紅葉も深まり、秋の気配が色濃い京都。コンパクトで回りやすく、歴史的な建造物や新旧さまざまなお店があり、ちょっと足を伸ばせば豊かな自然もありと、見るべき場所が目白押しでまさに旅にうってつけ。今回は、海外目線でアレンジされた京町家にフォーカス。そこでしかできない、フィジカルストアならではのエクスクルーシブな体験を紹介します。
Photo_Kai Naito
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Shuhei Wakiyama
クラフツマンシップと日本文化への敬愛。
京都でしか体験できないことといえば、「ル ラボ 京都町家」はまさにそう。かつては酒造屋で、現在は京都市の景観重要建造物に指定されている町家をリノベーションしたそのストアデザイン自体が特別で、フィジカルストアの楽しみを存分に詰め込んでいます。
たとえば、このお店には〈ル ラボ(Le Labo)〉の店舗でおなじみのタイルやバラの壁紙もなく、香りが染み渡った木の床もありません。代わりに長い歴史が育んできたこの建物ならではの設いと、そこに元からあるかのように馴染んだ銅管やヴィンテージ家具、植栽が迎えてくれます。奥にある庭やカフェ、町家らしいくっきりとした陰影もぜひその目で確かめてほしいところ。
また、販売されている香水もエクスクルーシブです。世界中の都市に捧げられたシティ エクスクルーシブに、10月に仲間入りした京都の香り「オスマンサス 19(OSMANTHUS 19)」は、ここを含めた京都の二店舗でしか販売されていません。OSMANTHUSは日本語で金木犀を意味。インセンスとラベンダーの第一印象から、高揚感のあるクリーミーな香りを軸に、ウッディなトーンへと続きます。
そして、二階のお座敷で体験できる催しは、伝統技術を受け継ぐ職人や工匠を多数抱える京都ならでは。不定期で招く職人やアーティストが、その腕前を目の前で実演してくれます。いままでに書道家やイラストレーター、うちわ職人などが登場し、たとえば店内の「守破離」「心身一如」「無心」といった掛け軸の書は、その書道家によるもの。クラフツマンシップを尊ぶ〈ル ラボ〉らしい、実にスペシャルな体験です。モノがどうやってできあがっていくのか、その過程をみることは、モノに対する理解と解像度が深まる貴重な学びでしょう。
人々が近代的な生活を送りながら、そのすぐそばに歴史的な建物や伝統文化がこれほど当たり前に存在するのは、日本広しといえど京都だけ。香りも歴史も目に見えないもの。視覚情報が氾濫している現代だからこそ、この歴史の積み重なった町家で、思う存分香りの世界に浸るというのは、新しい感覚を呼び起こしてくれる気がします。
INFOMATION
住所:京都府京都市中京区木屋町通四条上る2丁目下樵木町206番地
営業時間:10:00〜19:00
電話:075-708-3905(ショップ/ラボ)、075-708-5182(カフェ)
オフィシャルサイト
ブルーボトルコーヒー流、コーヒーのフルコース。
いまなお多くのコーヒー好きが喫茶店へと足を運ぶ街・京都。日本の喫茶店文化から影響を受けたという〈ブルーボトルコーヒー(BLUE BOTTLE COFFEE)〉が、この街でコーヒーのフルコースとも呼ぶべきスペシャルな体験を「ブルーボトル スタジオ キョウト」で提供しています。それは、日本では京都のみ、さらに期間限定、各回5名までという限定づくし。
「ブルーボトル スタジオ」は、創業者のジェームス・フリーマンが現在考える、最高のコーヒー体験を表現する場所として生まれました。いまでは世界に広がりを見せてはいるものの、その発祥はここ「ブルーボトルコーヒー 京都カフェ」のはなれの2階なのです。
「ブルーボトルコーヒー 京都カフェ」は築100年を超える伝統的な京町屋をリノベートした超人気店ですが、はなれの2階は一歩足を踏み入れるとどこか別世界に来たかのよう。この空間で提供される全席予約制の極めてエクスクルーシブな体験は、約90分もの間、あなたを別世界に連れていってくれます。
このコースでは現在、6品のドリンクと2品のスイーツで、コーヒーが持つさまざまな表情に触れることができます。
サーブされるのは、コーヒーの葉・花・果実といったコーヒーの木から採取された豆以外の材料を使ったお茶から始まり、豆の個性を引き出すよう特別な方法で抽出した飲み比べセット、大量の豆をネルドリップで水出し式のように一滴ずつゆっくり落とした濃厚な一杯に、最後のアルコールドリンクまで、豆の種類、淹れ方を含めて一つとして同じもののないコーヒーが次々と目の前に差し出されます。
今期は、極めて希少な豆を使用してつくられた「ソリュブル」と呼ばれる、〈ブルーボトルコーヒー〉オリジナルのインスタントコーヒーも新登場。ちなみにインスタントコーヒーといっても、店頭でもオンラインでも販売されていない特別なものなのです。
また、フランス菓子に造詣の深いパティシエ・ユニット「タンジェント(Tangentes)」による甘味も白眉の出来。ときに酸味の効いた口直しとして、ときにコーヒーと相性のいい濃厚なパートナーとして舌を楽しませてくれます。
口に運ぶものすべてがおいしいのはもちろんですが、〈タナカ(TANAKA)〉製のユニフォームに身を包んだ、特別なトレーニングを受けたスタッフの優雅な所作、ハイエンドのプレイヤーやスピーカーから流れるジャズのレコード、窓で四角く切り取れられた目の前の景色など、まさに五感で堪能できるようなコーヒーの新しい可能性を強く体験できる世界がここにはあります。
ここで感じたのは、家でも当然のようにコーヒーを淹れるような、コーヒーを長年嗜んできたひとにこそ体験してほしいスペシャルサービスだということ。そういった固定概念みたいなものをいい意味で破壊してくれるはずですから。
INFOMATION
期間:〜12月2日(月)
住所:京都府京都市左京区南禅寺草川町64 京都カフェ はなれ 2階
営業時間:10:00〜、13:00〜、15:30〜の3回 各回最大5名(金〜月曜のみ)
オフィシャルページ