温泉と聞いて多くの方がイメージするものとはちょっと、というかかなり違う自然の中で自噴し整備されていない“野湯(のゆ、やとう)”の存在。それに魅了され、さまざまな野湯に足を運びシャッターを押し続ける山谷佑介の写真は、日常と非日常の狭間を写します。
山谷佑介がカメラを手にして間もない15年ほど前にスタートした温泉を巡っての撮影。友人や家族、時にはSNSやZINEで希望者を募り撮り続けてきたなか、「タカ・イシイギャラリーフォトグラフィー / フィルム(Taka Ishii Gallery Photography / Film)」での写真展と、「フロットサムブックス(flotsam books)」より「ONSEN MMXXIV 」を出版します。
今回の展示では本シリーズの新たな試みとして、ルーメンプリント作品を展示。山谷佑介が野湯探しの道中に録音していた、同行者の間で交わされた“たわいのない会話”の中の言葉を、日本・アメリカ・中国・ フランス・インド・ロシアなど世界各地から収集した、さまざまな時代の印画紙に焼き付けました。
有効期限を過ぎ⻑らく眠り続けた印画紙は、それぞれの場所で保管されていた状態により、カビや感光ムラ、薬品の違いによりさまざまな表情を見るもの。山谷佑介はこれらの紙の上で起きている時の流れを通して、時代や場所を超えた人間の普遍的な言葉を浮かび上がらます。
15年にも及ぶ“温泉”をテーマにした総括的な展示と出版。山谷佑介の写真+αへの熱量は、温泉と同じように湧き止むことはありません。