバゲージがすごく多くて、レコードとかも盗まれちゃうこともあるんですよ。レコードバッグだって分かると、その心配もあるんです。ヨーロッパのある空港ではレア盤だけ抜かれるなんて噂もあったりして。そんなマニアなヤツまでいるの!? みたいな(笑)。これなら機内への持ち込みもできますし、盗難の心配も少なくなるかもって。

ー 今回のレコードバッグは、いわばトリプルコラボじゃないですか。そんなコラボレーションが実現したのはどんな経緯だったんでしょうか?

MURO:〈マンハッタンポーテージ〉でレコードバッグを作りたいんで、監修というカタチで関わって欲しい、と言われたんです。打ち合わせに行ってみたら、〈テクニクス〉のレコードバッグを作るという恐れ多いような話だったんですよ。

ー やはり〈テクニクス〉というブランドには、特別の思いがありますか?

MURO:そうですね。ターンテーブルは〈テクニクス〉以外を使ったことがないですからね。今も、店のターンテーブルが別のメーカーだった時にはチェンジしてもらうんですよ。できたら、〈テクニクス〉のモノにして欲しいって。やっぱりアームの感じやピッチの感じが違ったりするんで、別物なんですよね。

ー 〈テクニクス〉のブランド名が入ると、気持ちが違いますか?

MURO:違いますね。ターンテーブルの横に添えたくなります(笑)。

ー 先ほども7インチの話が出ましたが、MUROさんのDJと言えば7インチのイメージが強いですが、7インチにシフトしたきっかけがあったんですか?

MURO:93年に初めてニューヨークに行った時にビズ・マーキーとキッド・カプリのDJをみたんですけど、その2人が7インチだけでやっていたんです。ヒップホップのDJなのに、ラップをかけないで、ジャクソン5とか、ジェームス・ブラウンの曲とかを7インチだけでかけていて、それに衝撃を受けちゃって、もう次の日の朝からフリーマーケットに行って7インチを買い出したのがきっかけです。7インチって、曲が短いから割と早く変えないといけないんですけど、ビズ・マーキーやキッド・カプリは、当時からクイックミックスをやっていて、4小節とか8小節で変えたりする曲もあったりするプレイをしてたんです。そのスタイルにやられたんですよね。当時は、それを日本でやってる人がいなかったんです。レゲエのDJでは7インチを使う人もいましたけど、他のジャンルで7インチをプレイする人がまだいなかったんですよね。ちょうどその頃に渋谷の「CAVE」って箱でレギュラーが始まったタイミングで、7インチでやり始めたら、みんなビックリしてくれたんです。数年後にキッド・カプリが日本に来日した時にインタビューしにホテルの部屋に行ったんですけど、ホテルの部屋がレコードで埋まってて…。これ、全部日本まで持ってきたの! って、感動しましたね。やっぱり、現場に持って行かなきゃいけないんだなって。それからは僕も、たくさん持っていくようになりましたね。

ー 最近はブームと言われるくらいレコード市場が復活していますが、ずっとレコードにこだわってきたMUROさんはどう感じてますか?

MURO:僕はそれしかできないってだけなんですけど。でも、みんながレコードの音に刺激されてるのは嬉しいですね。特に若い人が増えてきたってことが。一昔前は、レコード屋で若い女の子に会うことなんてほとんどなかったんですけど、今では制服でレコード掘ってる子がいたりするんですよ。一体どんなレコード探してるんだろ? って、ちょっとお声掛けしたくなっちゃったりしますね(笑)。

ー MUROさんにとってレコードというメディアの魅力って何だと思われますか?

MURO:ボタンひとつで音が鳴らないじゃないですか。まずお店に買いに行って、シールドのシュリンクを切って、スリーブからレコード出して、ターンテーブルに載せて、針を置いて、初めて音が鳴る。そんな過程があるじゃないですか。そういう点でクリック一個で鳴る音とは、耳に届く音がやっぱり別物だと思うんですよ。それが若者にとっても新鮮に感じてるんじゃないですかね。

ー 今回のレコードバッグは、そんなレコードを買い始めた若者とかにも使いやすいかもしれませんね。ちなみに、今回のバッグを制作した〈マンハッタンポーテージ〉もルーツはニューヨーク。MUROさんの音楽のルーツもニューヨークですよね?

MURO:未だに憧れの場所。一生憧れの街だと思いますね。最初に行ったのは、先ほど話に出た93年。その年の夏にミュージックセミナーというコンベンションがあったんです。世界中からミュージシャンが招聘されて若手を紹介するショーケースがあって、それにMICROPHONE PAGERで呼ばれたのが最初でした。当時、ファイヤー通りにあった「STARRICH」って雑貨屋さんでバイトしてたんですけど、ニューヨークに行くんで休み取らせてください、って言ったら、じゃあ買い付けしてきてよ、って言われて、初めて買い付けも任されたんです。クレジットカード1枚渡されて、それで買い付けもしてきましたね。

ー 何を買って来たんですか?

MURO:その頃はまだ、〈ギャップ(Gap)〉も〈ティンバーランド(Timberland)〉もオンリーショップがなかったんですよ。しかも、XLサイズが日本では売ってなかったんで、そういったモノを。

ー その時は、レコード屋さん回ったり、クラブに行ったりもしたわけですよね?

MURO:そうですね。自分のデモテープも10本くらいダビングして、ポケットをパンパンにしながら持って行って、アーティストを見かけると、聴いて! って渡したりしましたね。

ー 一番印象的だった街はどのあたりですか?

MURO:最初はダウンタウンかな。ローワーイーストサイドとか、あのあたり。まだブルックリンが流行ってなかったんで。マンハッタンのダウンタウンが元気ある頃でしたね。友達も住んでたんで、そこに泊まらせてもらって、買い付けしたりもしていましたね。ミートパッキンってエリアに「APT」って箱があって、そこが良い箱で、数回DJさせてもらったことがあるんですけど、それは本当に貴重な経験で、宝物のような思い出ですね。

ー 東京でメッセンジャーのカルチャーが流行ったのはだいぶ後になってからですが、当時のニューヨークでは、もうメッセンジャーのカルチャーも盛り上がってたと思います。ヒップホップのシーンとは近いところにあったんですかね?

MURO:あったとは思いますね。黒人のメッセンジャーも多かったですし、蛍光の黄色いテープが入ったメッセンジャーバッグを背負って自転車で走っている姿は見かけましたね。懐かしいですよね、あの感じも。初期のラインナップにDJバッグもあったというのを後々聞いてビックリしましたね。

ー 〈マンハッタンポーテージ〉が創業したのはイーストビレッジみたいですが、その辺りにもDJのカルチャーがあったんですかね?

MURO:レコード屋さんが結構あったんですよね。そこにDJたちが溜まったりもしてたんで、彼らからリクエストされてDJ用のバッグを作ったんですかね。レコードは重いですから。やっぱり丈夫なバッグが当時から求められたんでしょうね。

ー 最近は老舗のクラブがクローズしたり、東京のクラブやナイトカルチャーは大きな曲がり角に来ているように感じますが、MUROさんはどう感じていますか?

MURO:遊び方が変わってきたように思いますね。ハイファイバーだとか、小さな店が増えて、逆に大箱は水商売的になってきてますよね。でも、時代によって遊び方や音楽の楽しみ方は変わりますから。僕自身の入りはローラースケート場だったんですよ。ローラーディスコみたいなのが板橋にあったんです。ディスコ行きたいけど中学生だったんで行けなくて。そんな時に、友達とローラースケート場に行ったら、そこにDJブースがあって、上手いDJがやってて、選曲も格好良くて、真ん中で風見慎吾さんの後ろで踊ってた人たちがブレイクダンスを踊ってたんです。それが衝撃的で。そこから入ったんですよ。ローラーディスコって80年代のアメリカでは流行ってて、今また流行ってきてるみたいなんですよね。SNSでローラースケート履いてダンスするって動画が増えてきてるみたいです。だから、ローラーディスコみたいな、スケート場を使ったパーティーが今またできたら面白いな、って思ってるんですよ。「Stones Throw」のデイム・ファンクが4〜5年前に後楽園のスケート場でやってるんですよね。デトロイトではムーディーマンがスケート場を借り切って毎年大きなパーティーをしたりもしてますし。

ー それはぜひ実現して欲しいですね。それにしてもDJのきっかけがスケート場だったとは驚きです。

MURO:板橋はかかってる曲も黒かったんですよ。当時は、そこでチェックしたレコードを貸しレコード屋で借りてカセットテープに録音してたんです。で、カセットテープでミックスを始めたんですよ。ダブルデッキのラジカセとかってあったじゃないですか。上にレコードプレーヤーが付いてるコンポみたいなのが家にあったんです。それで再生ボタンを同時に押したら、音が混ざって鳴ったんで「おー、これでミックスできる」ってカセットテープ山積みにして、ミックステープを作り始めたんですよ。

ー そうだったんですか! ある意味とってもヒップホップですね。

MURO:何とかしてノンストップのミックスを作りたいと思ってたんですよ。当時、ディスコで誕生日にDJのノンストップミックスのカセットが貰えたりしたんですけど、まず、そのノンストップというミックスの魅力に取り憑かれてしまって、作り始めたんです。そしたら、同じことしてる人がもう1人いて、それがデヴラージ(笑)。全く同じことしてたらしいんですよ。

ー まさかダブルデッキでのミックスがスタートだったとは。今現在は、DJだけでなく、ラジオ番組もやられてますし、洋服も手がけていたり、さまざまなことに関わっていますが、一番やっていて面白いとか、これから将来やってみたいことってあったりしますか?

MURO:何かをやり始めると、それに集中してのめり込んでしまうタイプなんで、全部楽しめてますね。ありがたいことに面白いことばかりやらせてもらっています。

ー キャリアを重ねると楽しめなくなるって話もよく聞きますが、そんなこともないわけですね?

MURO:幸い、子供を授かって、それが大きかった気がしますね。新しい刺激をもらっているんです。実は子供服を手がけてみようかな、と思ったりもしています。今回のレコードバッグも12インチと7インチを作ったのは、実は親子で使いたいな、と思ったのもあるんです。この手のモノを親子で使うというのが夢だったんです。

MP2412TECHNICS ¥24,200

MP1428TECHNICS ¥19,800

MP1425TECHNICS ¥16,500

MP-TD01 ¥6,600、MP-TD02 ¥7,700

INFORMATION

Manhattan Portage × Technics -Supervised by MURO-

発売日:4月20日(土)
展開店舗:Manhattan Portage 一部直営ストア、Manhattan Portage オンラインストア、ZOZOTOWN、HMV record shop(一部店舗)、FACE RECORDS(一部店舗)、TOWER RECORDS(一部店舗)

Manhattan Portage × Technics -Supervised by MURO- Launch Party

会期:4月19日(金)
場所:Manhattan Portage TOKYO
住所:東京都渋谷区神宮前5-27-8
時間:START 18:00 / CLOSE 21:00
出演:MURO、Minnesotah

Manhattan Portage TOKYO

電話:03-6419-0025
オフィシャルサイト
Instagram

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