マスターピースにも浮き沈みはあるけれど、ジャーマントレーナーがそこからこぼれ落ちる未来はちょっと想像しにくい。
ジャーマントレーナーは1950年代にドイツ軍のトレーニングシューズとして誕生した靴種で、幻の一足といわれていた。
〈メゾン マルジェラ(Maison Margiela)〉がその靴種をラインナップに加えたのは「レプリカ」。歴史的なウェアやアクセサリーを忠実に再現し、モダンに再解釈すること――を謳うコレクションだ。いまから遡ること四半世紀前の1999年のことである。
「レプリカ」のコンセプトは時代を越えた普遍性にあり、オリジナルのアイテムがすでに時を経てきたものである、という原則に基づいている。それが証拠にインソールに縫いつけられたラベルでは原型となった一足の出自が示されている(オーストリアで発見された70年代のものだそうだ)。その完成されたデザインへの敬意の表れであることは火を見るよりも明らかだ。
見どころはなんといっても手を入れようのないアッパー・パターンにあるが、内蔵されたエラスティック(シューレースなしでもフィットする)、100%ラバーのハニーソール、シュータンに縫いつけられたナンバリングタグあたりも見逃せない。
新作はナッパレザーとスエードのコンビで、色はAubergine(オーバジーン)とBirdy(バーディー)が揃う。
「レプリカ」スニーカー 各¥99,000
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa