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【FOCUS IT.】テーラー仕立てのレインウェア、ノルウェージャン・レイン。5周年を迎えた東京店と、四方良しなコンパクトストアとは。

厳しい環境に耐えうる高い機能性と、テーラリング由来のデザインが融合したレインウェアブランド〈ノルウェージャン・レイン〉。その旗艦店でもある「ノルウェージャン・レイン&T-マイケル トウキョウストア」が5周年を迎えました。フイナムでは、来日していたデザイナーのT-マイケルと、クリエイティブ・ディレクターのアレックスにインタビューを敢行。アニバーサリーアイテムをはじめ、三カ国のエッセンスがブレンドされたショップ、そして彼らが未来に向けて見出した“コンパクトストア”というスタイルについても話を伺いました。

Photo_Shinsaku Yasujima
Text_Shun Koda
Edit_Yuri Sudo


PROFILE

T-Michael(左)/Alexander Helle(右)

日本の繊細な技術と完成度の高い生地・素材にインスパイアされ、メンズの伝統的かつ革新的なテーラリングを融合させて2009年に誕生した〈ノルウェージャン・レイン〉。100%ウォータープルーフで、防風性、通気性を兼ね備えたアウターウェアを提案。デザインは、ビスポークテーラーでもあるデザイナーT-Michael(T-マイケル)と、クリエイティブ・ディレクターのAlexander Helle(アレクサンダー・ヘレ)のデュオによるもの。
Instagram:@norwegianrain


雨の街で生まれた唯一無二のレインウェア。

レインウェアとしての機能性を確保しつつ、卓越したテーラリング技術に裏打ちされたクラシカルなデザインの〈ノルウェージャン・レイン〉。このブランドが誕生したのは、世界で最も雨が多いと言われるノルウェーの街、ベルゲン。まずは彼らのクリエイティブの原点と言えるこの街について尋ねます。

マイケル:小さな街なんですが、海と山に囲まれていて、とても素敵な場所です。3日に1度は雨が降るので、普通に過ごす人からすれば嫌なことかもしれないですが、落ち着いて仕事をするにはこれ以上ない環境です。

アレックス:このブランドができたのもその環境があったから。ベルゲンは雨が多く、日本人のファッションと違い、デザインよりも機能性を優先する人が多いんです。雨を凌ぎつつ、おしゃれも楽しんでもらいたい。だから、機能とデザインを両立させたブランドをつくろうと思ったんです。

デザインと機能を両立させる上で重要な役割を担う生地。彼らの選ぶもののほぼ全てがメイド・イン・ジャパンだと言います。何が彼らの心を惹きつけたのでしょう。

マイケル:答えはシンプル。僕らが生地を選ぶ上で大切にしているリサイクル素材、サステナブルな生産背景であること、高い防水性、透湿性、この4つをクリアしていたからなんです。

アレックス:本当に素晴らしい生地だと思います。見た目の美しさにおいても、機能面においても、世界で最も優れていると思いますよ。

マイケル:〈ノルウェージャン・レイン〉を始める前にフランスで行われた大きな生地の展示会に行ったんです。その中で選んだのがスイスと日本の生地で、それを元にサンプルを作成してテストを行ったら、日本の生地が惚れ惚れするほど優れていて、それからずっと採用しています。

アレックス:日本人は、融合させるのが上手いですよね。ファッショナブルなものと機能的なものを掛け合わせたり、対比するものを上手くミックスさせているところを僕らも参考にしています。

マイケル:生地以外にも日本は感動することがたくさんあります。渋谷に行けばファッションの最先端を知ることができて、電車に乗って少し都会から離れれば自然もある。刺激的な情報がいっぱいある都市なので、いつもインスピレーションを与えてくれます。

日本から得たインスピレーションは、東京店の5周年を記念したアイテムにも注がれています。そして、彼らならではの遊び心も忘れていません。

ピンク、ブラウン、ブラックのトリコロールカラーが目を引くレインチョ。バッグを背負いながら着用できるよう、身幅を広く取った設計に。〈ノルウェージャン・レイン〉レインチョ¥148,500

マイケル:このレインチョはブランドのシグネチャーアイテムであり、ユニセックスに着られるコートとしてはじめてつくったものでもあります。これまでピンクを使ったことはなかったんですが、アイキャッチなデザインにしたくて、このカラーリングを選びました。春にリリースするので、日本の桜をイメージしています。

※ブランド公式画像

マイケル:もうひとつは、レインチョのライナーとして使えるカーディガンです。ノルウェーの由緒正しい〈ロロス ツイード(Roros Tweed)〉というブランドとコラボレーションしたブランケットを用いていて、とても柔らかくて滑らかな風合いなんです。

アレックス:実はとてもユニークな柄なんです。遠くから見るとわかるかも。

メゾンブランドのアイテムなども生産するノルウェーの名門ファクトリーで仕立て上げられたブランケット。ノルウェー産の上質なウールを用いているため、カシミヤを想起させるほどしなやかな肌触り

マイケル:そう、僕たちの顔が織りで表現されてるんです。なかなか依頼できない老舗の工場なんですが、5周年ということで特別につくっていただいて。向こうからもアイデアをたくさんもらって、仕掛けがあった方が楽しめるんじゃないかと思ってつくってもらいました。

アレックス:どれもスペシャルなアイテムなので、実際に着てみてほしいですね。


ノルウェー、日本、ガーナが渾然一体に。

去る4月12日に5周年を迎えた「Norwegian Rain & T-MICHAEL TOKYO STORE」。温故知新を感じさせる神田という街が心を惹きつけたと述懐します。

マイケル:ファッションに特化した街じゃないところが気に入ったんです。少し歩けば古本屋や居酒屋があったり、ビジネスパーソンが歩いていたりする場所がとても興味深くて、ショップをこの近くにつくりたいと思い、歩き回って物件を探していました。そうしていたら、第二次世界大戦後まで残っていたこの古民家を見つけて、惹きつけられるものがあったんです。

写真左が1階フロア、写真右が2階フロア。奥行きを利用した店舗構成になっている

吹き抜けになった天高の空間。天井から吊り下がっているのは、ノルウェーから持ってきた吊り輪。古き良き日本家屋とマッチする

マイケル:ガラス問屋だったこの場所を活かしながら、リノベーションしました。空間のテーマは、ノルウェーと日本の融合なんですが、僕がガーナ出身なので、アクセントでガーナの雑貨なども並べています。

第二次世界大戦の戦火を免れたガラス問屋にあったハシゴやミシン、時計にガラス。当時の残留物を捨てずに、店内のそこかしこに並べている

ガーナの金属板装飾が施された木製の仮面。祭祀用の魔除けとしてつくられたとされている(諸説あり)

銅の産業が盛んなノルウェーをイメージし、店内の細部には銅のあしらいが。5年の月日を経て、いい風合いに育っている。写真右は日本の金継ぎ文化をオマージュしたもので、床のヒビに銅を流し込んでいる

さまざまな文化に経緯を払いながら、ノルウェー、日本、ガーナの三カ国がブレンドされた空間には、〈ノルウェージャン・レイン〉と〈T-マイケル〉のアイテムが並ぶだけでなく、バーも設置されています。それは、彼ら流の“おもてなし”なのでしょうか?

マイケル:いや、僕が飲みたいからさ(笑)

アレックス:今のはジョークだよ(笑)。ただショッピングをするだけの場所にしたくなくて、お客さんにゆっくりとくつろいで話せる場所にしたかったんです。

マイケル:そう。だから、バーも小さいスペースにして、人と人との距離が自然と縮まるようにしてるんです。

2階の奥に位置するバー。ノルウェー産のジンを使ったカクテルをはじめ、季節ごとの食材を用いたおにぎりとお味噌汁もラインナップ。ここでしか味わえないマリアージュだ

バーも三カ国の融合。ノルウェーの家具を使い、壁にはNY在住のガーナ人の作品が飾ってあり、床は畳で靴を脱いで上がれるようになっている。ふと視線をずらすと小さな日本庭園があり、四季折々の植物が植えられている

アレックス:洋服だけじゃなく、ショップに置いてある古いミシンやレコードだったり、ショップの隅々にエッセンスを散りばめているので、それが会話のきっかけになってくれたら嬉しいです。


四方良しの販売方式、コンパクトストア。

オープンから5年の間に突如降り掛かったコロナ禍。旅からインスピレーションを得るというマイケルにとって、それはショッキングな出来事でもあったそうですが、新しいショップの在り方、“コンパクトストア”を見つける良い機会でもあったようです。

マイケル:コロナは本当に驚いたけれど、ポジティブに捉えれば、今後のビジネスについて落ち着いて考える絶好のタイミングでもありました。

アレックス:そうだったね。コロナ以前は27%が在庫過多という状況でした。その現状を放置し続けるのは良くないと思って、新しい販売スタイルを2人でじっくり話したんです。

マイケル:そこで僕たちが見出したのが、“コンパクトストア”なんです。

アレックス:小さなスペースに、定番アイテムのベーシックカラーだけを陳列して、それ以外のアイテムやカラーリングはQRコードを読み取ることでチェックできるという仕組みです。店頭で試着することもできるし、QRにアクセスすればブランドのことやモノづくりの背景についても深く知ることができるんです。その場で購入する必要はなく、後日オーダーすることもできます。

マイケル:定番アイテム以外でもバイオーダー(特注)してもらえたら、6週間前後でアイテムが出来上がるので、お客様もタイムラグが少なくアイテムを手に入れることができるし、僕たちも在庫過多になることがないんです。コペンハーゲンで実験的にスタートし、上海とオランダのホテルで期間限定のポップアップストアを実施させてもらいました。評判もよかったよね?

アレックス:とてもよかったね。ショップのオーナーからもお客様の反応が良かったと連絡をもらって嬉しかったです。在庫過多にならないというのは非常に重要なこと。作り手も、ショップも、顧客も、地球にとっても最高のサービスだと思います。

マイケル:今後日本でもやってみたいと思っているので、その時はぜひ来てください。

アレックス:そうだね。このショップも「来てよかった」と思ってもらえる発見がたくさんあるはずですよ。

作り手、ショップ、顧客、そして地球。それら全てにおいてメリットがあるというコンパクトストア。その考え方を日本語では、“四方良し” と言うと伝えたところ、「ヨンポーヨシ、いい響きだね。覚えておくよ」と微笑む2人。彼らとこのショップの未来には、晴れ渡った青空が広がっているように感じました

INFORMATION

Norwegian Rain & T-MICHAEL TOKYO STORE

住所:〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1丁目12-6
電話番号:03-3527-1766

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